新型コロナ肺炎(COVID-19)が出現してから3ヶ月以上になる。パンデミックが心配されるようになってから、すでに1ヶ月以上経過して、それが現実となった。このコロナウイルスは、3月に入ってヨーロッパや北米でも猛威をふるい出した。本稿の目的は、この病気は死亡率からみて、インフルエンザより遥かに恐ろしいことを指摘することである。(補足1)
一般に新型感染症が世界に広がる時、その見かけの死亡率は最初大きいが、次第に小さくなって、最終的な値に近づくと言われている。その理由は、最初に罹患した人たちが重症化して初めて、その新型感染症に気づくからである。つまり、実際の感染者数を正しく把握するまでにかなりの時間的遅れがあり、それが見かけの死亡率が大きくなる理由である。
世界のこの病気の感染者や死亡者数等を得るには、米国のJohn Hopkins 大の随時更新されるサイトが、最も便利だろう。その10日間ほどのデータを用いて以下の分析をおこなった。通常この病気の診断はRT—PCRという迅速且つ大量処理が難しい方法を用いるので、良く準備された国とそうでない国では、感染者数の中身が大きくことなるだろう。差し当たりそれらを細かく議論しないで、分析後に得られた数値から、それらも議論したいと思う。
ここで、二つの死亡率を定義して、それらを比較してみる。1つ目の死亡率は、死亡者数の(死亡者数+回復者数)にたいする比(死亡率1)である。もう一つは、死亡者数の感染者数に対する比である。これら感染者等は全て累積値である。入院して治療中の人は、何れ回復者か死亡者に数えられる。差し当たり”決着がついた人たち”だけで死亡率を計算したのが死亡率1である。一方、グレーゾーンにある人を強引に分母にいれたのが、死亡率2である。しかし、一般に報道される死亡率は後者の方である。
これらの3月6日から3月15日までの値を下図に示す。
ここで注目されるのは、決着の着いた人だけで死亡率を計算した場合の値は、かなりの勾配で上昇中だということである。中国は最近、闘病中と思われる人まで、治癒者として退院させていると言う話がある。これが本当なら、死亡率1を下降させる筈である。しかしそれでも尚、この死亡率が上昇しているのは、かなりの地域で、死亡後にCOVID-19だったという診断がなされていることの証拠である。当然、死亡率1と死亡率2は、この病気の患者がいなくなった時点で一致する。
つまり、現在新型コロナ肺炎は、全世界に急速に広がりつつあることを示している。新たに患者或いは感染者に加わった人は、5日や20日は闘病生活を送るのが普通だろう。1日当たりの診断数を増加させる努力もされているだろう。そのように増加する感染者数を全て分母に入れても、死亡率2は横ばい或いは微増である。非常に恐ろしい事態である。
2)各地のデータ:
これまでの各地のデータは次の表の通りである。
二つの死亡率の値は、原理的に最後は一致する。従って、これらの間のズレは、疫病蔓延のステージがどこにあるかの目安となるだろう。新しい感染者が全体に比べて小さい比率なので、湖北省(武漢)と北京の、死亡率1と死亡率2が近い値である。西欧諸国で、これらの値が非常に大きくズレているのは、この疫病蔓延のステージが始まったばかりであることを示している。
ここで、この9日間の感染者や死亡者の増加数から計算した死亡率1を、各地方毎に表にしたので下に示す。
ここで注目すべきは、中国湖北省のデータと西欧諸国のデータである。湖北省では、最近9日間の死亡者は116名で回復者が9460名であり、それらの比率(上の表中Drate1)は1.2%という小さい値である。湖北省全体の死亡率1と2は、一つ前のテーブルから、其々5.5%と4.5%なので、前々回の記事に書いたように、最近非常に効果の高い治療法を実施しているか、或いは多くの患者を治癒者として退院させたかのどちらかだろう。
ヨーロッパでは新しい患者が次々と出ているが、この病気との戦いが終わった患者の多くは、死亡という形で病院を出ている(フランス、イギリス)。イタリアでは、21000人余という大きな感染者数が出ているので、この病気の流行のステージも進んでいるのかと思ったが、この間の”戦いが終わった”2600人余(9日間)のうち半数(46.7%)は死亡して病院を出ている。これは、インフルエンザの20倍程度の死亡率の病気なら、未だ序盤戦の様相である。
イタリアの場合、別の可能性として、日本や韓国の新型肺炎とは異なるウイルスを考えるべきかもしれない。S型とL型の2種があるという話が10日ほど前にあったが、詳細に分析してみるべきだろう。
(16時に編集しました。最後のテーブルで書いたDrate2は、あまり意味のない指数だったので削除しました。)
補足:
1)今日のテレビ番組で、橋下徹氏は新型コロナ肺炎に関して、感染者よりも死亡者を減らすことを第一に考えるべきだと発言していた。これは間違いである。私には、「検査数を減らして、死者は通常の肺炎で死亡したことにすれば、国際的評判も高くなり全て良い」という発言に聞こえる。何故なら、ヨーロッパの実態を見ればわかるが、最終的に得られる死亡率も5%以上と高いだろう。橋下氏は、感染者に死亡率を掛けた人数だけ死者がでることを、真剣に復習すべきである。
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