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2020年8月25日火曜日

中国の世界制覇100年戦略

1)米中国交回復はニクソン陣営ではなく中国によって計画実行された

 

現在国防総省の顧問であるマイケル・ピルズベリー(1945年生まれ)が書いた、「China2049 秘密裏に遂行される『世界覇権100年戦略』(2015)という本に、米中国交回復の経緯が書かれているという。このヒルズベリーの本の内容紹介は、発刊早々に北野幸伯氏により書かれている。https://diamond.jp/articles/-/81432

 

それによると米中国交回復は中国側からの対米接近により為され、日本や欧米諸国から軍事的、経済的支援を取り付け、2049年までにアメリカを超える大国になるという「100年マラソン」と呼ばれる戦略に基づいている。

 

「米中和解」を「真」に主導したのは、ニクソンでもキッシンジャーでもなく、中国だったというのである。ニクソンとキッシンジャーはむしろ中国との国交樹立が、ソ連との過度の関係悪化に繋がることを懸念していたという。

 

彼らがその気になったのは、ピルズベリーが入手した情報(ソ連は米ソ緊張緩和の動きを止めない)だったという。そこで、キッシンジャーが1971年に訪中し、毛沢東や鄧小平と意気投合したというのだが、要するに取り込まれたのだろう。

 

ニクソンの「フランケンシュタインを育てるかもしれない」という危惧は、40年後現実問題となった。それは親中派キッシンジャーが中国外交の一本化された窓口であったことが原因であり、それは彼が代々“Deep State”の代理人であった事を示している。

 

2015年、つまりオバマ政権の後期に本格化した米中対立が、いよいよ深刻化したことを象徴するのが、5年後の7月23日にニクソン記念館で行われた国務長官談話であった。トランプのWTO違反が疑われる経済制裁の離れ業により、中国が顕にした本性を見てのポンペオ演説であった。

 

2)ポンペオスピーチ後の中国の柔軟化

 

中国共産党政権の世界覇権樹立の目論見は、北戴河会議を経て若干軌道修正されたようだ。習近平の強行路線から、鄧小平の『韜光養晦』(姿勢を低く保ち、強くなるまで待つ)戦略に戻ったのだろう。つまり柔軟化して、仮想敵対国を誤魔化す戦略を採用した様である。

 

それは、現実主義的戦略とも言える。このような戦略変更が可能なところを見ると、毛沢東独裁時代とは異なり、まだ集団指導体制が機能しているのだろう。この戦略と、北朝鮮の核保有の戦略とはよく似ている。時間稼ぎのために約束をしたり、柔軟になったりする戦略である。

 

この中国の柔軟化の原因となったのは、ニクソン記念館でのポンペオ国務長官による演説だと言われる。トランプ政権首脳は、新バージョンのトルーマン・ドクトリン(ポンペオ・ドクトリン)を採用し、ポーランドなど東ヨーロッパの軍事支援まで行って、ドイツなどに圧力をかけている。

 

法と人権を重視する体制と全体主義体制との冷戦という同じ構図だが、仮想敵国の相対的国力(仮想敵国の国力/米国の国力)が比べて大きいことと、西欧諸国との間で緊密な経済関係が成立していることの二点により、米ソ冷戦のときと話が大きくことなる。

 

勿論、先進技術の全ては中国以外で発達しているので、デカップリング(中国の民主主義圏からの隔離)は理論的には可能である。しかし、それには大きな腫瘍手術のように、西欧諸国に多量の出血や体力の消耗をもたらす。この当りの見積もりは素人には非常に難しい。

 

前回の冷戦の結果は、ソ連の崩壊だったが、今回の結果は中国共産党政権の崩壊だろうか? 私はそうでは無い可能性がかなり高いと思う。それは、上記二つの理由に加わって、人権や人命に高い価値を置く西欧側が、元々全体主義の国に比べて戦争に弱いと考えられるからである。(補足1)

 

その一方、共産党による支配体制を最重要とする中国の体制と、法の支配と人権重視の米国の体制は、同じ時空で両立しない。棲み分けもできないことは、ポンペオ長官のスピーチが示した通りだろう。習近平が明日から知的所有権は完全に守るなどと発言しても、それを裏書きするものは何も存在しない。

 

米国のマスコミやデズニーランドなどを通しての世論誘導や、孔子学院を通して将来の米国を動かす大学生に親中意識を醸成するなど、中国の米国への計画的な浸透は一貫している。その計画は、米国の手足を操縦することだけではなく、頭脳を支配することであった。

 

今回の大統領の任期4年間、仮にトランプが天才であっても、歴史は狂人トランプの気まぐれと記す可能性が高い。足踏みもあるだろうが、世界は恐ろしい現実に向かって着々と進んでいる可能性が高い。

 

 

補足:

 

1)国家の方向転換は民主主義の国では大変である。例えば、対日戦争でF. ルーズベルト大統領が行なった戦争開始のための努力は相当なものであったが、それらは中国では不要である。例えば、炉辺談話などで対枢軸国との戦争の必要性を国民に直接説く一方、和平の妨害のために経済制裁や諜報活動など裏で努力した。https://rcbyspinmanipulation.blogspot.com/2017/08/blog-post_14.html

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