戦後の近代技術文明を背景にした経済発展が進行中には、民主主義は政治システムとしてまともに機能しているかの様に見えたが、経済発展が停滞期に入った現代では、再び民主主義は衆愚政治という本質を表わす様になったのだろう。昨日のギリシャでの国民投票の結果は、それを象徴しているように思う。あらゆる国家で、民主主義政治=衆愚政治の確認が今後行なわれるだろう。その様な変化が現れない国があれば、そこには陰の権力(注釈1)が存在する筈であると思う。
我国の政治にも、衆愚政治の兆候が現れていると思う。大衆の政治への期待と政治家の実力のズレは大きい。日本の政治家で高い地位を占める人の殆どは政治家の家系に産まれた政治貴族、つまり政治屋である。昨日の世界遺産登録の際の韓国とのやり取りについて書いた様に、政治屋は二枚舌を駆使して誤摩化すことが政治の技だと思っている。このままでは衆愚政治の弊害が財政問題においても顕在化し、ギリシャの二の舞になる可能性大である。
政治家でも何でも、社会の第一線で働く者は選りすぐられたプロフェッショナルでなければならない。しかし、大衆には骨董品の評価がまともに出来ない様に、政治家の本物と偽物の区別も出来ないから、大衆迎合的なことを言う政治屋を選挙で選んでしまう。日本にも三権以外の政治的権力として、霞ヶ関の官僚機構があるらしいが、行政と密着している関係で、高い見通しの良い視点からの分析や思考が出来ない為、まともな智慧を出さないだろう(再度注釈1)。
ギリシャ問題として現在話題になっている財政問題などは(注釈2)、上記のように経済発展しているときには、棚上げや据え置きで一時しのぎが出来る。何故なら、棚上げした財政問題は、経済発展や通常同時に起こるインフレにより、相対的に小さくなるからである。その様な情況下では、幸せや金のバラマキで大衆迎合的に振る舞えるので、政治屋と謂えども、それなりの成果を演出できるだろう。
現在、米国が中心になって押し進めた経済のグローバル化により、先進諸国のものだった経済発展は途上国に移動してしまった。そして、研究開発能力や新しい発想を産む文化を持たない自称先進国は、所謂“先進国病”という、デフレ経済に悩むことになる。中央銀行が、利下げや債権購入という形で量的緩和という点滴治療をしても、それは単に時間稼ぎに過ぎない(注釈3)。
時間が経過すれば、輸入品の価格上昇などから始まる悪性インフレにより、国民は自分の預金の価値の低下を実感することになる。一定の資産をもっていて株などに投資していた層は、量的緩和の金が株式市場に流れ込んだために、株高という形である程度の配分を得ているだろうが、それも恐らく半分程度は世界的金融機関や投資ファンドが手に入れている筈である(注釈4)。そして、日本国民の大半である労働者の収入は決して増えないだろう。
財政の健全化は、節約か新たに稼ぐ方法を探して国家の経済を拡大するか、方法は二つしかない。ギリシャの首相は他のユーロ圏諸国を脅迫する方法をとっているが、それはまともな方法ではない。収入以上の暮らしを維持するという夢からさめず、財政再建案を受け入れない方に票をいれるのは、大衆は衆愚であることの証明である。
注釈:
1)マスコミを第4の権力ということがあるが、それは他国の戦略の下請けになるか、衆愚政治の旗振役になるか明確ではない。ここでは政権と密接に関係した民間シンクタンクなど、或いは、政府内機関を含めて広い意味での官僚機構などである。(当方素人につき、コメント歓迎します。)
2)財政問題が深刻なのは、先進国の中で日本が筆頭である。国民の貯金を全て召し上げて解決するしか方法がなくなるだろう。
3)通貨安にして、国内の人件費やエネルギーコストをドル換算で下げて、競争力を回復するという捨て身の手法である。それは国民の老後の頼みの綱である預金の額をドル換算で下げることにつながる。当座は気付かないかもしれないが、最終的には悪性の物価上昇、そして(又は)実質賃金低下と言う形で、全ての国民の経済力低下を招くことになる。しかし、この国にはi-padやgoogleなどを産み出す力がないのだから仕方がない。それは大学教育の健全化、経済における規制緩和、更に、個人の自立や健全な競争の文化(
4)日本の代表的企業の株主を見ると、トヨタ自動車の30%、日立製作所の45%、ソフトバンクの46%(昨年後期)は外国人の所有である。全体でも日本株の35%程度は外国人が持つ。更に、日本の個人投資家には素人が多いが、外国人機関投資家は将にプロである。多量の信用取引で、巧みに株価操作を合法的に行なっている様だ。
0 件のコメント:
コメントを投稿