下は、中部地方の大都市近郊の都市(人口約15万人)について、新型コロナ肺炎感染者に関する統計結果である。昨年10月から今年8月30日までを3つの期間に分け、男女別年代別の感染者の割合を百分率(%)で示した。
中央と右端の表はおよその人数を揃えて、意味のある比較が可能な様にした。右端は今年8月1日 〜30日の間の感染者分布である。K市では70代以上のワクチン接種を7月末までにほぼ完了しており、その効果を見るためにこの期間を独立させた。
上の図は、K市公表のデータから独自に作った毎日の新規感染者数とその積算値のグラフである。積算値は、縦軸のメモリを30倍してほしい。これと日本全体の新規感染者数のグラフを比較すると、殆ど同じプロファイルである。(補足1)これから、日本全体でも、以下に記すK市のみに関する結論と同様の結論が得られると思う。
1)ワクチン接種効果
中央と右端の分布のテーブルを比較してみる。70代以上の感染者の全感染者に占める割合は、右端の表にあるように僅か1.1%である。一方、左端と中央の表では、この年代の感染者の占める割合は、何れも10~11%を占めている。
この大きな差の原因としては、やはりワクチン接種の感染防止効果が考えられる。もし、愛知県下のK市でも8月にはデルタ株が主となっているのなら、ファイザー社のワクチン接種は、デルタ株に対しても感染防止に大きく役立っていることになる。
感染防止する大きな効果があれば、仮に感染者を母集団にした統計において重症化と死亡率にワクチン接種効果がなくても、全人口を母集団とした統計では、死亡率の大きな低下となっている筈である。
尚、私の7月12日のブログ記事で、英国での分析結果を紹介した。そこで以下のように書いた。
δ株での致死率は、①50歳前では0.02%程度であり、ワクチンを接種しても低くならなかった。②50歳以上の年代では、ワクチンを打たない場合の致死率は5.6%、ワクチンを2回打った場合が2.2%であった。つまり、50歳以上でも致死率という点では、完全には程遠い接種効果だった。
この英国のデータに対する議論は、同じ世代(50歳以上)の感染者を母集団(補足2)とした議論であったのに対して、今回のデータ解析は全世代の感染者を母集団にした70代の感染者の割合に関する解析である。人口も感染者数も上げているので、上記結論は、全人口を母集団とした場合の結論とも言える。
もし、50歳以下の若い層に対しても、ワクチン接種が感染防止に大きく役立つなら、感染者に対する重症化や死亡の率にそれほど効果がなくても、その世代の全人口に対する重症化や死亡率の低下に大きく貢献することになる。
2)若者の感染増加について:
令和3年8月の感染者の中で、10代と20代の占める割合は、夫々16.8、30.7%である。一方、令和3年5月までの感染者では、夫々、13.1、19.7%である。令和2年10月〜12月の場合も、夫々、
9.9、17.9%であり、令和3年春までの感染割合に近い。
10歳未満の層では、8月は5.5%と他の期間(令和3年春までは8.2%; 令和2年秋は7.2%)より低い。この層の率が低いのは、夏休み中の感染経路は主に家庭内感染であり、10代と20代の若者の感染経路とかなり違うからだろう。恐らく9月以降には、10歳未満の層も8%程度に増加するだろう。
全期間を通じて60代の感染が低いのは、やはり街なかや他府県などに移動するなどの機会が少ないからだろう。
最後に:
7月から8月にかけて、m-RNA型ワクチンの接種効果、特に重症化と死亡を防ぐ効果について、かなり悲観的な意見を書いてきた。それは、感染者を分母にした死亡率や重症化率という点で、ワクチン接種の効果が完全には程遠かったからである。
上に引用した7月12日の記事に書いたように、一旦感染すればワクチン接種をしていても死亡率は4割程度に低下するのみであった。しかし、今回、感染防止という観点からワクチン接種に大きな効果があるらしいことが分かった。
新型コロナの件でかなりの数の記事を書いてきたのだが、今回はそれ故生じた責任を果たすという意味で、取り急ぎ報告させていただいた。
(編集、14時30分)
補足:
1)下に日本の累積死亡者と新規感染者のグラフを示す。8月に感染した人が死亡して、上の図の統計に現れるのは2週間位後になるだろう。それを考えても、死亡者の増加はそれほど大きくはない。英国やイスラエルなどでも、デルタ株による死亡率はかなり小さい。
2)母集団とは、パーセンテージを出す時の分母を与える集団である。我々が先ず関心を持つのは、全人口を母集団にした解析である。それが、特定の一人つまり自分の感染確率とそれによる死亡確率に比例するからでる。
(9月3日、午前12時投稿)
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