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2020年8月6日木曜日

日本の防衛に中国や韓国の理解、了解、了承、許可が必要か?(雑談風)

自民党は、敵領域内軍事基地の攻撃能力保持に関する提言を、4日午後に行ったようだ。その提出前の時刻に、河野太郎防衛相の閣議後の記者会見があり、そこでその提言に関する質問があった。

 

「今朝方、政調審議会(補足1)の方で、ミサイル防衛に対する提言がまとまりまして、相手国領域内でのミサイルを阻止する能力の保有の検討を求めている内容なのですが、午後政府に提出されるということですが、防衛省として、どのように提言を受け止めて、検討を進めていくか、改めて、お考えを教えていただけますでしょうか。」

 

それに対して河野防衛大臣は、「イージス・アショアの代替策について、そして、新たなミサイルの脅威に対応できるようにどうするか、政府としてもしっかり検討してまいります」と答えた。

 

それに続いて、東京新聞の上野実輝彦という記者から、事実上の「敵基地攻撃能力」保有の検討を政府に求める自民党の提言について、「中国の理解を得られる状況ではないのでは」と問われ(補足2)、「中国がミサイルを増強しているときに、なぜ了解がいるのか」という若干怒気を含む発言があった。https://www.mod.go.jp/j/press/kisha/2020/0804a.html 

この件、youtubeで多くの人に取り上げられ、話題になっている。

 

 

 

==== 以下付録の雑談 ====

 

1)この質問と答弁における日本語の解説:

 

「周辺国の理解」を「周辺国の了解」と解釈しての防衛大臣の答弁だが、この場合「理解」は「了解」と同意義である。この日本語特有の曖昧さを含む質問と答弁であるが、質問をした人は恐らく非常に「理解力」に乏しい人か、中国から給与がでているかのどちらかだろう。

 

河野太郎大臣は語学に堪能なので、理解=了解として正しい文意がとれたのだろう。質問者も“好意的”に解釈すれば、自分が何を質問しているのかさえ、わかっていなかったのかもしれない。理解は、単に「意味が判る」という意味だが、「理解を得る」という風に、得るをつけると、その「理解」は「了解」に等しく、了解は「了承」及び「許可」に等しくなる。

 

理解の「理」は「理にかなっている」という意味の「理」である。「解」は「解けている」(=ほぐれている)という意味である。つまり、「理解」は、ある複雑な件の理由や事情が「ときほぐれている」ことを意味する。

 

また、了解と了承は殆ど同じ意味で用いられる。これらは、「許可」という言葉を使いたくない場合、同じ意味を柔らかく言う場合に用いられる。言葉の硬軟に特別に広い範囲があるのは、日本語の特徴である。(補足3)東京新聞の記者の質問は、硬い言葉を用いれば「日本の防衛システム整備計画は中国の許可を得ているのか?」である。防衛大臣は、それを直ちに“理解”し、「何をアホな事を言っとる」と反論した。

 

尚、了解の「了」は「終わること」を意味し、「解」は上記のように(ほぐれている)という意味である。従って、「了解を得る」は相手の理解の確認が済んでいるという意味である。相手が、その件を通常自分の利益に反すると予想される上位者なら、この「了解を得る」は「許可を得る」に等しくなる。(補足4)

 

2)千年経っても”ブラッシュアップ”されない日本語について

 

漢語の導入により、日本語の言語空間が整理されていない学者の書斎のような状態にある。それにも拘らず、或いはそれ故に、議論を嫌う傾向が強い。またその言葉を使う場合でも、解りにくい言語の共通理解を得るよりも、英語など外来語を使う方が簡単な場合が多い。(補足5)

 

勿論、他の言語例えば英語の場合にも、同様の複雑さはあるだろう。しかし、日本語と違って、言語の共通理解は、常に議論の習慣で達成されている可能性がたかい。(補足4)

 

 

補足:

 

1)自民党政務調査会の決定機関として政務審議会が置かれる。構成は政務調査会長と同副会長である。(ウィキペディアの記事を借用)

 

2)東京新聞上野記者の質問は、以下の通り。

「関連でお伺いします。安全保障政策の見直しに関して、自民党提言にあったような相手国の領域でのミサイル阻止能力を検討する場合はですね、周辺国からの理解というのは重要になってくると思われますが、現状では特に中国や韓国といった国からは、防衛政策の見直しについて、十分に理解を得る状況ではないようではないかと思いますが、防衛政策の責任者として、現状の認識と、今後もし理解を得る際に、必要だと思われることがあればお願いします。」https://www.mod.go.jp/j/press/kisha/2020/0804a.html

 

3)日本は、井沢元彦氏の本にあるように、言霊の国である。言葉は大衆の道具ではなく、神仏のものである。一旦口に出した言葉が否定された場合、人格が否定されるので、話はしない方が無難である。日本のあちこちに標語が溢れているのは、なるべく話したく無いからである。つまり、「沈黙は金、雄弁は銀」である。

https://www.contact.co.jp/blog/index.php?/archives/532-unknown.html 

 

4)「理解する」は英語のunderstandである。前半のunderは「下で」くらいの意味で、standには立つ又は耐えるという意味があるので、「自分に不利でも下で耐える或いはポジションを変えない」くらいの意味だろう。「理解する」と「その下で我慢する」は、現実的には非常に近い意味がある。

尚、語源辞書には"comprehend, grasp the idea of,"などとゴタゴタ書いてある。https://www.etymonline.com/search?q=understand 

 

5)企画書などを議論するとき、スキームとかロードマップとか外来語を多用しがちである。新型コロナ肺炎の話で、クラスターとかオーバーシュートとかいう言葉を抵抗感なく使っている。モラハラ、セクハラ、コンセプト、チェックなどなど。

これらに日本語訳として漢語表現は存在する。しかし本質的な話をすれば、古代日本人にとっても現代日本人にとっても、どちらも外国語なのだ。(コンセプト=概念、どちらも外国語なのだ。)

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