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2019年1月13日日曜日

民主主義、自由主義、保守主義、個人主義とはなにか:自分なりに言葉の定義のそれら用語の相互関連について考えてみた

今日の中日新聞日曜版に民主化から見た政治という全面2ページの特集が掲載され、世界銀行の調査による各国の民主化度を色で示した世界地図が掲載されている。国民の言論や表現の自由、政治参加の自由などから民主化度を算出し、図示したのである。

その高い方から、北欧や英連邦諸国、日本、台湾、米国、フランスなど先進国が続く。インド、韓国、南ア、ブラジル、アルゼンチン、ポーランドなどがそれに続く。そして、低い方には、ロシア、アラブ・アフリカ諸国、フィリピン、中国があり、最低は北朝鮮となっている。

国民のための政治がこの指標だけで判断できるのなら話は簡単であるが、そうではない。最近の保護主義の動きなど過激思想が広がり、それが民主主義への幻滅ではないかと、その解説図に書かれている。民主化度を示す世界地図を掲げたものの、それが世界政治にどれだけ、且つ、どの様に意味がある図なのか?新聞編集者も分からないのだろう。(補足1)

そこで、自分なりに原点から、国政における民主主義という考え方の発生のモデルを立てて、考えてみた。尚、以下国政に関する議論であり、政治用語もすべて国政に限定して用いる。(筆者は政治学の素人なので、以下私的メモですので注意して下さい。)

1)近代国家の代表的な政治思想に、自由主義(リベラリズム)、民主主義(デモクラシー)、保守主義などがある。それらは数学のX, Y, Z座標軸のような明確且つ独立した座標ではなく、十分には定義も理解もされていないので、どうしても議論が混乱する傾向にある。

先ず、民主主義という言葉を考える。ここでは、「国民一般の合意が国政で決定権を持つという思想」と国政を念頭に定義する。歴史的には、専制主義政治からの脱却を意味するので、対立概念は専制主義である。(補足2)

次に、自由主義だが、それはLiberalismの訳であり、言葉の上での訳は「解放主義」となる。その歴史的な意味を考えると、中世の封建主義や帝国主義の時代から脱却して、それらの権威による束縛から人間を解放すべきだという政治思想だろう。(補足3)

国王などの権威の下の政治(権威主義的政治)から、大衆が個人として解放されるには、何らかの団結が必要だろう。その団結により解放を暴力的に進めたのが市民革命であり、出来た国家は共和国に分類されている。この辺りまでは、異論が出ないだろう。つまり、自由主義の対立概念は権威主義である。

自由主義は、権威からの自由を追求する姿勢であり、それは形態というよりも運動の方向を示す。一方、共和制を実現し、一般民の意見で政治を行う制度を民主政治という。これは政治形態を意味する。つまり、一般市民による自由主義運動により民主的政治が獲得された時、その国家を共和制国家と呼ぶ。

因みに、戦後の日本は象徴天皇制の国家であり、実質的な国家元首は天皇ではなく内閣総理大臣なので、共和制国家である。これには異論のある人が多いだろう。自民党の憲法改正案では、天皇を国家元首としている。私は、大日本帝国時代の訳のわからない憲法に一部でも逆戻りするのは反対である。

2)自由を目指して団結した場合でも、その団結とその方法や組織が別種の束縛となる筈である。(補足4)人間が社会を作って生きる以上、完全な個人にはなり得ない。そこで保存すべき社会的束縛とこれまでの権威主義的束縛に付随した因習的束縛の区分けをして、後者を廃して理想的な社会を目指すのが、民主主義国家における自由主義の立場だろう。

これまでの慣習や政治システムには意味のあるものも多い。それらを考慮無く廃止することで、次の世代の社会に悪影響が出ることも多いだろう。そこで、それらの意味を重視し温存する方向で、安全な将来を目指すのが保守主義だろう。従って、ここでは自由主義の対立概念は保守主義になる。民主政治を獲得した国家の政治において、自由主義政党と保守主義政党の対立は、従って、自然である。(補足5)

現在民主主義国と見なされている多くの国において、国民はこの別種の束縛の下にあると考えている。その見えにくい束縛に敏感(或いは過敏)に反応するのが、そのしわ寄せが集まるマイノリティーの人たちなのだろう。

兎に角、それらすべての個人が政治的に独立した意思で国政に参加するとき、本物の民主主義国家となる。民主主義政治が正常に機能するには、国民の意思が、平等且つ独立的に示され、それを行政機構が正しく吸い上げ、行政に反映される必要がある。つまり、民主主義が正常に機能するためには、その基礎に個人主義がなければならない。

現在、社会は民主主義を標榜するものの、個人の意思を集団の意思として纏め上げ、それを再度集計する形で政治が動いている。それは、直接民主制が現実的に不可能なので仕方のないことだが、専制政治或いは全体主義政治に堕する可能性がある。正常な民主主義政治とは、恐らく、主権者たる国民が上記堕落の危険性を常に意識する準安定な政治形態なのだろう。

3)この共和制的国家の全体主義化には、これまで左右二通りあった。その左側の一つは、共産主義運動により生じた労働党独裁である。そして、右側の全体主義は、高揚した民族主義と国民国家体制の連結により生じた。これらは市民一般の団結を強め、一枚岩的政治組織を作り上げる点で共通する。実際は、一人または少数のリーダーによる専制政治であるが、民衆全体が組織化されている点が、中世的専制国家と異なる。

労働組合運動は、労働党独裁の前駆体となり得るので、廃止を目指すべきである。それは、近代的経済活動において必須である資本提供する階層を、敵対する搾取階級と位置づけ、その経済活動に於ける権威を政治活動に於ける権威にすり替える手法で、集団化した組織である。

労働力の市場化を完全にすれば、労働組合は不要となる。労働の完全な市場化は、雇用に於ける差別の完全撤廃、賃金を完全に労働の対価とすること、オープンな労働市場を作ることで可能となる。ただ、賃金つまり収入に大差が出るので、富の再配分制度の充実が大切である。これらの法整備を含む改革により、適材適所の原則も自動的に実現されるだろう。

アジアの超大国中国や最近核兵器開発により国際的にデビューを果たした金正恩の北朝鮮の独裁政党は、巨大な労働組合の形をとるものの、中世の帝国に似た全体主義組織である。その専制君主的なトップが「同志」と呼ばれるという事実(これは中国も同じ)で、その制度の“里が知れる”だろう。

つまり、中世の専制主義国家から共和制的国家(補足6)が生じたとしても、人々の政治姿勢が個人主義にまで成長しなければ、それは本物の民主主義国家でも共和制国家でもない。その上、それは常に全体主義的色彩を帯びる危険性がある。

従って、個人主義の対立概念は、集団主義や全体主義である。政党という存在も、集団で勉強したり、議論したりする範囲なら民主主義と対立しないが、自民党などが良くやるように、議会の決議において党議拘束をかけるのは、集団主義であり、民主主義思想の根本に反する。

補足:

1)世界銀行のThe Worldwide Governance Indicatorsの「Voice and Accountability」という指標で、国民の声がどの程度政治に反映するかを数値化氏ランク付けしたものである。同様の情報が世銀からエクセルファイルで提供されている。

2)ウィキペディアには、「国家など集団の支配者が、その構成員(人民、民衆、国民など)である政体、制度、または思想や運動」と書かれている。しかし、構成員が支配者というが、国家の構成員のなかには様々な組織や法人などが含まれるとすれば、それが国民と同等の権利を有する筈がない。この定義はわかりにくい。

3)ウィキペディアでは、「国家や集団や権威などによる統制に対し、個人などが自由に判断し決定する事が可能であり自己決定権を持つとする思想・体制・傾向などを指す用語」とある。この定義は、同じくウィキペディアの個人主義の定義、「国家や社会の権威に対して個人の権利と自由を尊重することを主張する立場」と非常に紛らわしく、本質を指摘しているようには思えない。

4)ナポレオンが皇帝になったことでも、それは分かる。

5)普通、保守主義に対立する用語は革新主義(Progressivism)と思われるだろうが、そうではないだろう。つまり、ウィキペディアには計画経済などを主張する左翼思想とかかれている。日本の所謂「革新」は、Liberalismの意味で用いられているようだ。共産党や社民党がProgressivismの範疇に入るのだろう。兎に角、日本では政治用語を理解せずに使っている風に見える。

6)共和国はrepublicの訳語である。英語の辞書には、Republic: state in which supremepower rests in the people via elected representatives," from Middle Frenchrépublique (15c.). (https://www.etymonline.com/word/republic#etymonline_v_12865) と書かれている。翻訳すれば、「共和国とは、選挙により選ばれた代表を介して市民(people:市民、国民)に権力が存在する国家」である。

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