1)言論の幅が狭くなりつつある日本:
一昨日配信のヤフーニュースで、夕刊フジの記事が紹介されている。「韓国のGSOMIA破棄に対する、鳩山由紀夫元総理が発表した意見と、石破茂元自民党幹事長がブログで発信した内容がそっくりなのが話題になっているという」と題する記事である。
https://hochi.news/articles/20190823-OHT1T50063.html
http://ishiba-shigeru.cocolog-nifty.com/
何か変だなと思って、石破氏のブログを見たところ、鳩山元首相の意見(補足1)とは全く異なることが書かれていた。変なのは夕刊フジの記事の方であった。劣悪なプロパガンダ記事なのかもしれないが、夕刊フジは一応新聞なので、言論の幅が狭くなりつつあるということだろう。そんな日本が気になる。
鳩山元総理のツイッターには、「その原点は、日本が朝鮮半島を植民地にして彼らに苦痛を与えたことにある」と書かれているという。しかし、この人の意見など最初から無視すべきであり、現職の政治家を批判するための鳩山利用はやめるべきである。鳩山元総理の件では、そのツイッターの内容を批判するよりも、そのような発言をする人を日本の政党と議会が総理大臣に選んだことを、もっと真剣に議論すべきである。
今回の日韓問題の最も近いところにある鍵となる出来事は、徴用工の問題である。これに関しては、何処から見ても100%韓国側に非がある。徴用工裁判の根底に日韓併合があり、その古傷を刺激し拡大し続けた歴代の韓国政権がある。その結果、現在では韓国のパトリオティズムは、反日という土壌に育てられているのだ。https://rcbyspinmanipulation.blogspot.com/2019/03/blog-post_23.html
このような事態は、文在寅が大統領になった時に既に決定していたことであり、本来今更騒ぐことではない。静かに、韓国と距離を取る政策をとるべきであり、感情的になることではない。韓半島はこれから混乱し、そのとばっちりを受ける筈である。そのシミュレーションをして、日本側でできる準備をすべきである。
https://rcbyspinmanipulation.blogspot.com/2019/07/blog-post_94.html
2)石破氏の主張とその延長:
日本が韓国と友好関係を回復し維持しようと思えば、日韓併合に不満がある韓国民の気持ちにも一定の配慮があって然るべきであるし、日韓併合の真実を韓国民に勉強してもらう事が必要だろう。石破氏は、自身のブログ記事で言ったのは、あの第二次大戦の総括を日本が未だ行っていないことである。戦争で被害を受けたのは、当時の日本人全てであり、それには韓国人も台湾人も含まれるだろう。
石破氏のブログ記事が、もし韓国に対して賠償が残っているという意味なら、完全に間違っている。ただ、国民のあちこちに、あの敗戦の痛手が残っており、それは本来韓国政府により手当されるべきだが、それがなされていないのも事実だろう。それが、反日運動の土壌(の表層)となっているとしたら、そして、日韓友好を両国政府が考えるのなら、両国ともに問題が残されている:韓国には、日韓基本条約とそこでの日韓請求権協定にあるように、未だ補償されていない韓国民がいれば、それを行うべきであること;日本国には、あの戦争を総括し、何故戦争になったのか、それは本当に防衛戦争だったのか、その戦争遂行であのような犠牲を出した責任は誰が取るべきなのか、等明らかにすべきこと、である。
戦争末期には、悲惨な出来事がたくさんあった。バシー海峡で兵を十万人も無駄死にさせたのはどうしてなのか、ソロモンの七面鳥撃ちと米国兵に言われた無駄死は、どのような経緯で起こったのか? 負けることが確実になったとき、特攻隊など何故組織したのか? 戦況の把握と戦略の立案はだれがどのように、どのような情報に基づいてやっていたのか?
(補足2)
満州事変から日中戦争への戦争拡大の原因は何なのか?満州に何を求めていたのか?関東軍の暴走は何故起こったのか、その責任を明らかにすべきである。また、日中戦争で非難の的になっている都市部の無差別爆撃(重慶爆撃)を何故おこなったのか、その真相は何なのか? (補足3)
更に遡って、日露戦争の評価を何故まともに出来なかったのか、桂ハリマン協定や桂タフト協定を何故重視できなかったのか? その当時の世界戦略は誰がどのように立案して、どのような内容だったのか?更に遡って、何故明治憲法に天皇による軍の統帥権を定めたのか? 大日本帝国は天皇が統治す、及び、国務各大臣は天皇を輔弼する、で十分ではなかったのか。
(補足4)
兎に角、国家の友好関係の樹立維持には、両国の歴史とその背後にある国民感情に対する幅広い理解が必要である。徴用工の問題では、100%韓国側に非があると厳格な態度をとりつつも、その背景に広く存在する歴史と事実を出来るだけ勉強すべきである。石破氏のブログ記事はそう教えてくれるものだろう。ただ、石破茂氏に関して何時ものように残念なのは、何事でも(戦争責任についても)自分の意見を言わないことである。政治家は行動が大事である。それが出来ないのなら、学者になるべきだ。
3)日本は先の戦争の経緯を総括すべき:
日韓併合はロシアの侵略に対抗する能力が無かった大韓帝国を、伊藤博文の反対があったものの(補足5)条約締結という体裁を整えて吸収合併したのであり、自然法則的(補足6)出来事である。違法とか合法とかの議論の対象ではない。(補足7)従って徴用工問題にたいする韓国の態度と司法処理は100%間違いである。その他の問題、例えば慰安婦問題でも、韓国は多くの捏造を諸外国に宣伝している。これも韓国側に非がある。そのように私は思う。(補足8)
石破茂氏の問題のブログ記事の本論は、防衛庁長官時代にシンガポールを訪問した際、当時のリー・クアンユー首相との会談の紹介に始まる。そこで、親日派の同首相の姿勢も、戦争時の出来事の多くを総合しての結果であり、多くの不幸な出来事もあったことを示唆している。その話は、両国民の相互の歴史理解が友好関係の維持には大事であるという意味で引用したのだろう。石破氏のブログ記事の日韓関係に関する部分を以下短く引用する。
我が国が敗戦後、戦争責任と正面から向き合ってこなかったことが多くの問題の根底にあり、それが今日様々な形で表面化しているように思われます。これは国体の護持と密接不可分であったため、諸般の事情をすべて呑み込んだ形で戦後日本は歩んできたのですし、多くの成功も収めましたが、ニュルンベルグ裁判とは別に戦争責任を自らの手で明らかにしたドイツとの違いは認識しなくてはならないと考えます(政府自体がヒトラーの自決によって不存在となったドイツとは当然異なることも考慮した上で、です)。17日にNHKで放映された「拝謁記」における昭和天皇様と田島道治初代宮内庁長官とのやり取りを、畏れ多くも複雑な感慨を持って視たことでした。
17日のNHKの番組は見ていないので、その部分はわからないが、「我が国が敗戦後、戦争責任と正面から向き合ってこなかったことが多くの問題の根底にあり、それが今日様々な形で表面化している」という部分は、本当だと思う。ただし、戦争責任という言葉は曖昧である。私は、「戦争になった経緯」というべきだと思う。
天皇を頂点とする政府が戦争へ突き進んだことに対する、当時の日本国民に対する経緯とそれぞれのターニングポイントにおける責任は議論されなければならないと思う。その意味で、日韓併合の結果当時日本国民だった、現在の韓国、台湾、北朝鮮などの国民に対する責任は未だ議論されていないことになる。
但し、韓国民に関する限り、日韓基本条約及び付随する請求権協定により解決済である。勿論、新たに発見された個人的な問題については、日本側に債務があれば補償されなければならないが、それは国策として行われ日本人も従事した徴用工制度には及ばない。繰り返すが、日韓併合は歴史的な出来事であり、学問的な議論は兎も角、政治的には対処すべきことではない。それは、歴史的な出来事は掘り返さないという、人類の基礎的文化が存在するからである。それを無視すれば、世界は悲惨な混沌状態に戻る。
しかし、韓国以外の旧日本国民に関しては、何も議論も補償もされていないという問題が残る。特に重要なのは、現在の日本国民に対する責任が議論されていないことである。そして、その結果として、現在の日本国がある。つまり、日本国は戦後の瓦礫の整理をせず、その上の掘っ立て小屋状態である。如何に鉄筋コンクリート製であっても掘っ立て小屋の本質は変わらない。寧ろ、建て替えができにくいので、バラック製の掘っ立て小屋よりも始末が悪い。
例えば、現在の日本政府は、憲法は改訂されて新しくはなったが、それ以外は昔のままである。サンフランシスコ条約後も、東京裁判という延長戦のなかで殺された人たちを除き、戦前からの支配層が独立直後から国の中枢に居座っている。その結果、戦後の日本の総理大臣には、米国盲従派が就任している。彼らの戦争時の働きについては、全く不問である。その延長上に、その後継者が支配する現在の日本政府がある。
未だに、日本国の本質的部分における国家と国民の関係は、支配と被支配の関係である。その関係からの脱却をしなければ、日本に将来がないというのなら、石破氏の記事は正論であると思う。そう主張されるのなら石破氏は、「日韓GSOMIA、訪印など」というのではなく、「戦争責任と戦後の政治体制」のような題目で、本或いは記事を書くべきである。
補足:
1)鳩山氏は「徴用工に端を発した日韓の対立が最悪の展開となってきた」とした上で「その原点は日本が朝鮮半島を植民地にして彼らに苦痛を与えたことにある。原点に立ち返り、早く友愛精神で関係修復すべきだ」とツイッターに書いたようだ。この方の意見は無視すべきなのだが、報道機関は視聴率などを記にして取り上げている。その姿勢は、報道の責任の放棄である。
2)特攻隊は敗戦が確実となったと誰もが考えたとき、誰かが一発逆転の妙案があると言い出したのだろう。そのとき、冷静に議論があれば、それでも無理だということが直ぐに明らかになっただろう。日本には本来議論の文化が無い。更に日本特有の強力な「空気の支配」がその場を支配し、敵の姿すら見えなくなっていたのだろう。今、情況は全く異なるが、対象である韓国が見えなくなってきている。
3)海軍の中枢は米国と非常に近く、山本五十六などもスパイ的だったという説がある。その海軍の重慶爆撃は、日本を中国戦争の泥沼にはまり込ませるためのものだった。それは、蒋介石を追い出し、中国を共産主義支配に導くための戦略だったという。つまり、米国のF.ルーズベルト周辺の共産主義者、現在のグローバリストと同根の人達による、東アジア共産化の企みの一環だという説がある。真珠湾攻撃もその一環であるというのだから、その当たりの総括を主張する石破茂氏の主張は非常に重要なのだ。
4)薩長軍は、鳥羽伏見の戦いなど戊辰戦争の時に、偽造した皇室のシンボル(菊の御紋)の旗を掲げることで圧倒的な優位を得た。その延長上で天皇親政を詠い実行するが、天皇が成人した後徐々に本当の権力を手にするようになった。それが大日本帝国憲法(明治23年)に於いて、天皇が軍の統帥権をもった経緯だろう。その時に、将来それが軍の暴走に繋がることを危惧した人は居ただろう。それを変更する必要を感じたときには、憲法を改正できなくなっていた。つまり、現在の改憲の困難と同様の日本的メカニズムが働いていたのだろう。
5)初代朝鮮総督の伊藤博文は、朝鮮併合には反対だったようである。その理由は、長年中国の属国だった間に、反宗主国の伝統に苦しめられることを知っていたからだろう。それを暗殺した安重根が韓国の英雄となっていることは皮肉なことである。ただ、韓国側の見方はことなる。伊藤は、「韓国は自治を要す」とソウルで演説したというが、本当は併合と韓国自治の間で揺れていたのだろう。(ウィキペディアの韓国併合参照)
6)人類のこれまでの歴史は、適者生存というダーウイン的原理が支配してきた。つまり強者が弱者を支配するというのは自然原理である。その歴史的結果は、学問として議論できるが、これまでの国際政治の延長上では再評価の対象にはならない。歴史修正主義とは、歴史的結果を再評価し、現在の政治に反映させようとする姿勢を意味する。
勿論、歴史修正は国際秩序の改変を考える場合、独立国家として自由である。つまり、韓国が日韓基本条約を破棄する自由は存在する。その傾向が出てきたとき、日本がすべきことは、その批判は適当にして、韓国から予想される様々な外交的あるいは軍事的行動に備えるべきことである。
7)日韓併合が違法か合法かは、当時の国際社会が国際法などを用いて判断して、対処すべきことである。この違法性合法性の問題は、国内での同じ問題とは全くことなる。それは、国際法は権威と権力に裏付けされて居ないので、厳密な意味で法ではないからである。主だった国に承認され、その後一旦議論の対象とならなくなったのなら、それで歴史の中に固定されたと考えるべきことである。つまり、韓国併合は合法と考えて良い。ただ、国際法での合法性と、韓国の人たちの納得できない気持ちには一定の理解が必要だろう。
8)慰安婦問題については、多くの書物がある。しかし、日韓両方の側から見た記述は少ない。その点で推薦したいのは、韓国の朴裕河教授の本「帝国の慰安婦」である。
https://rcbyspinmanipulation.blogspot.com/2017/07/blog-post_15.html
http://scholarsinenglish.blogspot.com/2014/10/summary-of-professor-park-yuhas-book.html
ただし、慰安婦となったのは苦痛に満ちたことだっただろう。特に、親族の裏切りであれ、強制的に売られた人の苦悩は、計り知れない。これも、戦争責任の問題と切り離されることではないだろう。
0 件のコメント:
コメントを投稿