自民党総裁の選挙が近づいている。4候補に議論してもらうことで、国民にも政治を考える機会となる。ただ短い期間なので、十分な議論は出来ないのが残念である。国会においてこそ、この種の議論をするべきなのだが、野党政治家のレベルがあまりにも低すぎるので、スキャンダルを中心に週刊誌的な議論ばかり行なっている現状は滑稽というより悲惨である。(補足1)
中でも日本の外交と内政を歪めてきた領土問題と拉致問題については、徹底的に議論してもらいたい。ただ、20日行われた自民党青年局・女性局での討論会での議論は、時間が限られていることもあっただろうが、そして報道からだけの判断であるが、事の本質からの議論ではないという印象をもつ。https://news.yahoo.co.jp/articles/1071686e5dd21cdd6b5dc8afb2febb783e982626
領土問題は、日本の戦後処理において、米国が周辺国と日本の間に解決できない問題として残したと言われる。特に竹島問題において、それが明白である。(追補1)ただ問題の整理は、北方領土問題などにおいて国会でも議論されているが、日本の敗戦とその後の諸条約:サンフランシスコ講和条約や日中共同宣言及び両国間の平和条約、日ソの共同宣言などを参考にすれば可能である。(補足2)
共産党の志位氏は、尖閣問題:田中角栄が周恩来に尖閣問題をどうするかと言ったが、周恩来はこの問題は触れない方が良いと言った。平和友好条約締結時には、鄧小平が棚上げしようと言ったと、解説している。つまり決着が付いていないのである。
その際、国家と国家の関係においては原点に野生の関係があることを十分理解すべきであること、更に、法と権威と権力の基本的構図を理解する必要がある。(補足3)後者は、「法とそれに基づく正義は、権威と権力による裏付けがなければ幻影に過ぎない」といえるが、これは法治国家内の個人関係を考える際に通常無視できるので、気がつかない盲点である。
つまり、領土問題も拉致問題も、国家と国家は本来野生の関係にあるという基本から出発して理解する必要がある。くどいが繰り返すと、限定的な意味で社会をなす”国際社会”において、その折り合いの基礎となるのが、各国間に存在する条約であることを理解すべきである。そのように考えれば、例えば北方領土問題は、補足2にあるように、国後択捉については最初から存在しないし、歯舞色丹については、ソ連からロシアに変わり、両国間に条約がないので当に係争中と言える。(補足4)
更に、尖閣問題も、日本は実効支配しているが、日中平和友好条約とその前の日中共同宣言で明確な言及がないので、鄧小平の「未来のもっと賢い者たちに任せよう」という言葉が生きている。つまり、この問題では100%野生の関係で日中が対峙していることになる。更に言えば、条約があったとしても何時でも条約に記載された方法で、或はそれも無視して、解消可能である。実際、中国は「ロシア、韓国に反日統一共同戦線構築を提案した」ことがある。
2012年11月14日にモスクワで開かれた露中韓の三国による国際会議「東アジアにおける安全保障と協力」で演説にたった中国外務省付属国際問題研究所の郭 (ゴ・シャンガン)副所長のプレゼンテーションは、上記三ヶ国が抱える日本との領土問題を、戦後のサンフランシスコ講和条約の時点に戻って解決しようと呼びかけるものだった。https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12466516176.html
竹島問題については、過去議論したことがあるので、それを引用するに留める。https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12658433723.html
拉致問題もそのような原点から考えれば、本来戦争で取り戻す以外に方法はないのである。その基本を承知の上で、平壌に出かけるのならそれで良いが、その基本を知らなければ、まともな交渉にすらならないだろう。尚、拉致問題については以前、より詳細に議論したことがあるので、それを引用しておく。https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12466516783.html
以上のように考えると、9月26日の4候補による安全保障問題に関する議論は、貧弱であったと思う。例えば尖閣問題では、議論すべきは海上保安庁の装備充実や海上保安庁法の改正というより、「中国による尖閣侵攻があったとき、自衛隊は交戦するのか?」という想定される危機に対して、中国からの本土攻撃までを念頭においた、真正面にある枠を広げた問題である。https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12660913945.html
追補:
1)日本とソ連の間の北方4島の領土問題と米国国務長官の脅しについては、以下のサイトをご覧いただきたい。
補足:
1)安倍内閣のときの森友問題や加算計算問題の議論を思い出す。これらは本来検察と裁判所の役割なのだが、それを素人の野党議員が国会という場で、知的でない国民には受けるだろうという愚かな考えの下、安物劇を演じているのである。勿論、この背景には検察の独立性が十分確保されていないこと、そして、裁判所が行政から十分独立していないこと等の日本の中世的堕落があるので、100%野党の責任という訳ではない。
蛇足だが、少し続ける。事の本質を求めて更に遡ると、民意が劣悪なことが問題の基本にある。しかしそれは、階層を破壊する歴史の流れの中にあって、“最先端を走る先進国”が後発国の階層を自国のエゴイズムに従って破壊したのが原因である。その点では、明治以降の日本の歴史の流れも、アラブの春の悲劇も再生速度を変えれば、似たようなものである。これは本来独立したテーマとして議論すべきことである。
2)日本の独立後の国会で、吉田茂と当時の条約局長の西村熊雄は、国後択捉は講和条約で放棄した千島列島に含まれると答弁している。この件について鈴木宗男氏が2006年に国会で質問している。その質問は:https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a164073.htm
この質問での1−3項目が上記の吉田茂と西村条約局長の国会答弁について問うている。その回答は、https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/b164073.htm の最初に書かれているが、十分な内容とは思えない。
3)尖閣問題について日本共産党の志位委員長のこの解説は理路整然としている。しかし、志位氏は、根本に野生の関係があることを無視して、国際社会をまるで法と権力の存在する国内問題のように議論している。
4)北方4島はソ連に戦争により占領され、現在まで実効支配されている。その戦争は、ソ連がサンフランシスコ講和条約に参加していないので、日ソ共同宣言により漸く終結した。そこでは、平和条約締結後に歯舞と色丹は日ソ友好のために日本に譲渡すると書かれている。つまり、その時に占領していた国後と択捉に議論がなかったことは、ソ連の領有を認めたことになる。この点を日本政府は誤魔化して、鈴木宗男の質問3に回答していない。ソ連との共同宣言をロシアが引き継ぐとした場合、国後択捉二島の領有権問題は存在しない。更に、もし日ソ共同宣言をロシアが継承していないという立場なら、新たに平和条約を締結する以外に歯舞色丹の領有権主張も意味がない。
(17:05追補1追加)
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