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2022年8月20日土曜日

対立を避ける社会に発展はないだろう

日本では、対立は悪で融和は善とされる。

 

問題が発生したとき、大抵ある種の対立が同時に生じる。その対立の解消の為には、その原因となる問題の解決がなされなければならない。日本文化の下では、その対立と問題の論理的関係を十分に理解せず、対立自体を「悪」として消し去ろうとする。

 

問題の根本的解決には、対立をより明確にすることが重要である。つまり、最初にやるべきなのは、双方の立場をその根拠と伴に明確にすることである。続いて、それらを元に対立の構図を第三者が整理する。最後に、議論を通して、解決を論理的に明確化する。残った部分があれば双方向から落し所を探る。

 

しかし、日本では対立そのものを悪と捉えるために、対立の現場を宥める作業が行われる。問題対立そのものとすり替えられ、未解決のまま後世に残る。その結果、対立が忌み嫌われる。対立の隠蔽、片方の泣き寝入りなどを経て、対立の実質的消滅で事態が終息することが多い。日本文化の下では、対立とその解決は時として虐めに発展することもある。

 

そんな中で効率的な対立の解消は、当事者又は第三者で物理的強者が、全体の融和を取り戻すために、対立の解消をアレンジすることである。これは国際関係では、平和裏に国家間の問題を解決する方法ではあるが、国内ではヤクザが用いる日本的解決法である。わかり易い例を一つあげると都市部での再開発に伴う地上げがある。

 

地上げは、土地所有者と開発業者の間に冷静な話し合いが不可能なため、ヤクザ等が介在して売買を円滑に進め、再開発を可能にすることである。(補足1)日本文化の下では、臨機応変且つ迅速にこのような問題が解決できない。それは制度が整っていないことと、地権の社会における意味が理解されていないからである。

 

2)対立とその解消
 

対立の発生、当事者間の議論による分析、対立解消の計画及びその実施は、社会の時間発展(歴史の進行)に対する合理的な理解である。その方式は、対立を悪と考える文化の下では、採用され得ない。つまり、融和を善とみる社会は、得てして発展をほとんど拒否する社会でもある。

 

日本がそのようなタイプの社会を形成していることは、多分社会学の方では常識だろう。その原因は、日本人はこの世界の全てが、調和的に存在すべきと信じていることである。日本は、空気の支配するの国、あらゆる物に霊を感じる国、或いは、「和の国」である。

 

「和の国」では、自己主張は和を乱す行為であり、避けなければならない。そして、自己にプラスになることは、自分以外にとってマイナスになると考える。つまり、予定調和の中で全ては運ぶ。自己の主張で実行されるべきものは何も無いのである。
 

その文化に強く束縛された人は、自己の快楽を悪とみる禁欲的傾向がある。例えば、財の分配を考えた場合、自分の取り分を多くするという欲望は、他の取り分を犯す可能性があると考える。そして、人は自分の要求(欲求)を論理化することに慣れていない。

 

この禁欲的文化の壁を克服する必要が生じたとき、人は論理を放棄し、例えば「当たって砕けろ」「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」などの言葉と伴に行動する。その時、問題解決に戦略的方法がとれない。
 

3)歴史における例

 

その戦略性の無さが、日本の近代史の不幸の原因でもある。例えば、山本五十六の真珠湾攻撃などは、その代表だろう。林千勝氏によれば、日本軍の殆どが真珠湾攻撃を見て、日本はこれで敗戦することになるだろうと思ったというから驚きである。

 

 

近代経済は、自己の欲求を論理的に主張する競争である。その様な傾向の文化圏との競争になれば、「和の国」は苦杯をなめることになる。過去30年間のようにデジタル化などで世界が急激な経済発展のチャンスに恵まれたときにも、日本企業にそれ程の成長はなかった。

 

日本企業は、方向が定まった時には、一致協力して高いレベルへ品質なり生産性などを引き上げることは得意であるが、変化の時代に体制転換とそのための人事刷新が上手くできない。その結果、弱肉強食で論理優先の文化圏との競争に負けることになる。

 

経済発展のモデルには、新規創業及び従来事業の整理などを含む。その時、現場では多くの対立が生じる。論理的解決できない文化の国では、その対立の原因を正しく分析し、それを体制転換の方向決定に利用できない。つまり、日本経済のこの間の低迷も、対立を正常な、或いは望ましい現象と見做せない日本文化が主原因の一つだろう。

 

例えば、業績低迷する日産は、カルロス・ゴーンのCEO就任(1999)によりV字回復し、ゴーン逮捕(2019)と同期して黒字決算から2年連続の巨額赤字を出した。(2年で1兆円以上)これは、日本型経営の貧困を証明している。https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12556307937.html
 

極最近の例では、新型コロナの大流行にも関わらず、病院制度の改革は一切進まなかった。世界で有数のベッド数を有しながら、入院希望者を自宅に大量に残すという体たらくを演じている。日本は完全に惰性でしか動かない社会である。(補足2) (20:50 編集)

 

補足:

 

1)土地の所有は個人の権利として認められているが、場合によっては私企業への移転が社会全体の活力維持のために重要なこともある。だからと言って、土地所有者のごね得は社会にとってマイナスである。しかし、私企業が土地収用法を理由に土地を一私人からとりあげることは出来ない。公安調査庁元部長の菅沼氏は、名古屋駅前などの再開発事業等において、ヤクザの存在は不可欠であると外国人特派員協会か何かの講演で話していた。(引用動画の25分から:なお、33分ころから統一教会と北朝鮮の関係を話している) 

 

 

2)以下補足で書く。上の動画でも菅沼氏が言及しているが、日本人の多くには国家を自分で守るという意思がない。そのため、日本には守るべき機密事項など存在しないし、スパイ天国なのは当然であると語る。また現在、自前で核武装すべきとの当たり前の意見が、知識人の間でも共有されていない。日本の思想は、議論によって人の間を移動し、そのプロセスで発展すると言う文化は無い。

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