1)金正恩は、訪問した中国で「南朝鮮(韓国)と米国が善意をもって応じ、平和実現のために段階的、共同歩調の措置を取るならば、非核化の問題は解決できる」と表明したと報じられている(3月28日午前13時の毎日新聞)。https://mainichi.jp/articles/20180328/k00/00e/030/257000c?inb=ys
このセリフは、「北朝鮮は核保有国であり、朝鮮半島が安定的平和の地域となるように、米国と非核化を目指して核軍縮の話し合いを行う」と言う意味である。つまり、核保有を認めるとか認めないとか言う話の段階はもうおわったと言いたいのである。
今回の金正恩の中国訪問に関して、3月27日の午前にブログ記事を書いた。(補足1)そこに、中国の要請で金正恩が習近平にあったのだろうと書いたが、それは間違いだった。金正恩にそれほどの自信があるとは思えなかったからである。北朝鮮側から中国に要請したことが3月28日配信のBBCニュースにも書かれている。http://www.bbc.com/news/world-asia-43564834
上記記事の表題「Why Xi’s still the one he needs to see」は、日本語版では「金正恩氏が習近平氏と会わなくてはならなかった理由」となっているが、この訳は正確ではない。上記英語表題は、”今でも北朝鮮が中国の影響内にあり、外交上最重要な相手国であることを金正恩が明確に示した”ことを表現しているが、日本語訳にはそのニアンスは全く欠けているからである。
金正恩の方から中国に要請し、彼の思った通り会談が成功したことは重要な意味を持つ。その一つは、金正恩は北朝鮮を完全に掌握しており、外国訪問してもクーデターの危険性が無いことを、諸外国に示したことである。
中国が、訪問団の歓迎の様子を世界に公開したのは、習近平中国と金正恩北朝鮮というその地域の政治地図と、両国が現在でも兄弟国であるということを明確にするためである。それは、習近平が北朝鮮の指導者としての実力を金正恩に認めたことを意味し、今後北朝鮮への経済制裁を徐々に縮小することを意味している。
現在中国は米国と経済戦争的情況にあり、金正恩は利用価値のある対米交渉の切り札になるだろう。それが、習近平が訪中団を歓迎した大きな理由の筈であり、上記BBCニュースの日本語表題は、主語と目的語を入れ替えてもそのまま成立するだろう。
2)この中朝会談前までは、4月に開催される朝鮮南北会談や5月に予定されている米朝会談を有利に進める上で、金正恩はかなり弱い立場に立たされる可能性があった。しかし、今回これまでの歴史的な(朝鮮戦争以来の)中朝関係を確認出来たことは、この二つ会談に臨む金正恩に大きな力を与えたことになる。
BBCニュースでは、「2月と3月は韓国の文大統領が北朝鮮への対応で主導権を握っていたが、その時期はもうすぐ終わりを告げるかもしれない」と書いている。今回の北朝鮮の非核化問題の主人公は米中朝であり、その開始のベルを鳴らすことで今回の文在寅の仕事は終わりだろう。そして、今後韓国が主役になることは無いだろう。
トランプ大統領は28日のツイッターで「中国の習近平国家主席から昨晩、金正恩氏との会談は非常にうまくいき、金氏が私と会うことを楽しみにしているとのメッセージを受け取った」と書き込んだという。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180328-00000043-jij_afp-int
以前の「金正恩との会談を楽しみにしている」という姿勢にどのような変化があったのか、どこにも書かれていない。会談が困難になることは確かだろう。この件、ロンドン在住の木村正人という人の「北朝鮮の食い逃げ外交を許すな」という記事は、それを危惧しているという内容である。
https://news.yahoo.co.jp/byline/kimuramasato/20180328-00083254/
金正恩は、6月にも日本との話し合いをするつもりだと報じる記事もあるが、米朝会談が動き始めた今、日本に慌ててすべきことは無いと思う。(補足2)北朝鮮の話になると、直ぐに拉致問題を出す人が殆どだが、日本外交が拉致問題に“拉致”されている。
拉致被害者を取り戻すべきなのは当然だが、それは日朝外交正常化或いは日朝戦争で解決すべき問題であり、取引の目的物ではない。日朝外交正常化は、朝鮮戦争が終結して米国と北朝鮮の関係が定まらない限りあり得ない。
補足:
1)その時には訪問した北朝鮮要人が金正恩かどうかは不確定だった。明らかになったのは翌日である。https://mainichi.jp/articles/20180328/k00/00e/030/194000c
2)米朝会談の橋渡しをすべきと3月7日に書いた。しかし、その役割が無い以上すべきことは無いと思う。政治家には、日本は韓国を半島唯一の政府と認めた上で、韓国に対して経済協力をした経緯を忘れないでほしい。軟体動物のような得体のしれない外交はすべきでない。
0 件のコメント:
コメントを投稿