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2021年1月18日月曜日

貧富の差の拡大と世界の政情不安:日本の生き残る限られた道

昨年9月に書いた記事が今日これまでに4回読まれています。そこで、この記事をリブログします。日本の生き残る道は、伊藤貫さんや中川昭一さんが主張していたことです。私は、オバマが広島を訪問した時の光景が忘れられません。ある軽率な被爆者とオバマの抱擁です。

 

1)貧しい国ほど貧富の差が大きい

一般に貧しい国ほど貧富の差が大きい。そして、多くの貧しい国では、実質的に独裁政権が国を制圧している。貧しい国では一般大衆は常に強い不満を持ち、政治的にエネルギーが高くなっている。その様な状況では、極端な場合、独裁恐怖政治のみが政治的に安定となる。そして、自由の無い国では、自国発の技術開発などによる経済発展は望めないのだ。

 

独裁政権では、政権に近い者は豊かであり、遠い者は貧しい。もし、政権に遠い者が豊かになれば、其の政権は転覆される可能性がたかくなる。経済力は政治力に変換されるからである。つまり、遠くのものは徹底的に差別し搾取することが、独裁政権の安定化には必要である。(補足1)

 

貧富の差を表す指数としてジニ係数がよく知られている。その説明を簡単に行うが、以前の記事の方がわかりやすいかもしれない。

https://rcbyspinmanipulation.blogspot.com/2016/09/1_29.html

 

上の図がジニ係数の説明図である。先ず、収入の低い順にその国の人全員を並べたと想像してほしい。ジニ係数を計算するための曲線(上の図のAとBの境界)は、ある横軸座標の人数(X)までの収入の合計額が、その縦軸座標Yとなることを意味する。従って、最高年収者が横軸100%のところに来て、その縦軸の値が国民全体の収入となる。

 

更に、国民の収入の総和を1.0、総人口も1.0に規格化して、グラフを書き換えたのが、上の図である。45度の線と、上記曲線(Lorenz曲線)で囲まれた部分Aの面積とその下のBの面積から、A/(A+B)を計算し、その値の2倍をジニ係数という。それを100倍して%表示にした数値をここでは用いる。

 

45度の線は、全ての人の収入が等しい場合のLorenz曲線である。その時、Aの面積はゼロになり、従ってジニ係数はゼロである。一人を除いて、全ての人の収入が0で、最後の一人が全ての収入を得る時、ローレンツ曲線の最後の点以外はX軸に一致し、ジニ係数は100%となる。

 

つまり、完全に平等な収入ならジニ係数はゼロで、完全に不平等(独り占め)の場合が100%となる。その間の数値では、数値が大きいほど貧富の差が大きくなる。一般に40%では暴動が起こる可能性があり、50%では常時暴動の危険に晒されていると言われる。図の右にあげた各国のジニ係数を見て、その国の政治情況を知れば、その数値の大凡の意味がわかるだろう。

 

ここでは収入でジニ係数を計算したが、それを資産額で計算すると、ジニ係数は普通もっと大きくなる。

上の図は、世界各国の一人当たりGDP(横軸)とジニ係数(縦軸)の関係を著した散布図である。(補足2) おおよその傾向として、豊かな国ほどジニ係数が小さく、平等に近くなっていることがわかるだろう。以上が、「一般に貧しい国ほど貧富の差が大きい。」ことの証明である。勿論、「国が貧しいこと」と「国民が貧しいこと」は違うという方は、この節の題を替えて読んでほしい。(補足3)

 

因みに中国やインドのジニ係数が約50%だが、それはどの様な情況なのか。例えば全体の80%の人の収入が年間100万円で、残りの20%の人が1000万円のような場合、ジニ係数は51%である。或いは、国民数人或いは数十人程度の人間が全体収入の半分を取り、残りがその他に平等に分配された場合、ジニ係数は50%となる。何れにしても酷い貧富の差であり、ジニ係数50%は常時暴動発生のレベルと言われる理由もわかるだろう。

 

北欧など豊かで非常に平等な国は、ジニ係数27%程度で、日本のジニ係数0.34は先進国では決して低い値ではない。(補足4)ドイツやカナダよりも高いジニ係数であること、つまりそれらの国よりも貧富の差が大きい国であることを知るべきである。

 

2)グローバル化によるジニ係数の増加と文明崩壊の危険(日本に関しては致命的問題)

 

人口の大きいインドと中国を始め、アフリカや南米の国々のジニ係数は大きく、一人あたりGDPは低い。中国とインドの人口は合わせて27億人である。欧米や日本、韓国、台湾などの国以外の殆どの国は、低い一人当たりGDPと高いジニ係数の国だろう。(最初の図内のデータ参照)何故このような事になったのか。

 

資本主義経済のグローバル化により、多くの貧しい国では、一部の国民が先進国の手先になることで経済発展の恩恵を受ける。また、先進国でも既存企業の海外流出が進み、貧富の二極化が起こる。その結果、恐らく、世界のジニ係数はグローバル化の進展とともに著しく大きくなり、世界中の国に暴動のエネルギーが蓄積しているだろう。

 

例えば、東亜日報の記事(2012・12月11日ネット上)は、改革開放路線に転向する前の中国のジニ係数は32%程度だったと書いている。その後ジニ係数は、2012年で恐らく60%に達しており、常時暴動レベルであると書いている。(補足5)

http://www.donga.com/jp/article/all/20121211/419809/1/%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E3%81%AE%E3%82%B8%E3%83%8B%E4%BF%82%E6%95%B0%E3%81%AF%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E6%9A%B4%E5%8B%95%E3%83%AC%E3%83%99%E3%83%AB

 

今後、このグローバル化路線で世界経済が拡大すれば、貧富の差の拡大による更なる政治の不安定化、地球資源の枯渇、地球の温暖化、プラスチックゴミなど環境問題の深刻化が進むだろう。この(エネルギー、資源、環境)の問題の相乗作用で、世界的紛争が頻発する時、文明が崩壊する危険性が高い。終末論が予言するような事態に近づいてきたと思う。

 

地球温暖化の問題を気象問題として捉える人がほとんどである。気象への影響など、このブログでも何回か書いたが大した問題ではない。この地球温暖化問題の発端は、ローマクラブがMITの研究者に委嘱してシミュレーションした、「有限の地球上で人類は“成長の限界”を迎える」という報告であった。つまり、地球は有限であり、其の中に豊かに暮らせる人間の数も有限である。そこで、化石エネルギーを縛ることで、途上国の経済発展を抑えようという考えが発端である。

 

この地球温暖化キャンペーンは、終わりの始まりに過ぎない。事態が更に緊迫して、新たなステージに入るだろう。世界的混乱の時代になると、大きな力を発揮するのが核兵器である。しかし最初に起こるのは、核戦争ではないだろう。核保有国による、威嚇と収奪による非核保有国の極貧化と人口減少が起こるだろう。難癖はいくらでも可能であることは、既に日本と隣国の間での紛争が証明している。

 

そのような段階から更に一段階情況が進むと、偶発的な必然として、野蛮国の将軍がもっと手っ取り早い方法を取るかもしれない。

 

例えば中国解放軍少将の朱成虎は、「世界の人口は無制限に迅速に増加している。地球上の資源は有限なのだから、核戦争こそ人口問題を解決するもっとも有効で速い方法である。」と、核戦争を支持する発言を行った。その先制核攻撃論に対して、中国は昇進で答えている。https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9C%B1%E6%88%90%E8%99%8E

 

従って、非核保有国に将来はない。現在、世界人口の4割近く27兆人の人口を抱える中国とインドはともに核保有国である。日本人の思考の幅は、核兵器を思考対象にすることができない位狭いのだが、日本の将来は、如何にして核抑止力を持つかにかかっている。

 

補足:

1)江戸末期、島津が豊かになるのを、江戸徳川が見過ごしたことが、幕府崩壊の大きな一因だろう。島津は、密貿易や琉球からの搾取(黒糖政策)で富を蓄えたのである。

2)ルクセンベルグの一人あたりGDPが多いのは、金融業で稼いでいるからである。

3)国の豊かさは、国民だけでなく、法人や団体、国家及び地方政府全てを含めた貸借対照表(BS)の実質的大きさで決まると言えるかもしれない。しかし、評価や計算には大きな任意性がある。例えば、国際的地位、政治的安定性などが計算に乗らないBSなど考えても意味がない。強力な軍事力は、その装備という動的資産以上の意味がある。米国のそれは、大きな純資産としての意味がある。

4)ジニ係数27%のモデルケースとしては、人口を5分割し、最初の20%の人が200万円、次の20%が400万円、そして20%の人口ごとに600万円、800万円、1000万円と分配された場合である。この程度の大きな格差でも、ジニ係数は26.667%である。人間の能力にも大きな差がある。そこで、なんとかこの程度の分配の差別で、社会を作れるとしたら、理想的かもしれない。

5)中国の経済データは闇の中にある。共産党政権は種々のデータを隠蔽する上、自分たちでも実態を掴んでいない可能性がたかい。特に地方のデータを中央は掴んでいないようだ。この60%という値は、東亜日報の独自の推定値である。

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