まえがき:
前回、政府が新型肺炎(COVID-19肺炎)対策をしなかったことを、安倍政権の綱渡り的外交を中心におくモデルを建てて考えた。そのモデルを先ず説明する。
つまり、安倍内閣が中国と米国の間に入って、経済政治摩擦の決着に協力出来ると夢想し、中国に近寄ることになった。その結果、中国の習近平主席を国賓として日本に招聘して、中国の国際的地位の向上に協力することを決定した。(補足1)しかし、その思いつきによる約束を実行すれば、中国というしたたかな国に利用されるだけだという親米右翼に攻撃され、安倍氏自身の考え方も揺らぐことになった。
青山繁晴議員のように、真っ向から習近平主席の国賓招聘に反対する人も現れ、それ以前の右派の評論家たちの強い反対意見もあって、方針転換すべきだと真剣に考えるようになった。ただ、ここでそれを日本側から言い出すには、安倍総理の退陣が前提だろう。
そうこうしている時に、新型肺炎の流行が発表された。このまま流行が拡大すれば、中国側から周主席の訪日中止の申し入れがあるだろうと思うようになった。その申し入れを実現するには、中国での大流行、或いは、日本への飛び火が必要だろう。ところが、中国は直ちに完全な隔離政策をとり、患者数が横ばいになってきた。
新型肺炎の日本での流行は、安倍氏にとっては神風である。その神風が止んでしまえば、自分も自分がトップである日本国家も救われないと考えた。それが、前回ブログ記事で書いた安倍内閣の新型肺炎に対する無策のモデルである。https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12577898468.html
今朝、中国人の方のyoutube動画をいくつか見た。その中の一つがハンドルネーム「チャイチャイ」という方の動画である。そこでは、やる気の感じられない新型肺炎対策の理由は、準備に多額の資金を使った東京オリンピックを中止したくないので、新型肺炎の流行が進んでいるという数字を政府は発表したくないからだという解釈である。
似たような話が他にもある。それは、新型肺炎流行防止のために、中国からの入国の完全停止をしていないのは、中国そして諸外国からの観光客の入国を、経済対策アベノミクスの中心と考えているからだという分析である。両方のモデルとも、既に破綻していると思う。何故なら、それらの目的のためには新型肺炎を早期に抑え込む方が理にかなって居るからである。
上記動画に加えて今朝は、武漢と重慶の団地で暮らす人達の様子を写した動画を見た。中国の方々は自分の考えを躊躇なく動画配信している。人間としてのおおらかさに、日本人は学ぶべきである。私は、このチャイチャイさんの動画にコメントを書いた。それを中心にして、新しい分析を書きます。
1)中国の方の動画に触発され、新しいモデルを考えた:
今回の新型肺炎に対する無策の原因は、日本特有の官僚独裁の政治にある。官僚は政治的判断は出来ない。従って、政治的決断が最も必要な危機的な場面で、政治不在の事実が明らかになるのである。それは、過去の地震の際に何度も経験してきたことである。この日本の政治家の責任は、日本国民の責任でもある。肝心なときに怒らないのだ。
新型肺炎無策の責任は、官僚に政治を丸投げしている日本政府の責任である。一言で言えば、以下のモデルは官僚が大きな政府をつくり、権益拡大に励む習性が原因だが、それは官僚のDNAのようなもので、本来その部分のDNAは、政治が剪定すべきものである。
感染症研究対策に関する国家予算の配分の権限は厚生労働省にあるだろう。その配分を厚労省の縄張り内にできるだけ大きくすることが、官僚たちの利益を大きくする。従って、感染症に関する国家の大事においては、その中心となって国立感染症研究所が活躍しなければならない。患者として苦しんでいる人よりも自分たちの利益を優先するのが、日本でも中国でも政府上層の常である。
そして、国立感染症研究所がPCR検査などを独占して、それをマスコミなどの報道に乗せることが省益及び退役官僚の利益と直結する。民間や各地方の衛生試験所などに任せれば、自分たちの縄張り(国立感染症研究所)が狭くなってしまうのである。24日からPCR検査を地方の衛生試験所でもできるように方針を変えたが、民間業者を採用するまでには至っていない。
勿論、ダイヤモンド・プリンセス号での感染拡大を防ぐのに、神戸大の岩田教授のようなよそ者を参加させれば、官僚とその下部組織である国立感染症研究所の勢力が陰ることになる。(多分、どうせ大した流行にならない筈だという甘い考えが最初にあったと思う。)
何故、そのような官僚の横暴が国家組織の中でまかり通るのか? その第一の原因は、政治家は官僚たちのシナリオのままに動いたり答弁したりするしか、能力がないことである。そして、個人や私的機関の自由な活動を制限する権力行使の危険性と新型肺炎の大流行による国民の大損害を比較するという類の、政治的決断などが出来る能力など最初から持っていない。
一般に政治家は、地方の名家の家業であり、その仕事は中央集権の日本にあって、国家予算を地方に運ぶパイプ役になっている。従って、国会議員らは日本全体の政治を考えるのではなく、交付金を要求する地方からの代議員に過ぎない。その結果、国家の政治は官僚の狭く浅い発想で進められる。
2)まともな政治家を産むには:
政治家が国家全体を考えるタイプに変えるには、地方の利権と中央の政治を明確に分ける必要がある。そのために地方分権と道州制の導入、その前段階として選挙区のみの道州制を導入すべきである。
それにより、「どぶ板選挙」つまり、思想やビジョンよりも、個人的な繋がりに頼るタイプの選挙から、日本の将来に対するビジョンを有権者の前で競うタイプの選挙に変更すべきである。「どぶ板選挙」で進む日本政治の貧困については、「中川一郎の死の謎(2)とドブ板選挙」で議論した。 https://rcbyspinmanipulation.blogspot.com/2018/01/blog-post_20.html
小さい政府の実現には、政治家が広い地理的及び人的空間から選別されることにより、政治的能力を獲得し、官僚を使って仕事をする本来の政治を実現することが第一歩である。そして、国会を能力が試される厳しい場とすべきである。議員や大臣が官僚メモに頼った国会答弁をする習慣を完全排除すべきである。
日本国民はチャイチャイさんの言うように、不甲斐ない行政府に対して怒るべきだが、日本には正当な怒りでも、それを蔑視する文化がある。それは、日本の金言となった言葉「和をもって尊と為す」に象徴される文化であり(補足3)、馴れ合い政治を推奨する文化である。
3)官僚独裁政治の存在理由:
西欧社会は、近代文明を生み出す中で得た、科学的合理性とキリスト教の精神という乖離した思考を、そのまま本音と建前という形で、複眼思考の形式としたと思う。理想論で政策や戦略を組み上げながら、現実論での実行性を保つ政治手法である。そして、他国には理想論を単独で武器として用いるのである。それは、西欧での与野党での争点にはならない。何故なら、理想論と現実論はともに国益実現に止揚されるべき思考だからである。
日本は、そのトリックを知らないため、日本国憲法の前文:「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」(補足4)などという、非現実的な文章を建前論として棚上げする知恵を獲得しなかった。その結果、理想論の野党と現実論の与党という、両方とも単眼思考の人たちにより国会が占められた。そこでは、国益のための議論ではなく、「口論や喧嘩の類の議論」が行われることになった。
野党議員は、理想論を振りかざして現実政治を攻撃する愚で飯を食う。その一方で、与党議員は、国民を理想論の高原に残したまま、ひたすら現実を隠蔽するフェンスとなって、野党議員の口撃をかわしている。野党議員も元々問題解決をする能力などないので、適当に仕事をしている振りができれば満足である。
そして、政治屋のフェンスの裏で、現実的作業をしているのは官僚である。政治家がしてくれるのは、現実を隠すフェンス役と書類は短期間に廃棄して良いというルールを作ってくれる位である。もうとっくに日本国民は、チャイチャイさんの仰るように、この政治に対して怒るべきなのだが、日本文化は正当な怒りでも、それを蔑視する「和の文化」がある。何時も同じ結論だが、日本文化は若い世代が変えることが出来る。若い方の活躍に期待したい。
補足:
1)この考えは、イランと米国の間に入って、両者の対立を収めようと努力したことと同様の考えである。普通のセンスなら、そんなことは不可能だと分かるのだが、安倍総理には自分の立場や能力を客観的に見る能力もないのだろう。日露外交、日朝外交など全てにおいて、包装だけ立派な空箱のような外交である。
2)日本の停滞は、官僚たちが自分の天下先確保などのために大きな政府にしたのが原因である。日本の政治は、無能な政治家と一定の能力を持つ官僚が握っているが、選挙で選ばれない官僚は、政治家に国会などでの議事進行に協力する形で、政治家に恩をうることで、実際の権力を独占してきた。
3)怒りは思考の結果生まれる。しかも、集団で怒らないと政治的力とならない。つまり、思考と議論の文化が必要である。下らない訳の分からないお経を、おとなしく聞いて、しかも多額の金を支払うような人々にそれを要求しても無駄かもしれない。
4)日本国憲法の前文と似た文章が国連憲章の前文にもある。「寛容を実行し、且つ、善良な隣人として互に平和に生活し、国際の平和及び安全を維持するためにわれらの力を合わせ...これらの目的を達成するために、われらの努力を結集することに決定した。
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