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2021年3月7日日曜日

中国による尖閣侵攻があったとき、自衛隊は交戦するのか?

1)そこまで言って委員会:

 

「尖閣は日本の領土であり、中国が侵攻してきたら日本は防衛すべきか?」という議論が、今日のテレビ番組「そこまで言って委員会」でなされていた。中国の侵攻にたいして自衛隊が防衛出動する場合、先ず、その根拠と必要性とについて、国民の理解を得なければならない。ここで重要なのは、日本の領有権の根拠について国際的な同意を得ることである。この点について、内閣関係者の宮家氏を含めて、言及するコメンテータ−はいなかった。

 

おそらく、そのような本質的な部分で誤った(失言した)場合、この手の番組に評論家として出られないと思ったのかもしれない。それでも、外交評論家の看板をあげている以上、視聴者に考える材料を与える意味でも、問題点の存在位は言及すべきだったと思う。


最近、米国国防総省報道官が、日本に領有権があると一度言及したのち、その後取り消したという。ただ、速記録には日本の領有権を認める発言も残しており、近いうちに米国が日本に尖閣諸島の領有権があるという発言をするのではないかと、その記事は書いている。

 

 

米国は、当然この件で中国と戦いたくはない。そのためには、中国の尖閣侵攻を諦めさせるべきであり、その際効果があるのは、中国に対して、その決断の壁を高くすることである。米国と戦争を始める覚悟が必要となれば、尖閣侵攻は非常に重い決断となるからである。

 

日本政府が、自衛隊が命をかけて尖閣防衛のために戦うには、予め国民の理解を得るべきである。その基礎条件は、尖閣が日本の領土であり、国際的にも認めらていると言えることだろう。単に「尖閣は日本固有の領土」というだけでは説得力がない。日本政府の基盤は、それほど弱いことを自覚すべきだと思う。(補足1)

 

日本のテレビ番組も、日本政府の言葉をオーム返しするだけでは、十分ではない。日中国交回復の際、鄧小平の「尖閣の領有権については、未来の知恵に任せよう」という意味の言葉を国民の殆どは覚えている。「固有の領土」だけでは、国民を十分説得できない。

 

5年ほど前に、この問題を議論した。この領有権の原点は、敗戦とサンフランシスコ講和条約、そして、日米間の沖縄返還協定である。その時に何らかの付随した交渉があれば、それらも含む。ここに参考のために再録する.  https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12466515270.html

 

2)尖閣諸島の領有権についての議論再録:(2016/8/11の投稿;一部編集あり) 

 

昨日に続いて、表題の問題につき整理します。前回の疑問点:サンフランシスコ平和条約第3条を根拠に米国の施政権の下におかれた沖縄が、日米間の沖縄返還協定で日本に返還されたのだが、その二つの条約が整合的かどうかという点が気になる。

 

ちなみにサンフランシスコ講和条約の第3条は以下のような文章である。

 

日本国は、北緯二十九度以南の南西諸島(琉球諸島及び大東諸島を含む。)孀婦岩の南の南方諸島(小笠原群島、西之島及び火山列島を含む。)並びに沖の鳥島及び南鳥島を合衆国を唯一の施政権者とする信託統治制度の下におくこととする国際連合に対する合衆国のいかなる提案にも同意する。

 

このような提案が行われ且つ可決されるまで、合衆国は、領水を含むこれらの諸島の領域及び住民に対して、行政、立法及び司法上の権力の全部及び一部を行使する権利を有するものとする。

 

ここで、米国による国連への提案はなされなかったので、その下の“合衆国は領水を含むこれら諸島の領域及び住民に対して、行政、立法及び司法上の権力の全部及び一部を行使する権利を有するものとする”が沖縄返還協定まで有効だった。

 

領有権に関しては、サンフランシスコ平和会議での米国のダレス国務長官の演説、及びケネス・ヤンガー英国全権の演説、それを引用した吉田茂総理の演説により、日本の潜在的権利が確認されるとのことである。http://blog.goo.ne.jp/jiritsukokka/c/b76a28892b58e4049e4208c73f299ada

 

従って、領有権は潜在的に日本が持ち、沖縄返還協定で施政権が日本に帰ったのだから、沖縄は日本に復帰した。しかし、平和条約3条に規定されている「琉球諸島などを信託統治制度の下におく」という部分が実現していないのだから、沖縄の領有権については未定であると考える立場もあり得る。

 

それは、平和条約が想定した沖縄への日本の施政権回復のルートは、「米国の施政権下=>米国を施政権者とする信託統治領=>日本へ復帰」であるという考えである。

 

つまり、“米国の施政権下”という状態から、日米間の協定のみで日本に施政権を返還することは、平和条約第3条に想定されていないのではないかという考えである。尖閣問題は、内閣官房のHPに記述がある。しかし、この点については何もかかれていない。http://www.cas.go.jp/jp/ryodo/senkaku/senkaku.html

 

3)結論:

 

この問題も、米国が日本以外の東アジア各国と日本との間に米国が置いた楔である。その米国のやり方については、竹島問題を論じたときにも言及した。現在まで、これらの問題が解決できなかったのは、日本首脳及び外交官らの無能力と米国国務省の日本に対する不信感の両方に原因があるだろう。

 

ただ、時代は流動的である。仮に米国による日本の領有権支持の言葉があっても、尖閣防衛はあくまで自衛隊が主体的に行わなければならない。その時、日本国民が、尖閣を祖国の一部であり防衛するのだという明確な意思と気概がなければ、徒に自衛官の犠牲者を出すだけになるだろう。

 

日本国とその防衛軍を、日本国民が全力で支えるという明確な意思を持てば、周辺諸国との戦争防止に役立ち、悲劇的衝突を避けることになると思う。そのために日本政府は、日本国民及び諸外国に対して、はっきりとした意思を、明確な言葉で伝達しなければならないと思う。

 

尖閣は「固有の領土」なら、どうして中国や台湾は領有権を主張するのか? その中国や台湾の立場からの領有権主張の論理を精一杯考えて見るべきである。そのうえで、やはり日本の領土であると諸外国にも説得できる論理を構築すべきである。それらを国民の前に、明示できて始めて、国民の理解が得られると思う。

 

諸外国には、何を考えているのか解らないという印象を日本政府は与えがちだろう。明瞭な言葉を用い、国際的な標準的論理に基づいて、原点から議論及び説得をしなければならないと思う。(日本の言語文化を高める努力を初等教育の段階から、最高のプライオリティで強化すべきである。)

 

補足:

 

1)尖閣が「固有の領土」であるとの根拠を、日本の近代における尖閣の利用実態だけでなく、第二次大戦とサンフランシスコ講和条約及び沖縄返還協定、日中平和条約などから考察して、「尖閣は日本固有の領土である」との結論を導出しなければならない。その努力をしないで、「尖閣は日本固有の領土」とだけ国民に繰り返すのでは、説得力に欠ける。

日本政府の国民に対して基盤が弱いのは、80年前に無理な戦争を始めてしまい、300万人余の死者を出したが、日本国民に対してその責任を明らかにしていないことが原因である。その無責任な姿勢は何度も議論した。

 

(午後9時、全面的に編集しました。)

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