6月10日のNature Communicationsに遺伝子操作で蚊を絶滅させることが可能であるという報告があった。生まれてくる雌雄の比を5:95にできるというのである。これが95:5なら絶滅しないところが、雌雄の差の面白いところである。その理由は、中学か高校でならった等比数列を思い出せば簡単に思い付くと思う。
この朗報にも拘らず、厄介なことを言う人があらわれて、その方法の適用が躊躇されているとのこと。蚊を食べて生きている生物も居て、生態系全体の変化を予測できないというのである。おそらく、その懸念は払拭されるだろうが、大声で生態系生態系と唱える人種が大勢居ることは事実である。G−ピースを思い出す。
生態系に変化を与えることは事実だろう(1)。しかし、それは一定の範囲におさまり、やがて殆ど元の生態系に戻るだろう。高等動物、例えばアホードリ、が絶滅しても生態系にたいした影響はない。しかし、下等動物が絶滅した場合、食物連鎖にかなりの影響を及ぼす可能性があるのは事実である(2)。蚊を餌にする昆虫やその昆虫を餌にする鳥や魚に影響を与えるからである。しかし、忘れてはならないのは、自然は常に何らかの刺激に対して、そこから遠い関係にあるところへは影響が小さくなり、そして、それもバイパス現象などで時間とともに小さくなる、“緩衝作用”があることである。例えば、蚊が減れば、蚊とライバルだった昆虫が増加し、蚊を食べられなくなった他の生物は、その増加した昆虫を食べることになる。そのような緩衝作用が至る所で起こり、人間に対する影響は恐らく小さいだろう。
ただ、マラリヤが無くなった時には、製薬会社が直接大きな影響を受けるだろう。その関係者が、蚊の絶滅から生態系への影響を心配する振りをして、反対しているのだろう。この種の策略は人間の世界では常套手段であり、自然の生態系よりこの種の人間の生態に注意すべきだろう。
注釈:
1)生態系で一番大きな影響を受けるのが、生存競争の相手に当たる昆虫である。そして、そこから関係が遠くなるに従って、影響が小さくなる。人間が最も気を配るべきは、直接或いは極近くで影響を受ける昆虫に、厄介な病原菌を媒介するものが居ないかどうかである。
2)その理由の第一は、個体数が多いことである。そして、幼虫時に大半が他の昆虫などの餌になり、成虫となるのは極一部である様な場合、かなりの影響が生態系に出る可能性がある。たとえば魚では、イワシなどが絶滅すると、海の生態系に大きな影響が出る可能性が高い。
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