1)ここ数日少しずつだが、韓国のキム・ワンソプ著「親日派のための弁明」を読んでいる。この本は、自信を無くしつつある日本人の方々、特に左寄りの方々の必読書だろうと思う。何故なら、韓国や台湾の資本主義経済の発展は、日本統治を基礎としてなされたと論理的に述べているからである。今回は、その本を参考にして、韓国の歴史に関する誤解と現在の未成熟な社会の原因などについてまとめてみる。
マルクスの社会発展の理論は、人間社会は下部構造である経済構造の変化が上部構造である政治と文化をかたち作る原動力になるというものである。そして人間の政治構造は、原子共同体社会、奴隷社会、封建社会を経て、資本主義社会に発展してきた。資本主義社会の前段階である封建社会を持ったのは、上記キム氏の本には、日本と西欧だけであったという。
従って、近代資本主義の発展には封建制度を経過する必要があるが、それまでの韓国は李氏朝鮮という帝政であり、日本で言えば平安時代に相当し、近代資本主義の萌芽は全くなかった。日本統治は、被支配国を搾取の対象とする西欧型の植民地政策ではなく同化政策であり、日本と同じ近代資本主義的な政治制度の導入と同時に、近代化に必要な基礎情報の収集、教育制度や交通網整備などのインフラ整備などがなされたのである。
2)次に何故、封建社会が近代資本主義社会の成立に必要かについて考える。封建社会においては、封建領主が一定地域の土地を支配してそれを領民に分配し租税(日本では年貢米)を徴収する。そのため、領地内では地域毎に土地に関する権利や租税に関する強力で整備された法体系と、それを執行できる政治組織を持つ。そして、それらを大きな範囲で統合する中央集権政府が存在する。
従って、領民はその領域とその中で有効な法律を意識して生きるという法治国家の基本を身につける。封建領主の支配は、その権利と義務の関係を保障するものであるから、経済活動もその範囲で広く行われる。広範な範囲での経済活動は、貨幣経済の発展をもたらし、その結果資本の蓄積といったことも広く意識される。これらは、近代資本主義に必要とされる多くのことの準備となるのである。
その結果、日本では西欧の市民革命とは異なった形だが、結果的に明治維新という革命が成功裏に進められ、資本主義的国民国家としての体制を整えることになった。一方、朝鮮半島ではこのような経過を経ておらず、また、登記制度や裁判などにも馴染みがなかったので、独自に近代化を成し遂げるのは困難だっただろう。ただ、現代の日本の歴史教育において、この江戸時代の役割を正当に教えていないことは改めるべきである。
韓国では以上のような、経済史学や歴史学の成果を否定している。つまり、現在でも韓国では近代化の萌芽が李氏朝鮮の時代にあったのだが、それを日本統治が摘み取り、韓国の独自の発展を阻害したという教育を行っているという。それを著者は、韓国は何故「オレンジ畑でリンゴを探すのか」と嘆いている。
3)以上の考察を経れば、何故韓国が、現代においても尚、権利と義務、法と正義などの基本的な知的インフラに(部分的に)欠ける国家なのかが理解できる。例えば韓国は未だに、親日派という人間の分類項目を作り、それに指定された場合には、その資産を没収できるという類のとんでもない法律(反日法)を制定したり、対馬の寺から盗まれた仏像を、犯人逮捕が終わった後も元々は韓国から盗まれたものだから、返却できないと言い張るような国なのである。
韓国のようなことすべての国が主張すれば、ルーブル博物館も大英博物館もほとんど空になってしまうだろう。韓国は上記のような歴史歪曲を行っていること、且つ、それが韓国の発展を阻害しているということについて、支配層すら十分気がついていないらしい。その”苦しみと事情”は、薩長下級士族を中心とした日本政府が、明治維新の後で江戸時代をまるで暗黒の時代のように規定した事実を考えれば、理解できなくもない。(補足1)
つまり、韓国も独自に近代民主主義社会に発展させる段階になり、過去を足場として蹴ることの反跳力を利用することが安易な道として欲しいのである。過去とは日本統治時代の韓国である。(補足2) 韓国がより安易な方向に流される理由として、日本の場合は明治維新を多くの血を流して成し遂げたが、韓国の場合は日本の敗戦という棚ぼた的にその時期を迎えたことがあると思う。(補足3)
また、世界各国に封建社会を経ていない国が多いが、それらの国々に何故個人の権利と義務を明確に規定する民主主義制度と、それが必須の近代資本主義社会が定着しにくいのかが理解できたような気がする。
補足:
1)明治維新という革命で分断された国家を早期に統一をするため、思想教育の一つとして利用されたと思う。しかし、それが訂正されないのは、今でもなお薩長政権が続いている結果ではないだろうか。
2)朝鮮半島の人々は、朝鮮国が中華帝国の朝貢国(属国)であったという劣等意識を、中国より遠い島国日本を格下の国として見下すことを中和剤に用いて、心理的安定を保ってきたのだろう。日本が敗戦したので、それを足蹴にすることに二重の意味が生じたのである。一つは格下の国であるにも拘らず、朝鮮を支配した国であること、もう一つは上記の近代化へ向けて国民を結束させる安易な方法としてうってつけであること、の二つである。
3)以上の考察を経れば、何故韓国は、権利と義務、法と正義などの基本的な知的インフラに欠ける国家なのかが理解できる。
(15日朝一部加筆の上編集)
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