注目の投稿

人類史の本流は中華秩序なのか、それとも西欧型秩序なのか

1)米国が露呈させた中国共産党政権の真の姿と日本の課題   日本が抱えている最重要な課題は、コロナ問題や拉致問題等ではなく、表題の問に対して明確な答えと姿勢を持つことである。短期的な経済的利益に囚われないで、現在が世界の歴史の方向が決定される時なのかどうかを考えるべきである。...

2020年3月20日金曜日

新型コロナ肺炎に纏わる米中間「歴史物語の戦争」

この“歴史物語の戦争”は、中国習近平政権が作った「世界を新型コロナ肺炎から救う中国」という話と、「世界に新型コロナ肺炎を持ち込んだのは、中国の失政が原因である」という話のどちらを、世界の正史に組み込むのかという戦争である。その“物語の戦争”のもう一方の当事者である筈の米国トランプ大統領は、普通なら簡単に勝利出来るはずだが、孤立主義に囚われて、巧みな中国の歴史捏造に結果的に協力する可能性がある。副大統領マイク・ペンスや国務長官マイク・ポンペオは、そんなトランプに協力するのだろうか?

 

1)新型コロナ肺炎を世界政治に利用し始めた中国:

 

Foreign Policy誌が、「中国はグローバルな救世主としての地位を固めようとしているが、米国とEUは国内のウイルス(対策)に焦点を当てている」と題する記事を掲載した。https://foreignpolicy.com/2020/03/19/china-us-eu-coronavirus-great-power-competition/?utm_source=PostUp&utm_medium=email&utm_campaign=20381&utm_term=Editor#39;s%20Picks%20OC&?tpcc=20381

 

例として挙げたのが、セルビア大統領の新型コロナ肺炎のパンデミックに関する記者会見でのスピーチである。それは、「今では皆さんは、偉大な国際連帯やヨーロッパの連帯など存在しないことを理解されているでしょう。それは本の中の御伽話でした。」で始まる。

 

それに続いて、彼は次の様に言った。「今日、唯一助けてくれる中国習近平主席に手紙を送った。親愛なる友人として、或いは兄弟として、EUが拒絶した医用品をセルビアに送ってくれる様と、依頼する手紙である。」

 

あまり期待出来ないEU圏の国々に対して感情的になっているのは、愚かな姿かもしれない。しかし、そのレベルの大統領は、民主主義という政治の産物であることは確かである。このセルビアの大統領の姿から、中国現政権が、最初のコロナウイルスへの異常な反応(補足1)を払拭し、中国のイメージを一新するソフトパワー攻勢を再開していることが分かる。

 

中国湖北省で始まった新型コロナウイルス肺炎は、最初強引に隠蔽しようとしたことが原因で、世界に広がった。しかし、その原因を作った中国は、現在では、自国での新たな感染者発生が減少傾向になっただけであるにも拘らず、イタリアとイランを含む世界の国々に対して、必要な医薬品と医師などを送り出している。(補足2)

 

習近平政権の諸外国へのフレンドシップは、国内中国人のかなりの犠牲の下、政権の安定維持、中国の世界的地位の毀損防止、更に、世界覇権獲得へ向けた遠大な計画の一環として、開始された事がわかる。そのことを第一に気づくべきなのは、米国大統領府である。トランプにその感受性と判断力があるか、非常に疑わしい。

 

FP誌の上記記事は、続けて以下のように記述を加えている。ソウル世宗研究所の中国研究センター所長であるイ・ソンヒョン氏は、中国政府は「中国国内外の多くの人々を救う世界的な英雄としての地位を確立しようとしている」と語った。 この世界的な流行を絶好の機会であると正しく認識して、中国はPRで強く出てきている。一方、アメリカは伝統的な同盟国や友人を助けるのに十分な資源を投資しておらず、この“物語の戦争”に十分な投資をしていない。

 

2)物語戦争の本質について:

 

この“物語の戦争”は、ポンペイオの”武漢ウイルス”という言葉を用いた中国の誤った初期対応への言及に対して、中国外務省のスポークスマンによる、「武漢にウイルスを持ち込んだのは米軍だ」という応酬で始まったと、このFPの記事が書いている。

 

注意すべきは、中国側のカウンターパンチが、ポンペイオのパンチへの応酬としては、釣り合いが取れていないことである。「米軍がCOVID-19肺炎ウイルスを武漢に持ち込んだ」というのが応酬が、「新型コロナ肺炎の流行は、中国が開発している生物兵器が漏れ出た結果であった」という攻撃への対応なら、釣り合いがとれている。

 

つまり、中国のスポークスマンの上記発言は、この“物語の戦争”の最終兵器である「新型コロナ肺炎流行の中国細菌兵器起源説」を米国が持つと強く意識した結果だろう。中国の初期の李文亮医師らを弾圧してまで行った隠蔽工作、それが不可能になったときの考えられない程の強力な都市封鎖という対策などを考えると、この“物語戦争”における米国の最終兵器には、実弾が装填されていると予想される。

 

中国に、それを考えての焦りがなければ、あのような“ヤクザの言い掛かり”のような台詞は吐かないだろう。つまり、普通に戦えば、この“物語戦争”は圧倒的に米国有利な筈である。

 

しかし、米国のトランプの対応は、何を目論でいるのか全くわからない。世界経済がグローバルに広がった今、少なくとも経済の面では孤立主義など取れる訳がない。それにも関わらず、アメリカ第一主義を唯我独尊に唱えている。これまで築いたヨーロッパとの同盟関係、日本や韓国との同盟関係などを軽視し、これら全ての国を中国側の覇権域になるように仕向けている。

 

トランプのMake America Great Again は、世界から孤立しての達成は不可能である。これまでの歴史を無視した孤立主義は、米国に信頼できない国としての烙印を、世界中の国々から押されるように仕向けているだけでなく、世界に中国の悪質な御伽噺を広めることに協力し、世界を破滅に向けることになるような気がする。共産党独裁の人類に明るい未来など在る筈がない。李文亮の件を見ればわかる。

 

(FPの記事を元に書いた一素人の考えです。意見、批判等歓迎します。)

 

補足:

 

1)その情報を医者仲間で共有しようとした李文亮医師らを弾圧した。李医師はその後その肺炎で死亡し、中国市民及び世界の英雄となった。しかし、中国に忖度する国々ではその名は報道されることが少なくなり、中国覇権が広がることにより、最終的に隠蔽され大衆から忘れ去られるだろう。

 

2)John Hopkins大の何時もの頁では、3月3日からの半月間、湖北省全体で増加した感染者は500人ほどであるが、中国出身の鳴霞さんの3月18日のyoutube発信によると、武漢に新たに感染者が1700人でたらしい。また、習近平が3月10日武漢を訪問したとき、感染者も病院から追い出して、完治者にカウントしていたという話である。https://www.youtube.com/watch?v=dO5k6TKIP9c

 

これらは、不自然な最近の治癒者数の増加を考えれば、説得力がある。中国国内での対COVID-19ウイルス戦争は、完全勝利には未だ遠いが、それを抱えながら、「COVID-19物語戦争」を、世界を戦場にして(始める羽目に陥って)いるのだろう。

0 件のコメント:

コメントを投稿