昨日の記事(姉妹サイト)は不十分な内容でしたので、改訂版をここに記載します。
1)新型コロナ肺炎:日本のピークは3月だったのか?
おととい、「新型コロナ肺炎: NY州での抗体検査結果と集団免疫戦略の合理性」という題で書いた記事の中の最後に、日本、ドイツ、韓国の感染者数の経時変化のグラフを示した。そこで、「日本の感染者数の時間発展プロファイルは、韓国とほぼ同じだったのではないのか?」という推測を行った。下の左図の茶色の曲線である。
https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12592231578.html
日毎の新規感染者数は累積患者数を示す曲線の傾きになるので、この茶色の想像した曲線は、その最大の傾きが3月上旬(韓国同様)になるように書いた。参考のため、累積感染者数と毎日の新規感染者数の関係を右図として示した。図の無視された感染者は、通常の風邪、インフルエンザ、肺炎として扱われただろう。死亡者の統計も、そのように分類処理されただろう。
今朝、上記と類似の内容の記事が既に出ていたことを知った。それはデイリー新潮23日の記事である。それを紹介するヤフーニュースによると、医療ガバナンス研究所の上昌広理事長は、以下のような考えを披瀝している。
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200423-00622629-shincho-soci
「国立感染症研究所の『インフルエンザ関連死亡迅速把握システムによる2019/20シーズン21大都市インフルエンザ・肺炎死亡報告』によれば、この冬はインフルエンザが流行しなかったのに、東京では2~3月、ほぼ毎週100人以上が亡くなっています。断定はできませんが、そこに新型コロナウイルスによる肺炎で亡くなった人も含まれているとしたら、2~3月にはピークが来ていたことになる。たしかに韓国や台湾のピークが2~3月だったのに、日本だけズレているのは不自然です」
今日紹介するのは、この考え方を支持すると思われる、東洋経済ONLINE発表のデータである。それによると、新規の感染者や重症者の数が、PCR検査人数と強い相関がある。感染者を全て検出するという本来の目的からは、検査数が圧倒的に感染者数よりも大きくするのが普通である。検査数は、週末には殆どゼロであるにも拘らず、本日の新規患者数は100人を切りましたなどと何食わぬ顔でテレビで発表している。その異常さに言及するには、言葉は見つからない。
因みに、完全な相関とは、感染者数が検査数に比例する場合である。つまり、感染者数は、検査数に完全に依存し、検査数に単に比例定数Cをかけた数になる。この情況は、感染者が検査で発見される人数よりも遥かに多く、検査の及ぶ範囲に均一に分布している場合である。
強い相関とは、そのCは一定ではないが、検査数の増加により緩やかに減少するような場合である。この情況は、検査で発見される人数よりも可なり多い感染者が、検査の及ぶ範囲に均一に分布している場合であり、今回のケースに相当する。(補足1)
上の図は、東洋経済ONLINEから取って並べたものである。①新規感染者数(左上)、新規患者数(右上)と左下のPCR検査人数に共通する最近の3つの山を見れば分かるように、強い相関を示している。更に、②新規重症者数(右下;y軸の最大値は見にくいが25人である)とPCR検査人数との相関も同様である。
②の相関は、新規に担ぎ込まれた人が非常に短い時間で重症化していることを示している。つまり、発見済みのクラスターとの関連でPCR検査を受ける人以外は、殆ど重症化して初めてPCR検査の受診資格とみなされているのだろう。その最悪の場合が、最近になって行われる様になった死後のPCR検査である。https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200421/k10012398841000.html
検査数を現在よりもずっと多くし、医師の病状による判断で完全に決めれば、検査数や新規感染者数に、上図のような大きな増減は無いはずである。また、新規重症者数と検査数との相関は殆どなくなる筈である。そもそも、検査実施数をデータ化して、記録を残す人は居なくなる筈である。
現在、症状が相当あっても、検査を受けられない人が多い情況であるから、少なくとも東京はクラスター潰しをする段階ではないと思う。(補足2)
検査数を制限するのは、病院のベッドに収容できる範囲で感染者を選ぶために、有症者でも検査を制限しているからである。つまり、ベッド数の増加や医療従事者の確保の努力を政治主導で行わず、命の選択を保健所にやらせているのだろう。
2)PCR検査の地域依存性:
PCR検査のあり方がCOVID-19に罹患した人の為に行われているとは言えないと思われる別のデータを示す。それは都道府県別の検査件数と検出された感染者数、およびそれらの間の比率である。元のデータは東洋経済ONLINEである。以下に、感染者の多い9つの東道府県について示す。
注目されるのは、感染者数がすくなくなっても、検査数自体があまり減少せず、検出率が大きく減少していることである。このデータは、検査数が伝染病対策としてでなく、他の理由で決められていることを示している。つまり、発表する感染者数を小さくしたいという政治の意図が働いているのだろう。素直に解釈すれば、病院における医療崩壊の防止である。
最大の検出率の東京都の場合、今日27日の感染者は39人であり、そのうち38%にあたる15人の感染経路が分かっていないと発表されている。つまり、検査をすれば40%が陽性になり、大抵その半分程は感染経路が明らかでない。それにもかかわらず、相変わらず感染経路に関する調査が、この疫病での保健所の主な業務として行われているのである。https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200427/k10012407421000.html
兎に角、何故大きな人口を抱え、感染者も多数ある東京都などと、その数分の1の人口の県で、検査数があまり変わららないが、感染率が大きくことなるという上記データを、まともな政策の結果だとは解釈できない。唯一、特に東京における低いPCR検査数は、政治がこの疫病に対する医療体制の整備行わなかったことを誤魔化すために、帳簿上の患者発生数を低く抑えるためという理由が頭に残る。
それは政府が、オリンピックを中止したくない為なのか、習近平に対する忖度なのか、その両方なのか分からない。この疫病が発生し、日本で広がり始めたときから、このような事態は予想されていた。本ブログでも2月の10日に「新型肺炎のパンデミックは短期終息しない可能性が高い(追補あり)」の表題で、以下のように書いている。
日本では感染率、更にこの病気での致死率が低いということで、それほど神経質にならないでも良いのではないかという論調の意見も聞かれる。未知な病気に対決しているという緊迫感のない対応では、禍根を残す事になりかねないと思う。
https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12574178074.html
補足:
1)遥かに多い感染者が、検査の及ぶ範囲内(人数や面積)に不均一に分布している場合、検査数と感染者数の相関は小さいだろう。
2)検査実施を医師の判断に任せる場合でも、検査希望数よりも検査能力が十分大きい場合、検査数と感染者数は相関する。あとのセクションの表の数値は、このような情況では無いことを示している。クラスター潰しでの感染者検出率が、医師の判断で行った有症状者の感染率より低くなったところで、重点を後者に置くべきだと考える。
kai
0 件のコメント:
コメントを投稿