1)国際社会の形成までの歴史に関する私の復習:
現在、地球上の200程の国家は、原則として野生の原理の支配下にある。例えば、自国の安全と将来が完全に保障されるような状況なら、中国は台湾や日本を自国領とするだろう。その情況が日本人には一切理解されていない様に思う。
そのような国際関係或いは民族関係は、大航海時代以降20世紀以前では常識だろう。その恐怖が、国を作り民族団結の礎となった。20世紀にはいり、国家の経済力の上昇、武器の性能の向上などにより、戦争の悲惨さを増すことになったので、①戦争を避けるべきだという共通認識や、②非戦闘員の殺害などは避けるべきだという思想が、欧米諸国を中心に生じた。
それらが、パリ不戦条約(1928年)やハーグ陸戦条約(1899年)として具体化した。これら二つの条約には、英米仏独日伊、そしてインドやソ連など、ほとんどの主要国が参加した。不戦条約では自衛戦争は例外とされていることや、アフリカやインド東南アジアなどが植民地であったことなどの問題を内包するが、地球上の国々を法の支配下に置く試みとして、期待された。
植民地を確保しながら不戦を誓う先進国を、発展途上の国は強国の共同エゴイズムと見ただろう。更に、植民地が十分確保出来ていない先進諸国は、侵略の定義が曖昧なので、軍事行動を自衛戦争として正当化することも可能だった。極東国際軍事裁判で日本の戦犯が裁かれる際、これらの条約が背景にあった。インドのパル判事は、パリ不戦条約は法とは言えないという立場で「平和に対する罪」で東條以下を裁くことに反対した。(ウイキペディアの不戦条約参照)
国際間に広がる条約締結の主旨には、国際機関の設立と国際法及び国際裁判、更に、国際警察の設立へ進むべきだという人類の理想が含まれていると思う。最初の試みである国際連盟は、米国大統領ウイルソンの努力により設立されたものの、孤立主義の伝統を持つ米国は加盟しなかった。更に、その後も主要国が相次いで脱退するなど、脆弱な組織でしかなかった。
現在、国際間の平和維持機関として存在するのが、第二次世界大戦の戦勝国を中心に発足した国際連合(UN, United Nations)である。国際連盟が持たなかった「国際警察」的機能として、加盟国の軍備を用いる所謂“多国籍軍”(国連軍)の編成が、憲章42条として含まれている。
ただ、国連も上記パリ不戦条約同様に、特定の民族或いは国家のエゴイズムを達成するための道具になり得る。それでも、国際法や国際倫理を持つことの重要性に対する同意形成として、その維持に各民族や各国家の努力が大事だろう。その背景にあるのは、恐らく各国の持つ神に対する畏敬の念だと思う。つまり、世界平和への人類の意思は、宗教心の発露以外ではあり得ないだろう。
2)国連の敵国条項
国連は、戦勝国及びその後継国を安保障理事会の常任5カ国(以下常任理事国)を核にして、出来ている。常任理事国に政治体制の全く異なる国を含むなど、肝心な時に機能不全を起こす可能性がある。更に、世界大戦終結後75年を経てもなお、敵国条項がその憲章に残っている。(補足1)
これらの欠陥を修正しなければ、国連は常任理事国の中で力のある国の戦略的道具として利用されるだけで、世界20世紀前半に生まれた「法の支配による地球規模の人権尊重と世界平和」を実現する理想から、退行する21世紀となる可能性が高い。
主要国の中で、敵国条項により敵国と呼ばれうるのは、厳密に言えば唯一日本だけだろう。元々ドイツもイタリアも所謂枢軸国であり、国連憲章上は敵国と呼ばれる資格があるが、ドイツもイタリアも第二次大戦時の国ではなくなっている。しかし、日本だけが、第二次大戦前と同一の国であることがその理由である。
日本国憲法は、第45代の吉田茂内閣の時、大日本帝国憲法の手続き(第73条)に従って改正され、公布(1946/11/3)施行(1947/5/3)された。更に、その憲法の既定に従って、国家元首だった昭和天皇は、引き続き国家の象徴として天皇の地位を継承している。日本国と大日本帝国が連続関係にあることは、日本が連合国に無条件降伏した訳ではないことの必要十分な証拠である。
ドイツは、連合国に無条件降伏し、第二次大戦後分割統治された。その憲法は、ワイマール憲法の延長ではなく、ドイツ基本法として制定され、現在に至っている。イタリアは、敗戦後日本やドイツに宣戦布告しているので、完全に枢軸国としての国家体制が途切れ、その後新しく憲法も制定している。(補足2)
敵国条項(主に国連憲章53条)は、「安保理事会の承認なしに、地域的取り決めによる軍事的な行動(enforcement action)は禁止する。ただし、敵国の侵略政策の再現に対するものは例外とする。敵国とは、第二次世界戦争中にこの憲章のいずれかの署名国の敵国であった国である」と読める。
ただ、日本、ドイツ、イタリアなどの枢軸国も加入している現在、この文章は死文化していると考えるのは正当な解釈だとも言える。(補足3)そして、日独伊の協力もあって、1995年の第50回国連総会では憲章特別委員会による旧敵国条項の改正削除が、賛成155、反対0、棄権3(キューバ、リビア、北朝鮮)で採択され、同条項の削除が「約束」された。
しかし、その約束は果たせられておらず、敵国条項は憲章から削除されていない。つまり、敵国条項は現在も明確に生きている。その実質的な対象は、第二次世界大戦時から連合国(united nations)側の敵国として、連続線上にある唯一の国、日本である。(補足4)この情況に対して、2009年の麻生内閣のときに、当時衆議院議員だった岩国哲人氏により国会で質問された。しかし、その答弁は一言で言えば「努力する」という具体性の無いものだった。
この件を議論している文献として、2015年の東洋経済の記事「戦後70年、いまだに敗戦国扱いされる日本:国連とは第二次大戦の「連合国」の意味である」がある。https://toyokeizai.net/articles/-/78407?
この記事には、中国はこの敵国条項を持ち出して、日本を牽制していると書いている。前セクションで、「世界平和への人類の意思は、宗教心の発露である」と書いた。無宗教で、利益を最優先する文化の国中国には、そのような意思は全くない。
ここ10数年、中国共産党政権は、南シナ海での国際条約を無視した軍事基地建設や、中小国への軍港設置、更にはウイグルなどの自治州などで「ホロコースト」(米国前国務長官の発言)、英国との条約を無視した香港の直接支配と人権活動家の弾圧などを行った。
そして、トランプ政権の4年間に、中国は世界の脅威として確認されるようになった。安全保障を、国連を中心とした外交と日米条約に頼る日本は、今こそ分担金の+ーを表に出してでも、敵国条項削除に再度努力すべきである。
(最終稿:1/26早朝)
補足:
1)この敵国条項の“敵国”だが、英語では“enemy state”である。外務省では“enemy state”を“旧敵国”と翻訳して、国民を誤魔化している。下記サイトの最後の方を見ていただきたい。
日本政府は、日本国民を代表する国民による統治者ではなく、何処かの傀儡政権であることが疑われる。(明治維新以降の近代史の謎を暴くことで、それが明らかになる筈;1/26早朝)
2)ドイツとイタリアの憲法制定に関する詳細なプロセスは、あまり勉強していません。何か抜けた所があれば、ご指摘いただきたい。
3)日本政府がこの部分を死文化しているとする根拠は、国連結成当初敵国と見做された国も国連に加盟を許されたからである。1973年までに、憲章は3回改正されたとウィ小ペディアには書かれているので、死文は削除するように改正できない筈はない。常任理事国の中に拒否権を行使する国が出てくることを予想して、憲章改正案を出さないのかもしれないが、やってみるべき。
4)松江市議会議員、貴谷麻以さんのブログを引用します。
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