今夜の激論コロシアムはたいへん内容のある番組だったと思う。竹中平蔵氏の論理明解な話には、何時もながら感心する。話し合われた中で中心的な課題の一つは、労働者と企業の関係についてであった。それは、労使のベストな関係は時代によって変化し、現在の法規制はそれに対応していないということである。つまり、経済発展まっただ中の時代には終身雇用制が、企業と労働者の双方に良い制度であったが、最近の日本のような先進国に於いては、互いに良い制度ではなくなったのだという。(注1)
発展段階の国家では会社の進むべき方向はほぼ決まっており、各個人の愛社精神による熱意と会社の業績が正比例する関係にあったのだろう。その後、先進国になった段階では、創造性や高度な専門性を持つ人材と比較的単純な仕事につく人材とに、労働の二極化が起こる。また、会社に必要な人材の種類と量が、会社の動くべき方向の変化により、人のライフスパンと比較して短期間に変化する場合も多くなる。この様な情況下では、もっと近代的なドライな関係が全体的にみて双方に利益をもたらす。(注2)つまり、正社員を終身雇用により過剰に保護することは、待遇における二極化を増幅固定することになるし、会社の営業分野の転換が容易でなくなる。そこで、労働市場での人材流動化を促進する規制緩和は、日本の経済発展維持には不可欠になったのである。(注3)
以上は、ほとんど企業の視点に立った考え方であるが、その理屈はよくわかる。つまり、適切な人材が最も適した企業に入ることにより日本国の経済は生き残れる。そして、その人材を必要とする企業も数年経てば変わる可能性が高いのである。その様な厳しい要求に適応できる柔軟性をもてと、竹中氏は労働者である国民を鼓舞するのである。竹中氏と三橋氏の議論は、近年のグローバル化した経済環境における、労働者に対する要求の厳しさをめぐるものであり、多くは竹中氏に利があった様に思う。
ただ、専門性の低い労働力不足を解消する為の移民受け入れに関しては、私は完全に三橋氏の側にたつ。つまり、土木現場で労働力が不足しており東北の復興もままならないこと、或いは、適当な賃金でのメイドさん(注4)が見つからないことなどの理由で、一定数の移民を受け入れるという竹中氏の考えには反対である。以前のブログでも書いたが、土木工事はテレビの製造とは異なり日本以外に発注することは出来ないのだから、労働賃金を上げるだけで、解決出来る筈である。(注5)また、メイド(保母さん介護士)さんを雇いたい人は、ある程度の給与を出せば、人材派遣業者が必ず人を探すだろう。宗教や文化の異なる国から、安価な労働力を入れることは、必ず禍根を将来に残すことになる筈である。(注6)
つまり、米作は必死に守るべきであると考えて700%以上の関税をかけるのなら、土木作業や保母さんの仕事の輸入にも100%程度の関税をかけてもよいのではないだろうか?(注7)竹中さんには、その明晰な頭脳をもう少し、一般国民側に向けて欲しいと思った。
注釈:
1)藤井内閣官房参与はその古い制度にこだわり過ぎておられる様に見えた。
2)経済のグローバル化により、一般に企業間の競争が厳しくなり、企業は生きる空間を探して短期間に変化せざるを得ない。例えば、富士フィルムは写真フィルム事業から液晶フィルムやカメラ、更には化粧品まで営業範囲を多角化して、見事に生き残った。一方、ソニーは営業内容として所謂白物家電に拘泥してしまい、変化しきれず、2008年には2兆円あった利益剰余金が数年続いた赤字により、半減した。そして、損保事業の高収益がなければ、もっと悲惨な情況だっただろう。
3)更なる経済発展は、日本のような先進国でも必要であると思われる。たぶん、樹木と同様に、成長無ければ死があるのみなのだろう。
4)たぶん竹中氏は、保母さんや介護士さんの意味で、この言葉を使ったのだろう。
5)三橋氏は工事の予定価格だけを言ったが、それだけでは駄目である。完成までの時間を契約にいれ、それに遅れた場合は違約金を企業に厳しく要求することが大切である。財政の問題は、無駄な工事(e.g.東北沿岸の無人島に高く聳える防潮堤は要らないとの指摘もある)を省けば解決可能だと思う。
6)竹中氏もこの危険性には言及していたが、認識が甘いと思う。フランスのイスラム教徒のケースを深刻に受け止めるべきである。
7)キャッチフレーズで読者を増やそうと考えた結果であり、単に国際比較してのそれらの職業の賃金を上げよといっているだけです。
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