日米同盟は現状では日本の生命線である。しかし、その同盟関係の感覚は特に米国において徐々に変化してきているのではないだろうか。そして、1)日米同盟は日本の生命線であっても米国の生命線ではないという非対称なものであること、2)米国の東アジアでの経済パートナーが日本よりも中国にシフトしたこと、の二つが日米同盟に今後どのように影響するかを日本は常に心に留め置くべきである。2)に関しては、日本は多くの経済分野で米国の競争相手であるが、米国と中国の経済関係は相補性が日米間よりも強いこと(注1)、そして、中国は現在米国国債の世界一の保持国であり、それを売ることは米国への経済的兵器にもなりえることなどが、その理由である。
中国にとっても、米国は重要な経済パートナーであると同時に、世界の中心に位置する国家であるという敬意のようなものを持っている筈である。
現在、共産党独裁という政治体制の大きな違いに対する異質感と、ウイグルなどで現地人の人権無視や自由束縛といった米国の国家としての基礎概念(つまり独立宣言)に反する統治が、米国を中国から遠ざける理由である。しかし、それらはかなり遠いかもしれないが、中国の更なる経済発展のある段階で消える可能性がある。その際のモデルとして、ソ連が解体されてロシアと幾つかの周辺国になった歴史がある。
一方、決して消えない暗い日米間の歴史的関係として、太平洋戦争がある。米国は、世界のリーダーから滑り落ちる時には、広島と長崎に対する原爆投下やその他の大都市空襲による民間人の大殺戮を行った国(西欧近代文明の最も嫌うべき“人道に対する罪”の犯罪国家)として、世界から背後攻撃されることを危惧している筈である。
その様な状況に陥らない為には、一つには米国が世界一の地位を未来永劫保つこと、そして、日本を“人道に対する罪”の加害者に仕立て上げることである。米国を世界一に保つことは、軍事面では容易である。経済面でも課題が多いものの可能だろう。そして、米国にとって幸いなことに、日本を人道に対する罪の加害者に仕立て上げることに、韓国と中国が非常に協力的である。
上記の考えに沿って米国政府が行動しているとは言わない。それは米国の一部にあり、モザイク模様の様に米国の中に織り込まれていると考えるのである。既に、上記シナリオにそって韓国をその尖兵として用いている機関があるかもしれない。日本政府中枢はそんなこと考えているだろうか?(注2)
注釈:
1)中国は世界の工場であり、米国は世界の技術創出国である。そして、互いに大きな市場である。
2)可能性のふろしきを広げておくことは、生き残る智慧であると思う。
補足:
米国の一つの州とはいえ、慰安婦の像がつくられたとき、私はこの考えを持った。更に、先日のオバマ大統領が、日本訪問のあと韓国で、「第二次大戦中の従軍慰安婦の制度はおぞましい人権侵害だ」と述べたのを聞き、その思いを強くした。米国の大統領は日本の首相と違って、仮に中国であっても、相手に迎合するようなことは殆ど言わない。人気の経済ブログ(4/28)の中で小笠原誠治氏は、米国は慰安婦をsex slave(性奴隷)だと思っているからだと書いている。私はむしろ、米国はこの件既に詳細に調査済みであり、性奴隷ではなく戦地売春婦であったという事実を正確につかんでいると思う。
しかし、米国は「日本は朝鮮の若い女性を多数強制連行し、性奴隷にした」と思いたいし、歴史に韓国同様、そう残したいのだ。従って、今回の様な政府の姿勢では、カリフォルニアの慰安婦の像は、撤去されることは無いだろう。
尚、軍の末端で一部強制連行の様な行為(犯罪的な行為)はあったかもしれない。しかし、慰安所では奴隷ではなく、かなり高い報酬を支払われた売春婦だったという。それを日本軍が組織的に強制連行で女性をあつめ、性奴隷としたという物語にして歴史に定着させたいのである。一部末端の行為と日本軍の組織的行為の間には、天と地程の差がある。「ナチスのホロコーストは、ナチスの一部軍人がユダヤ人を故無く殺したことではない」という文章で理解してもらえると思う。(5/13/6:00)(5/13/6:00)
0 件のコメント:
コメントを投稿