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2020年8月19日水曜日

井上陽水の歌「傘がない」について

私は、井上陽水は世界的なシンガー・ソング・ライターだと思っている。彼の作った歌には、他のだれにも創れない名曲が多い。その歌詞は、オリジナリティに富んでおり、それ故に日本でも世界でも、理解されないものも多いだろう。それだけでなく、陽水の歌に親しんでいる我々の理解さえ、超えるかもしれないものも多い。例えば「傘がない」の歌詞は以下のように始まる:

 

都会では自殺する若者が増えている。今朝来た新聞の片隅に書いていた。けれども、問題は今日の雨。傘がない。行かなくちゃ、君に会いに行かなくちゃ。君の町に行かなくちゃ、雨にぬれ。

 

利己主義の権化のようだと思う人もいるだろうが、自殺数を減らすことは一般人には簡単にできることではないし、この主人公にはそれを考える立場にもない。ここでは、普通の日本人には口外が不謹慎に思える表現を歌詞に入れて、まるで遠近法を巧みにつかった油絵のように主題を歌っている。

 

これに続いて:

つめたい雨が、今日は心にしみる。君の事以外は考えられなくなる。それはいいことだろう?

 

比喩を用いれば、まるで砂漠の中を水筒もなく進む、脱水状態のひとの描写のようである。相手の方も同じ様な状態なら、会った後に電気のショートのように治癒することが約束されている。つまり、幸福な時間が約束される。

 

問題なのは、雨にぬれて行かなければならないことだろう。しかし、それは大した問題ではない。当然彼女もその考えについては同じ筈だと、相手に問うのが「それはいいことだろう?」であると私は思う。(補足1)「そんなに無理しないで、明日にすればいいんじゃない?」は、彼にとっては恐怖の言葉なのだ。

 

複雑で非常に大きな構図の大きなエネルギーの流れ(つまり、社会全体)のなかに、明確な小さな存在、しかし人間として十分熱い存在を、思い切りクローズアップで描いたのが、この歌だろう。

 

尚、素晴らしいライブの演奏は、CD版などと違って、二度と同じ演奏はないかもしれないと思えるほど大きくモディファイされている。

 

 

 

 

補足:

 

1)このいいことだろう?は当然、「君」に対する言葉であり、第三者に対する言葉ではない。(相手は目の前にいないのだが、二人の世界の中での問いかけである。)第三者だという解釈の方のブログもある:https://tokyo.whatsin.jp/85807) そこでは、「本当に社会に無関心な人だったら、ワザワザそんなことは問いかけない」と書いている。私には勘違いにしか思えない。()内は翌日午前に追加

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