1)李克強指数
中国の嘗ての意思決定機関のチャイナ7(常務委員会)には秀才が多い。王岐山や李克強などが良く引き合いに出される。経済では李克強は一流であると聞いた。中国経済の活動度を測る李克強指数(以下R指数)は、英国のエコノミスト誌に紹介されて以来、世界の経済評論家などにも使われてきた。この指数は、全国の鉄道輸送の量、銀行融資残高、電力消費から、算定するようだ。
上図は、この15年程のR指数と上海総合(株価;こちらは10年間)の経時変化である。この間、リーマンショックを正しく乗り切り、更に、2015年の不況も金融緩和などの政策により、乗り切っていたことがこのR指数と株価のグラフから分かる。
2017から株価も徐々に上昇を初めたが、R指数でみる限り、経済が上向いて来たのが理由ではない。実際R指数は、2017年以降、徐々に低下を続けている。未来を見ると言われる株価も、2018年2月に習近平の独裁体制が完成して以来、急速な低下となった。
そして、今年1月の新型コロナ肺炎のためのロックダウンで特に、R指数は大きく減少している。今後、経済は再度上昇するかどうかは、米中関係が鍵だろう。
2)中国の貧困化
習近平の目標は2020年までの貧困の撲滅であり、2025年には部品まで中国で製造する中国製造2025が目標だった。現状はそれには程遠く、むしろ益々悪化していると言った方が良い。その原因の一つは、富の偏在である。その情況を妙佛のDEEP MAXが解説している。https://www.youtube.com/watch?v=ZfnjNDoxA94
中国(と米国)の富の偏在については、その大きなジニ係数として以前紹介した。40%で暴動などが考えられるレベルだと言われるが、米国は45%、中国は47.3%である。グローバリゼーションの舞台である両国でこの値が大きいことは、グローバリズムの本質を表す。ジニ係数の世界ランキングは=>http://top10.sakura.ne.jp/CIA-RANK2172R.html
グローバリズムという言葉には、特定の国の名前が現れないが、その本質は、中国の農村部の安い労働力を世界の特に米国の巨大資本が利用して、富を積み上げる経済体制である。それを進めるのに決定的な役割を果たしたのが、米国のクリントンとオバマ政権であった。中国人Youtuberモトヤマ氏は、この農村戸籍の人たちと都市戸籍の人たちの峻別(移動はできない)を、中国の人種差別と言っている。
中国の貧困撲滅だが、その目標達成には遠く及ばないことを、モトヤマ氏の動画(日本語)が紹介している。そのデータが、今年の全人代(全国人民代表大会)での記者会見で、李克強により具体的な数字とともに明らかにされた。
https://www.youtube.com/watch?v=acQaZC54kKQ
つまり、全人口の内の6億人は月収1000元(15000円)で、この75%が田舎の人で、残りの25%が都会の人である。(補足1)1000元は、都会では家賃にもならない額であり、「貧困問題は急速に改善している」という表現で誤魔化した習近平の顔に、李克強は泥を塗ったことになった。(補足2)
この貧困化の中で、中国の大都市では、失業対策として屋台営業が自由化されつつあるという。屋台は、発展途上国を思わせるので、メンツを大事にする中国共産党はこれまで大都市で禁止してきた。
しかし、都市部での失業率が20−30%にもなった現在、屋台営業を失業対策にするという方向に舵を切ったようだ。共産党政権の定義では、農村にはそもそも失業はないので、この失業率が表す深刻さが分かるだろう。
この屋台経済は、一旦は失業対策になるが、非常に厳しい個人事業となるだろう。(補足3)そして、各地に多数出来ているショッピングモールの倒産を早めるだろうと予測される。
中国経済がこの20年間成長してきたのは、投資であれ消費であれ、積極的にお金を使うことが原動力だった。その中で、車を持ち郊外のショッピングモールで買い物をするという形に消費が格上げされてきた。生活のパターンの変化が、経済の発展と同期して起こったのである。
しかし、屋台経済では消費が格下げとなり、経済は縮む。デパートで、1000円で買っていたものを、今後は屋台で、150円で買う。その結果、ショッピングモールやデパートは潰れ、消費は屋台に頼るようになる。車を持てなくなり、持つ理由もなくなる。
このような失業対策を取る李克強首相に、モトヤマ氏は同情的である。何故なら、彼には経済政策を提案し実行する権限がないからである。(補足4)中国経済は縮小のプロセスを進む。モトヤマ氏は三ヶ月だけ様子を見ましょうと言って、動画を閉じた。三ヶ月、ひょっとしてモトヤマ氏は、米国での大統領選挙を考えて言っているのだろうか?
追補:1)新型コロナ肺炎パンデミックの終了後の世界の政治レジームに関して、米中の格差は現状の共和党政権下では大きくなるだろう。しかし、自民党の中核議員の一人で元経産大臣甘利明氏は、逆の展望を持っていることを今朝のテレビ番組「ザ・プライム」で発言していた。それすら分かっていないのか、単に希望を述べているのか分からないが、確かなのは甘利明氏は、日中友好議員連盟の中心的メンバーの一人である。この団体が如何わしいのは、会長が自民党林芳正氏で、副会長が共産党志位和夫であることで自明だろう。
追補:2)最新の妙佛DEEP MAXでは、李克強は始末書を書かされたそうである。習近平と李克強との間の序列の確認だろう。https://www.youtube.com/watch?v=4WrfsFQzask (1:30ころにその話をしている。)
(午後6時50分、追補1,2追加と図の編集あり)
補足:
1)1000元—2000元が1.73億人、2000元—5000元(中所得者層)が2.38億人、5000元以上が0.5億人である。これらの合計は、10.6億人である。従って、この統計は就労人口のみが対象であることが分かる。
2)この常務委員7名の序列1位と2位の不協和音は、何年も前から聴かれていた。日本の評論家の福島香織さんや河添恵子さんらは、李克強の顔色が悪く病気ではないかと言っていたが、精彩に欠ける李克強の姿は、主席の習近平との不和が原因だったのだろう。最近の話では、習近平国家主席が、腹心である王岐山・共産党中央規律検査委員会書記の親族の財産状況を調べるよう公安幹部らに指示していたようだ。
https://www.sankei.com/world/news/170420/wor1704200055-n1.html
3)政府は屋台で2−3万円稼ぐ人の話を報道し、大半の屋台で稼げない人の責任を、国家ではなく、個人に押し付ける。
4)権力を掌握した習近平は、経済を管轄する部署として、二つの委員会を指定した。そして、その委員会の委員長は劉鶴という人物であり、習近平の部下で幼馴染である。李克強には能力があるが、それが発揮できないと、モトヤマ氏は言う。しかし失業問題は、社会問題を担当する李克強の前に置かれた。李克強は失業対策として、屋台の大都市部での解禁という方法を持ち出した。(動画の30分ころ)
0 件のコメント:
コメントを投稿