資本主義の発展型としての新自由主義経済下で、現在、資産の拡大と集中が起こっている。21世紀創業のテスラ社のイーロン・マスク氏は、直近の統計で世界1の資産家となった。(補足1) 金額にすると19兆円を超えるという。異常である。https://www.afpbb.com/articles/-/3325134
資産はお金に替わり、特定の人物の意志を得て、他人を使役したり、物品を与えたり出来る。考え方によれば、19兆円の資産は、19万人の人間より大きな働きをする。傭兵に変化すれば、一国を破壊する可能性もあるし、場合によっては、世界の政治を変え得る。
「意志を持ったお金」が政治の世界に乗り込めば、厳格なルールと厳しい監視をもすり抜けて、民主政治や法治の原則を、形だけのものとするだろう。民主的に選ばれた大統領の移民流入制限の政策に真っ向から挑戦するかのように、中南米から大量の移民希望者を送り込んだのは、意志を持ったお金(=誰か政治的人物の意志が乗り移ったお金)の働きがあった筈である。
http://www.world-economic-review.jp/impact/article1197.html
大量の資産が個人に流入する仕組みを造ったのは、19世紀から20世紀に懸けて米国で勢力を増した、一部の人達である。それは、馬渕睦夫氏が云うDeep State (DS) の核となる人達だろう。彼らは、ウイルソン大統領を擁立し、FRBの設立に誘導して紙幣発行権を手に入れた。
資産の集中を容易にするように米国を作り替えた人々は、その権力を影で握る手法として、マイノリティの権利拡大という慈善活動を模した活動を用いた。それは、ブレジンスキー元大統領補佐官が自身の回顧録に書いたことである。 https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12602183456.html
その道具を、ポリティカル・コレクトネス(PC'ness)として、世界の政治を牛耳る道具として成長させた。この弱者と強者の立場を逆転させる手法を用いる人達は、カーボンニュートラルなど環境問題を政治に抱き込み、今や世界の主流になろうとしている。https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12651775965.html
ただ、その政治経済システムの恩恵を一番受けたビッグテックGAFAM(補足2)などは、おそらく新しい存在であり、上記DSの主人公ではないように思う。「意志を持ったお金」が作り上げた世界で、GAFAMなどの巨大な企業群を動かす“お金”は、差し当たり従来の権威(DS)に従うが、火星旅行を考えるような、或いは、人造肉を食べることを推奨したりする、「ナイーブなお金」なのだろう。
「ナイーブなお金」は、誰か他の政治意志により、新しく別種の「意志を持ったお金」に変身する可能性がある。共産党一党独裁の国の手に落ちる可能性もあるだろう。DSの手法であるPC'nessは、左派の思想であり、その理想主義の理解には複雑な頭脳は不要だからである。
金融資産の洪水か津波のような現象を抑えるには、恐らく、金融の空間を何かの権威で大きく縮小させる必要があるのではないだろうか。つまり、巨大な金融市場と、そこでの様々なリスクヘッジ商品、例えばクレジットデフォルトスワップ(CDS)や、複雑なデリバティブ商品などの制限、更には不安定な人心を利用する「空売り」などの信用取引の制限など、現在の経済体制を大きく変更する必要があると思う。
それらのことは、恐らく、世界のお偉方がダボス会議で考えているだろう。WEF(ダボス会議を主催する世界経済フォーラム)などの人達は、米国の強い「意志を持ったお金」、「ナイーブなお金」、更にCCPの「無法に暴れるお金」などとは独立なのだろうか? 恐らく、「意志を持ったお金」の一員なのだろう。
ダボス会議の推奨するステークホルダー資本主義とは、将にその社会主義的手法の一つの表現だろう。しかし、それは世界を大不況にするだろう。このジレンマをどうするのか?
私は、国境を無くすると主張する上記お金持ちとは逆に、主権国家体制を維持して、個々に社会主義政策を導入するしかないように思う。そして、政治と金の間に大きく距離を置く政策を進めるべきだろう。米国は率先して、巨額の政治献金を禁止する法整備を行うべきである。ただ、その障害となるのが、中国共産党政権の台頭である。米国の弱体化は、世界を中華思想の国が制覇することに繋がるからである。 (10:30 編集あり;出来れば、今後この延長上で議論を続けたいと思う。)
補足:
1) 様々な統計があるが、2020年のForbesによる世界のトップ5の合計資産は、50兆円だそうである。https://memorva.jp/ranking/forbes/forbes_world_billionaires.php
2016年2月24日の週刊現代には、「たったの62人」の大富豪が、全世界の資産の無い方から数え上げった半分の人達の富を持つ、あまりにも異常な世界の現実」という記事が掲載された。https://gendai.ismedia.jp/articles/-/47989
膨大な換金性の高い資産(金融資産)の偏在は、それを支配する少数の人達が人類の未来を偏った方向に誘導する可能性があり危険である。現行の資本主義の政治経済のシステムでは、過去の人類が生み出した知的産物や歴史的産物を、現在生きている個人に帰属し、自由に用いることを許している。それを自覚し、社会のために役立てようとするのが、巨大資産を持つ者の道義的責任である。
2)GAFAMは、google, amazon, facebook, apple, microsoftの頭文字をとった企業群である。
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