中国は今、深刻な失業問題と経済の失速に直面している。しかし、NTDTVJPの昨日の動画では、不動産市場は上向きで、価格は上昇を続け、投資家が殺到しているという。この不可解な現象にスポットライトを当てる。
1)NTDTVの放送内容:
中国不動産市場は新型コロナ(疫病)流行により、2月に停滞したが、3月に再び熱を帯び出した。疫病(新型コロナ)のため1億人近くが失業し、米中貿易戦争や国際状況の変化により、業界ではこの不動産ブームは持続しないと考えられてきたが、大都市の不動産価格は上昇をつづけ投資家が殺到している。(補足1)
中国メディアは今年3月16日に深圳万科星城がオンラインで売り出した4棟288室がわずか7分間で完売となったと報じた。その後万科星城が販売した5棟も17日に完売した。深圳でのマンションプロジェクトの住宅選択抽選資格を得るため、9000人近くが一人100万元を支払ったという。
この不思議な不動産ブームは今や全国に波及しているという。その理由の一つとして、中国の通貨発行量の増加が考えられる。中国政府は1月1日より預金準備率を引き下げて、現在まで10兆元以上が投入されたという。メディアが不動産市場の再燃を報道し続けた結果、そのほかの都市でも不動産ブームとなっている。
欧州天鈞政経シンクタンクの任重道研究員は、「この不動産ブームは、地方政府と銀行とディベロッパーが利益を上げる構造である」と言っている。地方政府は、土地価格の上昇が地方債の発行根拠になるからであり、銀行やディベロッパーの受益は言うまでもない。
また、「一部の不動産購入者は、ディベロッパーが人を雇って、不動産熱を煽っていることがわかっていて、その流れに便乗しているという。①なぜなら、政府が不動産市場の下落を望んでいないことを知っているからだ」と語っている。
しかし、深圳が全国的な不動産価格の引き上げを主導したあと、7月15日に深圳市住建局が中古不動産の取引を規制した。任重道研究員は、「②中古不動産市場を凍結するのは、中古不動産市場が伸びれば儲かるのは中古所有者だけだが、新築市場が賑わえば、上記3大受益者が潤う」と解説する。
この不動産投資でローンを組む結果、中国の世帯負債比率は57.7%と過去最高になっている。米国ゴールドマンサックスの調査では、2019年中国の住宅業者と開発業者の保有総額は52兆ドルとなっているという。米国債券市場全体の額を上まっている。
2)私の考え:
NTDTVの放送内容の内、青色で書いた「欧州天鈞政経シンクタンクの任重道研究員」と言う方の言葉には、一定の注意が必要である。①の「政府が不動産市場の下落を望んでいない」と、②「中古不動産市場の凍結」は矛盾するからである。(補足2)
重要なのは、現在の中国の不動産バブルは官製だということである。中国政府がメディアを使って不動産バブルを起こしている。情報を知っている富裕層共産党員は、そのバブルを煽ることと、高値で売りぬけることで儲ける。上記任重道研究員という官吏の言う三大受益者は、全て末端ではない共産党員または本質を知る知恵者だろう。
何時かは不明だが、不動産価格の暴落が起こるだろう。新築物件の価値上昇がやがて崩壊するバブルではなく、本質的なものに見える様にするには、中古市場での価格上昇が必要である。中古市場の凍結は、この官製バブルは崩壊させる予定であることを白状したようなものである。
ここで、世帯負債比率という言葉だが、この言葉は非常にわかりにくいが、世帯の貯蓄額をその負債額で割った値なら、日本の平均は28.2%である。高いところでは、中国での平均として紹介された57.7%に近く、57%を超える都道府県も存在する。https://todo-ran.com/t/kiji/21382
下図は、21世紀はじめ(2001-2005)での主要11ヶ国の1世帯当りの金融資産、実物資産(不動産や貴金属などだろう)、負債の対総資産割合を示したものである。https://www.nli-research.co.jp/files/topics/37300_ext_18_0.pdf
この図では、負債/金融資産の値は、デンマークで200%以上、ノルウェーやスウェーデンでも100%を超える。従って、57%はそれほど大きな値ではない。ただ、もし総資産に対する負債の割合なら、デンマークの40.7%が最高であり、57%は不健全なレベルで高いことになる。NTDTVの語りでは不健全なレベルで高いと言うニュアンスなので、そこでの”世帯負債比率”は総資産に対する割合だろう。
もし、負債が総資産の57.7%なら、実物資産である不動産がバブル崩壊で価値が崩落すれば、金融資産はすべて負債返済にまわり消えるだろう。つまり、民間人一般が持っているお札(人民元)は、全て上記「地方政府と銀行とディベロッパー」が吸い上げることになる。
これら三者はすべて中国共産党政府の支配下にあると考えれば、6月25日に投稿したある中共政府の内実を知る人の予測として書いたこと:「米中隔絶の下での中共政府の対策と個人のあり得る対策」に一致する。https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12606678556.html
①お金は政府が配った紙切れで、政府が認めれば使えるが、政府が認めず別の紙切れ切り替われば使えなくなるので、政府の新札発行に注意すべきだ。それまでに、現物(外貨、金など)に替えるべきだ。
また、②国民の財産(金融資産)は、政府の負債だ。政府が負債を減らしたいと思えば、株式市場を操作し、株価を暴落させる、或いは、不動産を暴落させる、などの手段がある
これからのことを良く考え、お金は現物に替えるか、外貨に替えるべきだ。
なお、米中隔絶(つまり、中国との経済のデカップリング)は、中国習近平政権も真剣に警戒している。(補足3)
バブルはやがて崩壊する。中国の不動産価格も崩落する。それは既に政府主導で開始されていると思う。その結果、すべての紙幣は中国政府に戻る。似た現象があったような気がする。最大の力を持つものは、世界を定期的に混乱に持ち込んで、お金を集めることが可能である。
(以上は、一素人のメモです。)
補足:
1)北京週報というメディアの昨年9月の記事(下のサイト)に、「炒房(住宅投機売買)」はここ十数年の間に中国で新たに生まれた言葉で、中国の都市部における住宅商品化にともなって登場した」とある。
http://japanese.beijingreview.com.cn/nation/201909/t20190917_800178656.html
中国では、マンションを住むために買っているのではなく、投資のために買っている富裕層が多い。その結果、ゴーストタウン化した住宅街があちこちに出来る。中国ではそれを「鬼城」と呼ぶ。 https://business.nikkei.com/atcl/opinion/15/101059/080300060/
それでも尚、再燃した住宅バブルに人は金をつぎ込む。政府が金融緩和したことと、中国人は政府の発行する紙幣を信用しないからだろう。金融緩和は、不動産バブルの呼び水だった可能性がある。つまり、官製バブルその官製崩壊である。
2)人民元にたいする信用が失墜することを多くの人が知っているのかもしれない。実物資産の確かなものとして不動産と貴金属があるだろう。不動産の暴騰は、米ドルに交換できないので、人民元を止むを得ず不動産に交換しているのだろう。その場合人民元で利益を積み上げても仕方がない。上海総合の株価も上昇している。金価格の上昇も、中国主導なのだろう。
3)習近平(しゅう・きんぺい)は、5月23日、世界2位の同国経済を計画経済の時代に戻す考えはないと述べ、約束した改革を実行していないとの米国の批判に反論した。(新華社)https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-05-24/QAT4YTDWLU6901
また、7月22日、企業家を集めて、あらゆる手段を講じて市場主体(会社だろう)をしっかりと守り、市場主体の活力を喚起する必要がある。と演説した。
http://jp.xinhuanet.com/2020-07/22/c_139231101.htm
習近平は計画経済に戻る可能性を恐れる企業家を意識しているのだろう。企業家は、政権維持が中国共産党政権にとって中国経済よりも大事であり、中国人民の福祉などより遥かに大事であることを良く知っている。習近平は、その企業家の危機感を知っている。それは、MOTOYAMA氏がyou tube動画で何時も言っていることである。
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