その背後に居るのが財務省であり、財務省の目指すのはプライマリーバランスであり、消費税はその一環であるという。つまり、日本の経済環境下で、政府は借金を増やさないで経済を発展させるのが良いし、それが可能であると考えているらしい。
三橋氏は、与野党を問わず政治家達が心配している政府の大きな借金について、差し当たり国債の暴落などの心配などなく、現在はデフレの克服のために増税などしない方が良いと言っている。その理由は、国債の殆どを国内で持っているからである。そこで、そのあたりを我流で考えてみた。もっとも手取り早いのは、米国と日本の貸借対照表を比較してみることだと思う。
1)日本と外国の財務環境を比較する際、世界の基軸通貨発行国との比較では当てにならないという考えもある。しかし、米国のデータは比較的簡単に入手できるので、比較対象とした。
ちょっと周り道だが、米国の債務を表すグラフが見つかったので上に示す。全体で20兆ドルを超えており、日本同様に批判がある。税金を支払う人一人当たり、100万ドルを超えるという批判がわかりやすい。 http://www.marketwatch.com/story/heres-how-the-us-got-to-20-trillion-in-debt-2017-03-30
日本円では2500兆円位だろう。しかし、全債務とは要するに貸借対照表片方のトータル額であり、健全性の判断はできない。そこで、米国の貸借対照表(BS)を見てみる。
上記のBS表では、資産と負債の差額が、17兆ドルであり、資産の6倍近い。その中で、国債(Federal debt securities)は12.8兆ドル位であり、またその下にある6.6兆ドルあまりは、職員の退職引当金などであろうが、相当多額である。日本と違って軍人が160万人近くいるので、その年金引当金などが大きいのだろう。国家の純粋な借金としては、上記17兆ドルと考えて良いだろう。
国債の約半額の6兆2000億ドルは外国が持っている。そのうち、多額の米国国債保持国は日本と中国であり、その金額はそれぞれ1.1〜1.2兆ドル位である。詳しくは米国財務省のページなどにある。(補足1)この状態でも米国債の格付けがAAAであるのは、驚きであるが、世界の覇権を握っているということの意味だろう。アメリカファーストと言って、もし覇権を放棄するなら直ちに破産だろう。その場合、外国の持つ債権は紙くずになり、米国軍人などの年金はゼロになるだろう。そんな事できる訳がない。こらからも自転車操業を続けるしかないのである。
また、米国の中央銀行であるFRBが持つ米国債は、2.5兆ドル位である。中央銀行のバランスシートに関して、一言言及すると、住宅ローン債権などが多額含まれており、これも健全かどうか心配である。一番下の青い部分が財務省債権、赤い部分がmortgage-backed securities、つまりほとんど各種住宅ローン担保証券だと思う。FRBの資産圧縮が始まるが、この赤い部分を民間に売り渡すことだろうが、信用が十分あるのだろうか。 2)次に日本の貸借対照表を見てみる。
上が日本財務省の貸借対照表である。 資産と負債の差額(つまり債務超過額)は、平成25年度で490兆円である。その資産に対する割合は、0.75倍であり米国の5.7倍と単純に比較すると、遥かにましである。納税者一人当たりの純借金という言い方では、正味7万ドル位だろうか。
また、日本の国債のほとんど全部は、日本人の金融資産として国内で保有されている。このように考えると、我が国の財政は米国と比較して相当健全と言えるのではないだろうか。国債の金利の急上昇という言葉がよく出る。それは、北朝鮮などの核の脅威がたかまり、日本脱出を富裕層が考える時だろう。外交が非常に大事だと思う。
3)稼いだ金を貯蓄するのは、稼ぐ時と使う時のズレがある限り仕方がない。しかし、稼いだだけのお金を使い切るのが、経済システム全体の回転を考えれば必要なことである。何故なら、稼いだ金のトータルは供給した商品やサービスのトータルであり、サービスや商品は長期には貯められない。(経済学における三面等価の原則)
つまり、稼いだだけで使わなければ、その部分はデフレ要因になる。現在まで世界経済が回っているのは、米国が稼いだ以上に使ってきたからだと思う。消費税を上げるなどして、国民に将来不安を喚起し、国内の消費意欲を減少させるのは、ますますデフレ傾向を加速することに繋がると思う。
日本の政府も、稼いだ額(GNP)の全ては本来使い切らなければならないが、多額の対外債権を持っている。その結果、購買力平価に比べて円高になる傾向が強い。為替操作国との非難が聞こえる中で、日銀の異次元緩和でノーマルな為替相場を実現してきたのだと思う。
財務健全化は必要だが、それを増税でやるのは非常に非効率であると三橋氏は言っているのである。政治は、企業が投資を積極的に行い、国民は無理に消費を控えないような、明るい未来を感じさせるものでなくてはならないのである。
国債の金利の急上昇という言葉がよく出る。昨日の日銀総裁の言葉の中にもあった。それは、北朝鮮などの核の脅威がたかまり、日本脱出を富裕層が考える時に懸念されるのではないだろうか。つまり、国債の信用には、外交が非常に大事だと思う。
「円」は現在高い信用を得ている。その円を守るのに、国家がすべきことは主婦感覚の節約ではなく、外交と明るい内政で守るのが正道だと言うことだと思う。逆に言えば、増税をそのまま実行することは、財務省の財政健全化=節約という頼りない親父の家庭の主婦感覚をそのまま受け入れて、下手なことはせずに自分の政治家という職業を守ろうとする無能な国会議員が、政府や国会を占めていることを証明しているのだろう。
理系の素人なので、特に3)の部分について、間違いがあれば指摘してほしい。 (編集:9月22日午前8時)
補足:
1)中国や日本も夫々1兆1000億ドル前後持っており、米国以外の国全体で6兆2500億ドル前後である。http://ticdata.treasury.gov/Publish/mfh.txt
米国の中央銀行であるFRBも数兆ドル(2.5兆ドル)持っている。http://www.investopedia.com/articles/economics/10/understanding-the-fed-balance-sheet.asp
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