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2020年5月19日火曜日

新型コロナ肺炎は夏に収まるか?特別な理由がなければ答えはYESだろう

1) 国別データの比較:

 

「新型コロナ肺炎は7月頃収まるだろう」と題する記事を2月28日に書いた。その根拠の一つは、夏の地域或いは常夏の地域での流行があまり起こらなかったからである。例えば、オーストラリアやニュージーランドでは、1月−3月は夏であり流行は小さかった。

 

そして、当時流行が確認されていた国でも、台湾、タイ、マレーシアなど南の国々では、中国からの早期伝染が考えられるにも拘らず、患者数も小さかった。そこには以下のように書かれている。

 

本日(2月28日)午前7時現在、日本ではダイヤモンド・プリンセス号での感染者を除いて、189名が感染し、3人死亡、22人が回復している。韓国では、(1766名感染、13人死亡、22人回復)、イタリア(528、14、40)、ドイツ(26、0、15)、英国(15、0、8)である。中国河北省(65600、2641、 23400)、中国重慶(576、6,384)、タイ(40、0、22)、シンガポール(93、0、62)、マレーシア(23、0,18)、台湾(32、1、5)(補足1)

https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12578338386.html

 

その後80日経過し、イタリア(225880, 32007, 127326)、ドイツ(177289, 8123, 154600)、英国(246406, 34796, N/A) の悲惨な情況に比較して、タイ(3031、56、2857)、マレーシア(6941、113,5615)、台湾(440、7、398)、オーストラリア(7060, 99, 6392)、 ニュージーランド(1499, 21, 1433)など、総じて感染者数や死者数が少ない。

 

以上の比較から、温かい地方では実際に被害がそれほど進まないと言えるだろう。

 

2)夏にはコロナウイルスの感染は弱まるという物理化学的仮説

 

夏に流行が収まると考えた二つ目の理由は、ウイルスの構造と水の関係である。ウイルスなど全ての生物の構造を支えているのは、水である。夏には、その水分は簡単に大気中に蒸発するので、ウイルスでも細菌でも、空気中に孤立して存在する場合、短時間で破壊される。

 

例えば、コロナウイルスのエンベロープは脂質二重膜でできている。脂質分子は、長鎖の炭素と水素からなる鎖状グループと、カルボン酸(酢の酸性を示すCOOHグループ)からなる。それが、コリン分子についたリン酸基と結合した長鎖分子が、下図のように並んで出来るのが脂質二重膜である。

ここで、多数の脂質分子が並んだ形の膜構造は、油性の炭化水素の鎖が周囲の水から反発することで可能となる。この他、蛋白分子が所定の三次元構造をとる原動力も、水との相互作用である。このように、生体の構造は水が支えている。

 

つまり、ウイルスも細菌も、人体の中の細胞同様、水に浮かんだ形でしか存在できない。上記脂質膜の場合、リン酸基(図の赤い部分)は水に馴染むので、両側に水を引きつけているだろう。そして、その水の大部分を失った場合、二重膜は破壊されるだろう。高温になると、そのプロセスが早く進むだろう。

 

 

上の図は、湿度と空気中水の分圧(補足2)と温度の関係を示す。横軸が示す温度で、100%の線のところの縦座標の圧力にまで、水は蒸発し得る。例えば摂氏23度では、水の圧力が280ヘクトパスカルになるまで、水は蒸発可能である。また一般に、蒸発可能な水の量が大きいほど、蒸発の速度も大きい。

 

つまり、コロナウイルスが空中に存在する場合、夏には気温が上がるため、冬に比べて、エンベロープなどが水を失うことで破壊されやすく成るだろう。(補足3)

 

一般に、咳などで吐き出されたウイルスは、唾の成分に保護されて存在するだろう。それがドアノブなどに残るとして、どれだけ病原性を維持できるかだが、やはり高温の季節ほど短時間となるだろう。ただ、梅雨の湿気がウイルスの生存にマイナスになるとは思えない。

 

冬には空気が乾燥して、この肺炎を含めて風邪に罹患しやすいのは、ウイルスの構造維持が難くなるのではなく、人の喉などの荒れにより、ウイルスの侵入が容易になるのが原因だろう。何故なら、冬には空気中の水分が減少するが、蒸発可能な水の量も少なく、速度も遅くなるからである。

 

以上、物理化学の知識だけで、ウイルスの生存の季節依存性を考察した。生物学の知識が乏しいので、何か間違いがあるかもしれないので、指摘していただければ幸いです。

 

追補: 南半球は今後冬になるので、オーストラリアなどでは第二波が発生する可能性がある。また、夏にも拘らず南半球の国々でも一定の伝染性をしめしたことにも注意が必要です。更に、梅雨の季節には喉など呼吸器の荒れが少ない場合、感染などが減少する可能性が高くなります。従って、上記はあくまでコロナウイルスの空中での形態維持に関する部分のみの考察です。

 

補足:

 

1)この時、「以下のデータが示すように、早期発見、早期隔離及び治療を原則とし、その有効性に疑問があるのなら、ドイツや英国の高い治療実績を視察すべきである」と書いたが、英国については評価ミスであった。

 

2)空気の圧力は平均して一気圧(1013ヘクトパスカル)である。摂氏23度で湿度が100%(50%)だと、そのうちの28(14)ヘクトパスカルが水蒸気(気体の水)による。このように、水蒸気が受け持つ大気圧の部分を、水蒸気の分圧と言う。

 

3)よく耳にする疑問は、水の中に完全に入った場合のウイルスの情況である。この場合、空中に単独で浮遊するよりも、長く構造が維持されるだろうが、塩分などで水部分の浸透圧が調整されていなければ、短時間で破裂する可能性が高い。

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