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人類史の本流は中華秩序なのか、それとも西欧型秩序なのか

1)米国が露呈させた中国共産党政権の真の姿と日本の課題   日本が抱えている最重要な課題は、コロナ問題や拉致問題等ではなく、表題の問に対して明確な答えと姿勢を持つことである。短期的な経済的利益に囚われないで、現在が世界の歴史の方向が決定される時なのかどうかを考えるべきである。...

2015年7月24日金曜日

移民受入賛成と反対の論理

【§1】移民受入れの経済的意味 

団塊の世代が後期高齢者となり、若手層の人口減が進み、生産人口の減少と要介護人口の増加が懸念されている。今のままでは、年金の破綻が確実視されている。また、日本国の経済は全体としての活力を下げ、経済的には二流国への転落の可能性が高いかもしれない。

  経済力が低下することは、国家の安全保障に支障をきたす一つの原因である。例えば、日本と中国の大きな経済的関係は、中国の尖閣諸島への行動を躊躇させる力となる(注釈1)。同様に、世界の安全は、全体としての経済発展と国家と国家の間の密接な経済関係により増加するだろう。

  経済が小さくなっても、一流国として残れば良いという考えもあるだろうが、それでは上記二つの問題、年金問題と安全保障、の解決には役立たない。その解決を諦めたとしても、一流国として残る為には最低限、1人あたりの収入を現在の値に維持することが必要である(注釈2)。しかし、他国が真似出来ないレベルの高度な技術力、開発力、ブランド力などがあれば、ドイツなどと同じような経済的地位を確保できるだろうが、ドイツの工業力と比較すると、その敷居はかなり高いと思う(注釈3)。

  イギリス人、デービッド・アトキンソン氏(注釈4)が語っている。“日本人に「なぜ日本は世界第2位の経済大国になったのでしょうか?」と質問をすると、ほとんどと言って良い位、技術力だとか勤勉な国民性という答えが返ってくる。しかし本当の理由は、日本の人口が先進国中で米国に続いて第二位だからである”と。

  つまり、世界での高い経済的地位を確保する為には、日本の人口増加が必要であるとの結論に至るだろう。それには、出来るだけ早い段階で、東南アジアなどから優秀な日本に同化出来る人、例えば日本で看護実習過程を終了した人を、希望すれば移民として受け入れ、経済規模を維持すべきだろう。

  【§2】移民受入れ反対の論理

日本では移民受け入れには大きな抵抗がある。それは、日本人の風習や考え方が他国の人々のそれらとかなり異なっているからである。つまり、日本社会の大きな財産として、大多数の人々が互いに善意で接するものと考え、それを前提として行動しても困難に出会う確率が低いことである。また、阿吽の呼吸で解決してきたことが、移民の流入により、訴訟で解決しなければならないなどの変化が社会に生じるだろう。

例えば、財布を道路に落した場合、高い確率で交番(ポリスステーション)に届けられ、落とし主が警察に届ければ、最終的に中身に変化なく受け取ることが出来る社会である(注釈5)。この場合、現金が含まれていた場合、その10%程度の礼金を支払うという慣例がある(注釈6)。 

もし社会におけるトラブルが多くあり、それへの対策や解決の為の経費が多くかかる場合、それはGDPの増加となって統計される。従って、パブリックスペースで他人を信用出来ることは、社会に上記GDP分の富が蓄積されていると看做すことが出来るのである。

  以上のような社会の富が、移民の流入により失われる可能性があると考え、それを理由に移民受入れに反対する人が多いと思う。私も、治安の低下などを心配して、移民受入れに反対の書き込みをしたことがある。しかし、その考えは時代錯誤かもしれない。つまり、現在、日本経済、スポーツ、芸能など多くの分野で、大陸出身の日本人がいなければ成立しないし、多くの異なった考え方を知ることは、国際化した世界で生き残る条件だと思うからである。 

【§3】移民受入れの政治的側面

日本は江戸時代までは、日本国というまとまりのある国家ではなかった。幕末期に、主権国家としての体裁を整えた先進国との接触で、危機意識をもった下級武士や下級公家達が、明治維新という大きな改革を為しとげ、主権国家としてのまとまりのある国を作った(注釈7)。支配階級である武士の既得権益を全てとり上げ、西欧文化の学ぶべきところを取り入れた、奇跡的な改革である。西欧に激しく抵抗した筈の攘夷運動が、武士達の特権をとり上げて西欧的国家をつくりあげるという方向に、運動のベクトルを転回したのである。 

この革命の主人公は、下級武士や中間(ちゅうげん:最下層武士)という、鬱積した不満を抱える層であった。彼らは、従来の支配層とは異なって、全てをゼロベースで考えることが可能であった。諸大名、徳川将軍、そして天皇さえ、将棋の駒のように考える自由な発想があった。 

現代日本に、そのような人もエネルギーもないだろう。国民の多数が、憲法9条(注釈8)が国の安全を戦後70年間守って来たと、悲しくなるくらい幼稚に信じている国である。外国軍艦が領海侵犯を繰り返していても尚、日米安保条約に記載されている通りに、日本も備えるという最低限の対策に対してさえ、反対が多数である。しかも、自民党の元幹部の殆どもそのような反対派に含まれる。国会では、憲法違反とか、自衛隊員の危険性増加につながるという反論があるのみで、本来行なうべきこの国の危機的情況とその解決策に関する議論など何もない(注釈9)。

  つまり、日本が封建社会から近代主権国家として進化して得た筈の遺伝子を完全に破壊され、このままでは主権を忘れた家畜的国家に留まりつづけ、最悪の場合は自分では生命を維持出来ずに淘汰される可能性があるのだ(注釈10)。移民の受入れは、経済的な意味だけでなく、この国家としての遺伝子を再獲得する為に役立つなどの政治的意味もあるだろう。 

注釈: 

1)中野剛志氏は、この考え方を国際政治における理想主義に分類し、誤った考え方であるとしている。(注釈9の本、82頁)確かに、現状の日中経済関係は、中国の大戦略を変えるほどのものではないと思う。

2)「金ではない、幸福度だ」という意見はあるだろう。しかし、道徳とか倫理を維持するのも、経済力あっての話である。「貧しいが幸福度の高い国」と宣伝される国があるとしても、それをそのまま信じるのはナイーブだろう。 

3)先日、池上彰さんのテレビ番組で、日本とドイツの代表的企業を比較していた。トヨタやホンダ対ベンツとBMW、キャノン対ライカ、ノリタケ対マイセン、オリンパス対ツァイス、セイコー対ランゲ&ゾーネなどが比較の対象となっていたが、私はどのペアをとってもドイツが上のように思った。

4)元経済アナリストのアトキンソン氏は、移民が受入れられないのなら、観光立国を目指すべきだと説く。しかし、ギリシャでも、観光立国では国の経済が成り立たないことが証明された今、日本でそれが可能だとは考えられない。元々観光業振興は受身的な経済政策であり、世界経済が曇れば観光立国には雨が降るだろう。

5)遺失物と拾得物の詳細な統計として、島根県警察が公表した頁を見つけた。http://www.pref.shimane.lg.jp/police/keimu/kaikei/ishitsubutsu/lost_found_items.html  この頁では、現金を例にとると、拾得金額(A)は遺失金額(B)の92.8%である。落とし主に返還された金額(C)はAを分母にすると、63.6%であり、Bを分母にしても59%あるので、拾った人はほとんど正直に警察に届けていることが解る。

6)遺失物法に規定があり、落とし物の価値の5-20%の礼金を支払う義務がある。

7)井上勝生著「幕末・維新」岩波新書

8)“日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。○2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。”

9)中野剛志著「世界を戦争に導くグローバリズム」集英社新書 この本には、日本の置かれた情況が解り易く書かれている。

10)米国は差し当たり日本を将棋の駒のように使おうとするだろうが、淘汰し消滅させることはないだろう。しかし、隣国と隣国の隣国が手を組めば、日本は消滅させられる危険性がある。つまり、日本併合である。例えば、以下のサイトを観てほしい。http://www.j-cast.com/2015/07/23240979.html

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