日曜日の朝のTV番組「ザ・プライム」で、自民党総裁選候補三人が出演して、橋下徹氏の司会で政策について語っていた。政策全体を語る場面で、石破氏の地方創生の考え以外は、総合的な視点に欠けたものであった。勿論、石破氏の地方創生も、今の国難のときに言う必要があるのかと思って聞いていた。
そこでもっと驚いたのは、三候補とも今は国難の時だと言いながら、国難の理解が私のものとは全く違っていた。三人とも、新型コロナ肺炎流行が「国難の正体」だというのである。「世界支配を超限戦で目指す中国に対して、米国が宣戦布告に等しい態度を表明し、その対立の中で世界経済と世界政治が大嵐になるが、日本はどうするのか?」という類の話の欠片も無かった。
日本のために社会のデジタル化を進めるとか、自分が良かれと思うところをドシドシやっていくと菅氏は語っていた。その中で気になる一言があった。抵抗する官僚は、内閣の人事権を使って飛ばすと明言したのである。内閣による官僚人事の承認対象は、審議官レベル以上の600名ほどらしい。
内閣人事局を創ったのは安倍政権であったので、菅氏は積極的に人事権という刀を振り回すつもりのようだ。残り二人は内閣が対象とする部分を縮小すべきだとか、積極的な発言はしなかった。ここで、この点との絡みで、菅政権の考えられる危険性を、三橋貴明氏が解説している。今回はそれを紹介する。 https://www.youtube.com/watch?v=F-A7Go5Sbv8
上図は、三橋氏が語る日本の政治のメカニズムを表す。このタイプのメカニズムは1997年頃から(橋本内閣?)の自民党政治で始まったという。米国や中国、或いは経済界からの要請を汲み上げる装置として、総理の諮問機関(左)や特定の側近官僚たち(右)があり、その要請を空虚な器の内閣総理大臣という機関に取り込んで行政を行ってきたというのである。(補足1)
その執行を円滑にするために、立法府の議員に対しては、公認権や政党助成金分配権を、そして官僚たちには、内閣人事権(2014年以降)を用いてきたというのである。(補足2)つまり、内閣総理大臣は空虚な器であれば、政治は側近官僚や内閣の諮問会議が政治を動かすので、大きな進歩は無いが大きな間違いもない。
今回菅氏が首相になり、空虚な器という性質を返上するかもしれないと三橋氏は心配するのである。もし、官僚の人事権という刀を振りかざせば、訳の解らないプロセスで選ばれた首相(補足3)が強権を発揮し、非常に恐ろしいことになる。その日本没落のプロセスは既に始まっているというのである。
菅氏がテレビ等で喋った経済政策は、緊縮財政と中小企業改革(地方銀行再編)など、元ゴールドマン・サックスのデイビッド・アトキンソン氏(補足4)の影響が強く見られると三橋氏は言う。日本人官僚の反対を人事権を振りかざして抑え、外国人のロボットとなって、日本経済を潰す危険性があるという。
三橋氏の話は経済中心だが、米中覇権戦争の最中における日本を考えると、自分の頭で考える能力の無い首相を抱えて、日本は難破する可能性が高い。
ここで何故か、韓国のセウォル号沈没事故を思い出した。その時、本来の船長に代わって非正規社員の臨時船長が船を操縦していたのだ。荷物を過剰に積み上げ、その分バラストを減らして(1/4に減らしていた)航行する危険性など、臨時船長なら殆ど知らなかっただろう。真っ先に船から逃げるあの場面を思い出す。将に、内憂外患の日本である。
補足:
1)「安倍総理=空虚な器論」は、オバマ政権末期にオバマに脅されて慰安婦最終合意とやらを行ったとき、チャンネル桜で盛んに言われていた。安倍総理の毅然とした態度を信じていたチャンネル桜の社長などの言葉であった。その後、いつの間にか習近平国賓招聘などが決まり、安倍総理=空虚な器論は決定的となった。三橋氏は、この動画でもっと以前、1997年ころ(橋本龍太郎内閣のころ)から、「総理大臣=空虚な器」制が始まったと言っている。
2)内閣人事局が2014年に出来た。それ以前は族議員や官僚OBの介入があったという。内閣人事局は、不適切な人事を監視する役割に徹するのが筋だろう。何故なら、官僚は政治をしてはいけないからである。忖度は、官僚が政治に介入することであり、それでは「官僚の無謬性」が成立しなくなる。つまり、官僚にまで政治責任が及ぶことになれば、官僚を国民が選ばなければ、民主政治でなくなる。
3)日本国家のトップを、二階の老獪で不透明な働きが決めたように見える。本来、日本国のトップは国民の投票で決めるべきである。その議論がマスコミになかった。
4)元ゴールドマン・サックスの社員で英国人のデイビッド・アトキンソンは、日本の文化財の修繕をする会社を経営しているとテレビに出ていたことがある。変な活動はしないで欲しい。
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