北朝鮮の核軍備は長足の進歩を遂げている。その背後にひょっとしてロシアがいるかもしれない。我々日本人は北朝鮮の背後に中国が居ると常に考えてきた。それは朝鮮戦争のときに人民解放軍が北朝鮮軍と一緒に戦った中であり、且つ、これまで経済的に強い繋がりがあったからである。
しかし、最近の核技術での速い進歩は、何処かが本質的な協力をしていると考えた方が分かりやすいのではないのか。核の小型化や水爆開発まで済ませるのは、独力では考えにくいのではないのか。また、最近の金正恩に反習近平の姿勢がかなり鮮明に見える様に思う(補足1)。習近平の大事な時期に核実験やミサイル実験を繰り返している。
ロシアは中国と長い国境線を持ち、その周囲での人口や経済力を見ると相当中国に有利である。もし、極東との間を切られると、ロシアはポーランド二個分位の国でしかないと、どこかに書いてあった。最近は習近平とプーチンの関係はかなり親密なように見えるが、それはプーチンの戦略ではないのかと思う。その間に北朝鮮を親露の核保有国に育て上げるのである。(補足2)
もし、米国も北朝鮮の力を認めて、朝鮮戦争の終結と講和を実現すれば、東アジアから米国の力が徐々に消える。そこでの覇権を中国ではなくロシアが北朝鮮を配下にして獲得すれば、日本は自然と北朝鮮の開発とロシアの極東開発に協力せざるをえない。
そして、将来の中国との力の差も縮小或いは逆転出来る可能性が高くなる。丁度米国が日本と中国との間に楔を打ち込んだように、21世紀後半からはロシアが日本と中国との間に楔を打ち込むのである。
その為には、朝鮮半島を先ず手に入れなければならない。韓国は北朝鮮といずれは統一する筈なので、そこをロシア圏とするか中国圏とするかは大きな差が生じる。朝鮮半島を抑えた側が日本も勢力圏に抑える事ができるのである。
再びこの絵を挿入する。中国と朝鮮半島を取り合いしているのは、日本ではなく今度はロシアかもしれない。日本は橋の上で心配そうに丸腰で様子をみているか、或いはKoreaという魚がKorea and Japanなのかもしれない。
2)安倍総理が9月上旬にウラジオストクでの東方経済フォーラムに参加する。そこでプーチン氏に会って北朝鮮の件について話し合う可能性もある。その足でインドに向かうと以前のネット記事に書いてあった。
そこで、プーチン大統領に北朝鮮の経済制裁を厳しくするように要求するだろうし、プーチン氏は同意するだろう。しかし、海千山千のプーチン氏はドイツのメルケル首相に異邦人と言わしめた多重舌の持ち主であることを安倍総理は肝に命じて置くべきであると思う。以前、そのように指摘したのは、北大名誉教授の木村汎氏である。 http://www.sankei.com/column/news/170904/clm1709040006-n1.html
安倍総理が何回目かにプーチン大統領に会った時の顔を見ていると、ウラジミールとは友達だという風に見えた。安倍総理も日本人の一人であり、「日本人の弱点は一旦信用すると、最後まで信用してしまう」可能性がある。日本人の弱点をそう指摘するのは、日中両国を良く知る柯隆氏であるし、私もそう思う。(補足3) 尾崎秀実を最後まで信用した近衛文麿の失敗が、日本を第2次大戦に導き日本を殆ど破壊してしまった歴史に学ぶべきだと思う。
プーチン大統領を責めているのではなく、プーチン氏は近現代世界史の“二枚舌が常識”の風潮に合った、ロシアの国益を第一に考えている優秀な政治家であると言っているのである。しかし、日本人は公職にあっても、私的な感情が抜け切らないというのが、上記柯隆氏の指摘である。そして、政治に命を懸けていると我々国民に思わせる久々の安倍総理も、その傾向を加計問題などで一度暴露している。
事ここに至っては、日本が為すべき事は米国の信頼を大事にすることである。それはトランプ大統領だけでなく、伝統的な米国の支配層を含めての話である。米国とロシアとは長年のライバルであり、日本の総理がロシアの大統領と何やら秘密めいた話をするのは、避けた方が良いと思う。良い結果など期待できない。
対核の脅威を考える場合、日本の核武装か東アジア条約機構(NATOの東アジア版)を作り、米国の提供による核シェアリングが第一である。その対象国は、中国、ロシア、北朝鮮である(一応米国は除外)。中国やロシアはそれなりに大国の風格があり、歴史的にも大国として振る舞ってきたので、核兵器を道具として使うだろう。それも日本が敵対する場合は非常に厄介である。
しかし、朝鮮半島の複雑な歴史と“混乱した論理”を考えると、韓国や北朝鮮にとって核兵器は最も危険な“玩具”である。それは日本の息の根を止める可能性すらあると思うのである。如何に北朝鮮の核の脅威に備えるかは、日本の今後の死活問題である。
補足:
1)金正男をトップとする北朝鮮の亡命政府を中国内につくる話があったと聞いたことがある。張成沢が処刑された原因の一つだと何処かにあった。
2)ロシアが中国に対して恐怖に似た感情をもっていると、ピーターナバロの書いた「米中もし戦わば」に書いてあった。例えば中国は満州の北をロシアに獲られた記憶があるはずであるし、ロシアもそれを覚えている。
3)「爆買いと反日」柯隆著、時事通信社(2016)209頁。 柯隆氏はこのなかで、「日本の政治家は戦い(政治闘争)と言っても(中国と違って)死活問題ではないためか、真剣さが見られない。日本の政治家と直接接しても軽さが目立つことが多い」と書いている。安倍総理は、真剣に政治に向かっている殆ど数人しか居ない日本の政治家の中の一人である。何とか、尾崎秀実を最後まで信用した近衛文麿のような失敗をしてほしくない。
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