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2019年1月20日日曜日

日露平和条約交渉における着地点について

昨日、日本側の足元を見るロシアと書いた。今日は、そうではなく、全く事務方での交渉がなされていなかったのが、条約交渉の最重要課題である領土問題が行き詰まっている理由であると仮定して、以下の記事を書いた。(補足1)

1)前回の記事で、河野—ラブロフ外相会談での、ラブロフ外相の強硬な発言について考えてみた。最後は首脳会談で決着を図るのだが、ロシア側の基本的な考え方について再確認を日本側に求めた形である。その重要なポイントは、第二次大戦後に北方4島の主権が、ロシア側に移ったという原点を、日本側も再度確認する必要があるという指摘である。(補足2)

ただ、歯舞色丹の両島におけるロシア側の主権獲得は、国後択捉とは異なった経緯でなされたと考えられる。それは、地理的にも千島列島に含まれないからである。日ソ共同宣言でも、平和条約締結後に「日本国の要請にこたえかつ日本国の利益を考慮して,歯舞諸島及び色丹島を日本国に引き渡すことに同意する」と書かれている。(補足3)

日ソ共同宣言の時点で、日本側も北方4島におけるロシア(ソ連)側の主権を確認している筈である。

日ソ共同宣言は、鳩山一郎内閣のときに締結され、その後この二島返還で日ソ平和条約を結びたいとの鳩山内閣の意向を拒絶したのが、時の米国国務長官ダレスであり、4島返還論はその時に出された。https://blogs.yahoo.co.jp/mopyesr/43760689.html

その後、日本は米国盲従派の官僚上がりの政治家が、4島は日本の固有の領土であるというインチキ説を、マスコミを使って広めたのである。従って安倍総理は、早い時期に国民に向けて、過去のこの偽りのプロパガンダを正直に認め、国民の理解を得るべきであった。

歯舞色丹の返還(=元の持ち主への譲渡)が、現状では日ソ共同宣言当時より困難なのは、その時から既に60年あまり経過しており、随分状況が変化していることが一つの大きな理由である。

例えば、歯舞色丹にはロシア人が5000人ほど住んでいる。そのロシア人たちの生活の基盤を保障なしに奪う形での返還は無理である。その問題の解消には、事務レベルでの詳細な交渉が必要であり、それがこれまで全くなされていなかったのではないだろうか。

それを指摘したのが、昨日引用したロシア科学アカデミー極東研究所のクジミンコフ日本センター上級研究員の「事務レベルで事前の調整が行われなかったという印象だ。」という言葉なのだろう。つまり、20数回の首脳会談で、事務方の出番がほとんどなかったのは、素人ながら異常に思う。

2)歯舞色丹返還時の事務的問題

私は、全くの素人であり、何の根拠もなく以下に考えを述べるが、それは一国民としてのものと解釈していただきたい。

現在、歯舞色丹に住むロシア人が合法的(ロシアの法令に基づく)に持つ経済的権利は、全て保証或いは保障されるべきである。つまり、ロシア側において法的に確認される財産権および日本において合法的且つ健全と見做しうる経済的活動などの保証または保障である。

仮に島の主権および施政権が日本側に移ったとしても、両島住民のうち生活基盤が明確に出来上がっているロシア人の希望者には、日本での永住権を付与し在日ロシア人として住むことが可能なように配慮する。ロシアに退去する人には、保障が必要である。その負担割合(100%日本側が持つのか、半分づつなのか)は交渉次第で決定されるだろう。

ここで浮上するのが、旧島民の権利復活の問題である。これについては、旧島民には諦めてもらうしかない。何故なら、両島は戦争の結果一旦ロシア側の領土となったのであり、戦争によって受けた不利益は、一般に保障の対象とはなっていないからである。

それは、空襲で死亡した多くの日本人に対して、民事保障はなされていないことと等価である。また、満州などから財産を全て放棄し、引き上げた日本人にも保障などされていないだろう。従って、旧島民が過去に保有していた土地等の権利を回復と云う形で獲得することは、平等の原理に反すると考える。

もちろん、日本側はできるだけ多くの土地を民間ロシア人からも引き渡しを受けるべく努力すべきである。そのうち、旧島民が希望するものについて、有利な条件で新たにそれを獲得することには、ほとんど全ての日本人有権者は同意すると考える。

これらは、事務方がするべきことだと思う。それが障害になって、2島返還が出来ないとしたら、それは日露両国にとって大きな損害となる。

補足:

1)もし、「日本がシリア問題や北朝鮮問題について、ロシアと共同歩調をとっていないではないか」というラブロフ外相の言葉が、日露平和条約締結の障害なら、現状では平和条約交渉の継続は不可能だろう。日本が現在、その防衛に関して米国との安保条約に依存している限り、北朝鮮問題について米国と共同歩調をとるのは当然である。それにもかかわらず、この問題でロシアと共同歩調取っていないと非難するとしたら、難癖の類である。それが昨日の記事の趣旨である。

2)日ソ共同宣言の時代以降、日本は北方四島を固有の領土と言い出したことと関連がある。「固有の領土だから、無条件で返して当然だ」という話になるだろうが、そんな話ならロシア側としてはお断りしますということだろう。そのロシア側の主張はその通りだろう。

3)日本側の権利を認め、返還するとは書かれていない。それに日本側が署名していることを再度国民は知るべきである。

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