最近数十年ぶりの豪雨が毎年発生している。また、夏には熱帯夜が増加している。これらは伴に空気中の二酸化炭素(CO2)濃度増加によると考えられる。今回は、豪雨と熱帯夜という現象から、地球温暖化を考えてみたい。豪雨は、地球表面の熱を効率よく宇宙に逃がす役割を担っているのである。
尚、地球温暖化の問題は既に2014年に議論をまとめ、2019年に再録した(記事1)。https://rcbyspinmanipulation.blogspot.com/2019/11/blog-post_16.html 地球温暖化の事実そのものも、否定する向きもある(補足1)ので、その確認の意味で同じ年に書いたのが、海水温の上昇から温暖化の事実を示した記事である。(記事2)
https://rcbyspinmanipulation.blogspot.com/2019/10/blog-post_27.html
1)熱帯夜の観測結果と温暖化:
図(1)に示したのは、東京(気象庁観測地点)での猛暑日と熱帯夜の日数の経年変化である。戦後すぐ、東京は都市化をほぼ完成しているので、その後1990年ころまでの猛暑日の日数は、平均してほぼ横ばいである。しかし、1990年ころからの猛暑日の増加は目立つようになった。恐らくその原因は、他国由来の所謂地球温暖化だろう。
尚、図中の説明にも書いたが、2018、2019年の(猛暑日、熱帯夜)の日数は、夫々(12、42)(12、28)である。
一方、図1右の熱帯夜の日数は、戦後から一貫して増加している。日本経済が停滞期に入ってからも増加している。つまり、都市化が飽和状態の東京のこれらデータは、他国特に中国等でのCO2発生増加によると考えられる。(補足2)ただ、猛暑日と熱帯夜の発生は互いに原因と結果の関係でもある。熱帯夜の翌日晴れていれば、猛暑日になるだろうし、猛暑日の夜、放射冷却が十分でなければ熱帯夜になる。
そこで、同じ猛暑日を記録した年 (1942, 1978, 2007;合計7日)、(1947, 1961, 2002, 2012;合計6日)、(1953, 1970, 1991, 2005:合計4日)で、熱帯夜の出現がどう変わったか調べた。上記記載順に並べると、熱帯夜の数が (24, 39, 31)、(14, 26, 33, 48)、(14, 18, 33, 31) となり、後になるほど熱帯夜の出現日数が多い。
つまり、猛暑日の日数が同じであった年は、その夏の最高気温が平均して同程度に上がったという荒い近似を置くと、後の年になるほど夜間の放射冷却の能率が悪いということになる。結論から言えば、その原因として考えられるのは、CO2濃度の増加だろう。勿論、エアコンの設置台数が増加して、夜間電力の使用量の増加も僅かに寄与するが、無視できるだろう。
何故、CO2濃度が増加すれば、地球表面が冷えにくくなるのか?
地球表面の放射冷却は、主に波長8ミクロンから15ミクロン付近の「大気の窓」と呼ばれる領域の赤外線放射によりなされる。CO2は15ミクロン付近に大きな吸収(変角振動による)をもち、この大気の窓を長波長側から部分的に閉じる。
つまり放射冷却の能率がCO2濃度の増加により落ちるのである。太陽による地球表面の加熱現象は、この数十年変化がないとすれば、放射冷却の妨害を考えるべきである。勿論、これは気象分野の世界での主流の考え方である。
2)放射冷却
地球に来る太陽のエネルギーは、放射線の他、紫外線、可視光、赤外線など、全波長領域の電磁波として来る。それらは、雲や地表などで反射され宇宙に戻る他、地表で最終的に熱エネルギーとなる。これらの詳細は、専門の方々の報告から再録し(記事1)で解説した。それを図示したのが次の図である。
この図右側の地球からのエネルギー放出(赤)には、①左から熱伝導と大気の移動による運搬、②水分の蒸発による運搬、③放射冷却、の3つのメカニズムがある。CO2の増加はこの3番目のメカニズムを小さくしてしまう。それを補うのが、①熱伝導と風(空気対流)、及び②水の蒸発と降雨である。これらは別々ではなく、組み合わさって働く。
ここで、地球温暖化CO2犯人説を考える時に大事なのは、温暖化ガスとしてCO2よりも強力な水蒸気の濃度(つまり絶対湿度)についての考察をすることである。(序論に紹介の記事1の図5参照) 何故なら、水蒸気の吸収が大気の窓の両端に存在するからである。
絶対湿度が徐々にこの数十年増加しておれば、二酸化炭素の効果を簡単に凌駕する。そこで、データを探したところ、気象庁の報告が見つかった。それによれば、日本の幾つかの都市で、この数十年、絶対湿度は平均して殆ど変化していない。(補足3)
3)降雨による熱の上空への運搬
ここでは、図(2)のプロセス①と②が組み合わさった代表的な例、降雨による熱の上空への輸送が、どのように起こるか分かりやすく解説する。
上の図は、地表からの水が蒸発するときに、蒸発熱として熱Qを奪う。これにより、地表の大気や水面は冷却される。対流効果で水蒸気を含んだ空気が上空に運ばれると冷やされて、雲となる。その時に、凝縮熱として熱Q‘を発生する。上空と地表で水蒸気の状態や水滴の温度などに差があるので、QとQ’は厳密には異なる。しかし、このプロセスは、太陽により温められた地表面から、熱エネルギー(Q≒Q')を上空へ輸送するプロセスとかんがえることができる。
CO2濃度が上昇すると、大気の窓が長波長側から徐々に閉じられる。そこで、上空へ逃げることが出来なくなった熱が、温暖化を引き起こすのだが、そのかなりの熱が、水の蒸発と雨の増加という形で、上空に輸送されるのである。ただ、陸地で陸水も少ないところではこのプロセスで熱の上空への輸送が起こらないので、もし絶対湿度が同定どなら、温暖化は苛烈だろう。
尚、上空では温度が下がるので、水蒸気濃度は減少し、CO2やメタンなどが主要な温暖化ガスになる。したがって、上空に行くほど、CO2の温暖化効果は相対的に大きくなるだろう。
補足:
1)現在、地球温暖化が起こっているとした場合でも、原因は二酸化炭素ではなく、宇宙からの放射線の増加などとの関連が大きいという地球物理が専門の方々による説があった。(記事1の補足7)現在、同様の主張をされているかどうか分からない。また、テレビでお馴染みの竹田恒泰氏も熱心な否定論者である。https://www.takenoma.com/article/2005/05/31/592/
2)一人当りのCO2発生量は、米国、15.8 ton(以下単位省略)、豪州15.2、カナダ 14、韓国11.4、ロシア 11、台湾10.9, 日本9.02の順である。国別では、中国 9825 mega ton(以下単位省略)、米国4965、インド 2480、ロシア 1532、日本 1123の順である。https://www.globalnote.jp/post-3235.html
3)この文献は、ヒートアイランド現象についての解説である。その報告の13ページ(図1.20)に、ヒートアイランド現象で気温が年々上昇するが、相対湿度は逆に年々減少し、絶対湿度に換算すると、殆ど変化しないと書かれている。https://www.env.go.jp/air/life/heat_island/manual_01/01_chpt1-1.pdf
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