世界はコロナ肺炎で恐慌の際にあり、その一方、中国と米国を筆頭とする欧米諸国との対立は非常に深刻である。何故、このような道に世界は来ることになったのか、自分の頭を整理するために、以下の文を書いた。誤りや理解不足の点など指摘していただければありがたい。
1)ディープステートが目指したグローバリゼーション
米国の政治を支配しているのは、一般国民の意思であると考えている人は、米国でもいまや少数だろう。そしてかなりの人たちは大資本家たちに米国は支配されていると考えて、それをディープステートと呼んでいる。ディープは、直接見えない深いところにあるという意味を込めた感覚的な言葉である。
つまり、ディープステートとは、主にユダヤ系などの米国の巨大資本が、その金儲けを目的に政治に組織的に介入しているという意味だろう。(補足1)その元々流浪の民である大資本家の政治目標は、世界の人、物、金の障壁を無くするというグローバル化された世界(世界帝国?)だろう。
その方法の第一として、米国の中央銀行であるFRBを支配し、その紙幣を世界紙幣として世界中での資源や物品などの売買に使えることにする。その米ドルの基軸通貨としての維持には、米国の強大な武力と権力が必須である。(補足2)
その巨大資本の一部が1992年ころから中国に投下される様になった。そこに工場を建設し、現地の安い労働力を利用して、中国を世界の工場とした。そして、中国の支配層と米国資本家は、巨万の富を得ることになった。
中国は、共産党独裁の国であり、中国内に現地法人を作る場合には、共産党員上層部が共同で経営に参加する。また、様々な許認可権を握っていることなどを利用し、彼らも巨万の富を得ることになる。
中国共産党の上層部は都市に住み、公務員、会社の出資者や経営者になる。一方、農村から出てきた労働者は、安く労働を提供する。農村戸籍と都市戸籍の間の移動はなく、労働賃金は低く抑えられる。つまり中国は、共産主義思想とは相容れない、共産党員上層と労働者下層の身分制度の国となった。
そして、中国は近い将来、世界を支配する国になる可能性が出てきた。(ユダヤの)大資本家たちは中国と仲良くなった。彼らは中国に移動するのだろうか?大資本家の一人ジム・ロジャーズは既にシンガポールに移動している。彼らにとって、その国の支配層を利用することはそれ程難しくはないと考えているだろう。ユニポーラーな国を作るには、今後、米国よりも中国を拠点にした方が簡単だと考えているかもしれない。
2)資本蓄積の結果、貧富の差は拡大する:
経済のグローバル化の結果、米国の製造業は中国等の発展途上国に移動したので、労働者階級は失業することになる。そして、代表的な工業地帯はラストベルト(錆びついた工業地帯)と呼ばれることになった。その一方で、金融業や新規産業であるディジタル技術やソフトウェアの産業は、広くなった世界の市場を対象とし、文字通りグローバル企業となった。
その結果、中国や米国における富の偏在は加速され、両国とも大きなジニ係数の国となった。 (なお、独仏英などの西欧諸国や日韓などの国のジニ係数は0.35位或いはそれ以下である。また、北欧諸国は0.3以下である。ジニ係数については、すでに記事に図とともに解説した:https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12466515362.html)
ウィキペディアには、「社会騒乱多発の警戒ラインは、0.4である」と書かれている。米国は既に0.4を超え、中国は0.5に近い。中国での最近数年のジニ係数の僅かな低下は、政府統計局のインチキではないかと、下の図のオリジンの記事に書かれている。(下図参照)
この貧富の差は、普通の民であれば、我慢の限界を超えている。一度しかない人生を極貧で過ごす人と、優雅に豪邸に住み、フェラーリを乗り回す人との差は、100%固定化されている。しかし、それが不平等だと気づくには知性が必要である。もし、優れた知性を持ったものがいれば、この貧富の差を作った人たちは、その人を取り込むことでそのシステムを守るだろう。
貧富の差の拡大は、蓄積した資本を短期集中的に目標に向けるために、仕方のないことである。そして、中国共産党政権とグローバルな大資本は共通の目標を確認したのかも。その米国での協力者として、ヒラリー・クリントンやオバマがいたのかもしれない。
そして、次に現れたのが、一帯一路構想であり、アジアインフラ投資銀行(AIIB)なのだろう。習近平のオリジナルなのか、それとも彼らの共作なのか? 共作ならトランプの負けは決定的だろう。オリジナルなら、世界はしばらく混乱するだろう。
3)読めなかった変人大統領の出現
経済成長の鈍化、貧富の差の拡大、支配層の腐敗、そして、知る権利などの人権思想の芽生えは、一般民に共産党独裁政治への不満を醸成させた。中国政府は、その不満を弾圧する一方、成長の鈍化を帝国主義的な拡大政策により解決する方向に舵をきった。一帯一路構想とAIIBによるユーラシアとアフリカ支配である。
その一方、中国は知的財産を欧米などからハッキングによって収奪する他、安い労働力を利用した既存分野の独占的支配、軍事強国化を背景にした「法治主義や人権思想」の無視など、中国の唯物論的超現実主義(補足3)は、世界的な脅威となっている。
中国を大きく育てたのは、米国の裏に陣取っているディープステートである。表でそのために活躍したのは、1992年以降の米国の政権である。上記一帯一路構想が、帝国主義的拡大主義ではないかと知るには、それほどの知的能力は要らない。21世紀の米国の政権を長期に担ったオバマ大統領とヒラリー・クリントン国務長官は、何故かそれを放置した。そして、トランプの米国になって一年後の2018年には、習近平は国家主席の任期を撤廃し、独裁体制を確立した。
その一方、米国のオバマ大統領は世界の邪魔者3000人をドローン攻撃で暗殺した。https://wedge.ismedia.jp/articles/-/7166 グローバリゼーションの障害は、イスラム圏である。神を信じる彼らは伝統社会を重視するからである。
一帯一路だが、アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビの港やギリシャのピレウス港の利用権を取得するなど、イタリアのベネチアまで海のシルクロードを延ばした。2019年にはイタリアは一帯一路構想に参加を表明し、EUは弱体化し、中国に切り崩されて行くように見えた。
このプロセスの初期、異変がおこった。米国ラストベルトの悲哀や貧富の差の不満を吸収することで、2017年にトランプが大統領になったのである。
富裕層に属するトランプは、直観力に優れていた。上記グローバル世界構築の構想に我慢がならなかった。その主張と姿勢は、時代を逆行するものであり、直情的でエレガンスに欠けていた。そして、富裕層の支持は今ひとつだった。
同盟国との歴史を無視するかのようなトランプの国際政治は、目的も方法も、どのような戦略で何を狙っているのか、大きなビジョンとしては今ひとつわからなかった。国際的保守派として、性急なグローバリゼーションに反対し、主権国家体制へ回帰する様には見えなかった。むしろ米国を孤立主義に導き、そこでエゴイスティックに動くように見えた。(補足4)
そこで起こったのが、新型コロナグローバルパンデミックである。今後、北半球の第一波はこの夏には終わるが、この秋から第二波が起こり、それが最大の被害となる可能性がある。スペイン風邪のように3年ほど続くとみるのが普通だろう。
強大な米国からの経済攻撃で、潰されそうになった中国は、「超限戦」(補足3)に打って出たのかもしれない。トランプ排除の切り札に見えないこともない。これは、グローバル化世界の実現のための最終戦争なのかもしれない。単なる中国の犯罪行為と考えるのは間違いである。そのような小さい話ではないだろう。
あの時、WTOへの参加基準を厳格に適用すべきだったとか、オバマ政権のときにもっと毅然たる態度を取って欲しかったという類の話よりも、歴史の流れの必然性、或いは中野剛志風にこの世界は何らかの切掛(新型コロナ肺炎のパンデミック)により、大恐慌と最終戦争の方向に向かうようにロックインされていたと考える方がわかりやすい。そのような大きな歴史の大河の本流のように見える。
その後、もし中国が民主化され、主権国家体制に戻ったとき、グローバル化の第二期が始まる可能性が高い。しかし、民主化された中国ができれば、多分、一度、中国と米国の二極化された世界となるのだろう。日本は冷戦構造の下でしか生きられない国であるので、実質的に中国の支配下に入るだろう。(補足5)
(午前8時編集あり)
補足:
1)欧米には不思議な秘密結社が多くある。イルミナティやフリーメイソンなどが有名だが、それらと米国のディープステートの関係が屡々言及される。また、米国の有名な秘密結社にスカル&ボーンズというおぞましい名前のものがある。イエール大の卒業生から構成されるその会員が、歴代のCIA長官を務めてきたと言われている。そしてジョンFケリー、ジョージWブッシュなど米国の政治の中心に位置する人を多く輩出してきた。クリントン夫妻などもイエール大出身である。
2)英国及び欧州から米国に移動した理由は、常に世界を支配する国に移動しなければならないからである。因みに、FRBは、35米ドルで金1オンス(31.1035g)と交換すると約束することで、1971年まで世界中の共通通過(基軸通貨)として通用した。その約束を一方的に廃止したのが、ニクソンである。その後も、米ドルは基軸通貨の地位を保ったのは、米国の軍事力を背景にサウジアラビアの安全保障を約束するなどの方法で、中東での石油取引を米ドルで行うように干渉したからである。http://www.getglobal.com/war/iraqwar1.html
3)中国の「厚黒学」や「超限戦」という考え方を知ると、中国とその独裁政権の恐ろしさが理解できる。
厚黒学:https://business.nikkei.com/atcl/opinion/16/022500005/091200043/
超限戦:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%B6%85%E9%99%90%E6%88%A6
4)この大きなビジョンで動いていると見て、トランプファンになった日本人は多い。馬渕睦夫氏がその代表である。もちろん、トランプ大統領も徐々に路線を変更することは考えられる。変人から救世主へ脱皮したかどうかはわからない。
5)西部邁は、第二次大戦で本土決戦となりあと100万人の死者が出ていれば、日本はまともな国になったかもしれないと言った。そのアナロジーが新型コロナ肺炎に関しても言えるかもしれない。
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