1)昨夜のBSプライムニュースでの北朝鮮問題に関する議論を聴いた(ネット配信版)。ゲスト出席者は櫻井よしこ氏、田中均氏、武藤正敏氏(元駐韓大使)であった。88分間の議論前半の55分間は視聴したが、本質的な話が出来ていないように思ったため、その後は見ることが出来なかった。
ゲスト達の議論の前提には、幾つもの欠陥がある。その前提でいくら議論しても正しい、つまり日本国民にとって有益な、結論には到達しない。従って、私にとって非常に退屈な話でしかなかった。
田中氏が後半部分で、六者協議での2005年9月の合意として以下のようなことを紹介した。それは「北朝鮮との米国等との平和条約締結、国交正常化及び経済協力は、検証できる形での核兵器放棄を条件に行う」ということであった。しかし、この紹介にはいろんな歪曲がある(補足1)。この重要な話を、歪曲して紹介するようでは話にならない。
彼らは、緊急的課題となった北朝鮮の核兵器による威嚇に関して、もっと踏み込んだ話をしなければならない時に、上記田中氏が六者協議の合意事項として紹介した話を周って堂々巡り的議論をしていたのである。
それは、不可能だと分かったことについて、それをどう可能にするかと議論するようなものである。つまり、最初に書いたように、狭い枠内に問題を閉じ込めて議論しているから堂々巡りになるのは当然なのである。
2)以下にゲスト達の議論の不十分な点をあげる。
①オバマ政権のときの米国大統領補佐官であった、スーザン・ライスの「現状の核装備は認めるということでしか、解決できないのではないか」という話を誰か紹介していたが、「それでは、日本はどうしようもない」と話すだけであった。現在、北朝鮮問題を議論する場合、それが一つのメインな話題である筈のことを、いとも簡単に捨て去っているのである。
②北朝鮮の核武装&威嚇問題についての中国の責任については重要だとして議論されているが、ロシアについては単に付け足しとして、言及されているだけであった。現在、北朝鮮問題解決の鍵はロシアが持っていると思うのだが、それを全く無視しては話にならない。https://blogs.yahoo.co.jp/mopyesr/43398865.html
③中国を単一の人格的に扱っているが、北朝鮮に近い北部戦区では江沢民派が力をもち、そこの軍は習近平の意思では自由に動かないという話など、無視している。
④米国は朝鮮戦争を何故今まで引きずって来たのか、休戦協定に平和条約の締結についての話が書かれているにも拘らず、何故いままで講和しなかったのか等についての議論を避けている。つまり、体制保障のための米朝直接会談が、金日成と金正日時代の北朝鮮の要求だったのだが、それについては殆ど何も言及していない。
3)この番組の評価:
つまり、このような議論をテレビで放送するのなら、ゲストの人選をもう少し慎重にすべきである。何故、馬淵睦夫氏や孫崎亨氏など米国の政治の裏を議論している人たち、そして東アジアの近代史に詳しい人達、中国やロシアの国情に詳しい人などを加え、全角度から問題を眺め議論する番組を作らないのか。
米国大好き人間ばかり集めて、しかも日本の核装備の可能性を排除して、現在の北朝鮮危機を議論しても何も出てこないだろう。つまり、米国は今まで東アジアで覇権を確保するために、朝鮮戦争を終結しなかったことが、北朝鮮を威嚇してきたのである。それが北朝鮮が核兵器開発に国家の命運を賭ける理由である。それを全く無視して、まともな話など出来る訳がない。
昨日配信された田中宇氏の国際ニュースでは、現時点では日本と韓国の核武装を議論する段階であるとの話が、米国の外交専門家の間で次々と出ているという。しかし、日本でこの議論を避けるのは、対米従属による権力維持の永続を望む官僚機構が、日本独自の核武装に反対しているからだと書いている。対米従属型の官僚独裁を主導してきた日本外務省とその傀儡「専門家」たちは、核武装論になると、急に平和主義者として振る舞い、核武装に強く反対する。http://tanakanews.com/170910japan.htm
実際、自民党次期総理かと噂されている石破茂氏が、日本への核持ち込みを議論している。そんな時に、米国大好き人間の元外務官僚と櫻井よしこ氏のみを招いて、北朝鮮問題を「北朝鮮に核兵器を放棄させるにはどうするか」という視点からのみ議論する意図は何なのか。
補足:
1)合意事項を要約すると、①北朝鮮は、すべての核兵器及び既存の核計画を放棄すること、米国と韓国は韓国内に核兵器を持たない、米国は北朝鮮を攻撃したり侵略したりしない。②北朝鮮と米国は国交を正常化するための措置をとる。北朝鮮と日本は平壌宣言に従って、国交正常化の為の措置をとる。③6者は二国間、多国間で経済協力を推進することを約した。④六者は、北東アジア地域の永続的な平和と安定のための共同の努力を約束した。直接の当事者は、適当な話合いの場で、朝鮮半島における恒久的な平和体制について協議する。ただ、時期については明確な合意はなされていない。
また、それらの間の前後関係や相互関連は書かれていない。ただ、5番目の項目に、“「約束対約束、行動対行動」の原則に従い、前記の意見が一致した事項についてこれらを段階的に実施していくために、調整された措置をとることに合意した”と非常に分かりにくい書き方で関連性が無いわけではないと記しているだけである。http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/n_korea/6kaigo/ks_050919.html
(21:15分に編集:本文最後の節の一部修正、補足の文献引用の位置を変更)
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