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人類史の本流は中華秩序なのか、それとも西欧型秩序なのか

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2020年3月22日日曜日

森友学園問題で自殺した事務員家族の提訴は、今の日本では失敗するだろう

1)森友問題の背景と本質

 

森友問題の背後には、日本の官僚組織と自民党との癒着がある。その根源には、吉田茂の戦後政治における基本路線がある。それは、日本国を米国政府の一属州とみなし、日本国の政府組織や司法組織の全てを、米国指導部の官僚組織としたことである。それは元官僚の吉田茂が採用した最も安易な考え方であり、それは吉田とその配下にとって心地よい地位を与えることになった。

 

米国が行った公職追放により、日本のまともな政治家は牢獄の住人となり、その席を埋め合わせる為に、“吉田学校”を官僚の政治家としての訓練組織として作った。その優等生たちに、後の長期政権担当総理の佐藤栄作や池田勇人がいた。対米追従と既存路線以外には、何もしない元総理たちである。

 

この官僚と政府与党政治家との関係は、日本に健全な野党の登場を不可能にした。官僚は天下りや政界入りなどの将来の利権を自分の人生設計書に書いて、その実現のために政府自民党に協力した。国会での政府の答弁書は、官僚たちが徹夜してでも作成し、翌日担当大臣たちはその答弁書を国会で読んだ。

 

野党が一時的に政権の座を得ても、本来の官僚業務に専念することで、政権の座から降りるまで待った。野党政治家たちを含め、日本の政治家には政権担当能力など元から無いからである。最近も、歯舞や色丹が読めない人が北方領土担当大臣とかいう席に座った。https://www.huffingtonpost.jp/2016/02/09/aiko-shimajiri-northern-territories_n_9191582.html

 

日本が米国の属州の間、その図式は上手く機能した。ただ、官僚の利権の範囲が徐々に大きくなり、日本は大きな政府の国になった。そして、日本の経済が米国経済の競争相手と見做されるようになってからは、政府債務は大きくなり続けるが、消費税以外の税収は減少を続けることになった。日本は独立国の体裁もない、歪な国となって、現在に至る。(補足1)

 

次第に困難になる日本の経済成長は、官僚にとっても政治家にとっても、当然国民にとっても、分けるパイ全体の減少になった。本来なら、そこで議論が始まり、新しい組織とイノベーションの方向を見つけるのが先進国の姿だろう。しかし、日本は復古主義が台頭したと私は思う。右派の台頭である。

 

日本は日出ずる国、天皇を戴く国というのが、右派の中心思想である。そして、過去の大戦争は、主に米国ルーズベルトが仕組んだものであるという、半分の真実を全部にまで膨らませて、現在の苦境を自分の頭で考える代わりに、他人の責任に押し付けるという安易な方法をとった。そしてできたのが、日本会議であり、安倍総理と森友学園理事長の出会いの場である。

 

籠池泰典氏は、経営する幼稚園で教育勅語を暗唱させ、それを見た安倍総理らはそれに感じ入り、支援を考えた。日本の首相に上手く取り入った籠池氏は、学園の拡張を考え、適地を見つけて、安く手にいれることにしたのである。

 

2)原告赤木俊夫氏夫人の損害と被告佐川宣寿氏の違法行為

 

国有財産であった森友学園の用地を安く手に入れる方法は、地中深く存在するゴミの撤去費用に8億円かかるという見積書を作成して、その分の値引きをするという筋書きで進められた。森友学園は、財務省理財局長とその配下の近畿財務局の全面的協力を得た。

 

その筋書きは、2017年2月に朝日新聞に暴露され、国会で激しい議論の対象となった。そこで、証拠隠滅のためなされた決済書類の改ざんが、国会で取り上げられた。この国有地売却を担当したのが、近畿財務局の赤木俊夫氏であり、その書類改ざんを命令したのが、時の財務省理財局長の佐川宣寿氏である。(補足2)赤木氏は地検の聞き取りを受けた晩、自殺した。

 

そして、自民党議員や右派評論家たちは、取引の法的正当性を主張し、検察も事件化しなかった。赤木氏の自殺の原因はうつ病である。労災とみとめられ、保険金が支払われたが、遺族は当然納得がいかない。そこで、今回の民事による提訴となった。目的は真相解明であると、訴状にも書かれている。https://iwj.co.jp/wj/open/archives/470179#idx-0

 

損害賠償の根拠は、民法709条である。「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」と書かれている。

 

この場合、他人の権利とは、原告が自殺した夫である赤木俊夫氏と伴にその後も暮らす権利であり、法律上保障される利益とは、その生活において得られる諸利益である。これらに対する佐川氏の侵害行為とは、夫の赤木俊夫氏をうつ病に追い込んだ異常な佐川氏の命令である。

 

故意または過失とは、赤木氏に大きな心理的負担になる公文書改竄を、それと知りながら(故意)、或いは、気づかないで(過失)命じたことである。赤木氏がうつ病になるほどの心理的負担を与えたのは、公文書改竄という違法行為であり、公文書の校正(訂正)ではないからである。

 

勿論、激務など雇用側の判断ミスなどでうつ病になった人が自殺したような場合、労災保健が支払われることが多い。そのような場合には、雇用側の違法行為として刑事罰を問うことはないだろう。うつ病になる激務の領域としては、誰でも鬱になるレベルの完全な違法行為から精神的に弱い人の一部が鬱になるレベルの迷惑行為までグレイゾーンが広がる。労災で問題になるのは、雇用側の違法行為ではなく、被雇用者のうつ病と仕事の因果関係である。

 

ただ、民法709条をたてに損害賠償訴訟を起こし勝訴するには、労災認定をクリアする事実だけでは不足である。民佐川宣寿氏の公文書書き換えを命令の違法性が、裁判所において認定される必要がある。

 

3)門前払いの可能性について:

 

ここで問題になるのは、「本来、違法な公文書の改竄を命じられたのなら、命令を拒否することは可能である」という論理である。そうすればうつ病になる可能性もないだろう。その結果、もし降格或いは解雇といった処分を受けたのなら、その損害は赤木俊夫氏本人が国を相手取って訴訟すべきであった。

 

つまり、そうしなかったのは、赤木氏が元々うつ病に掛かりやすい性格であり、本件以前に国鉄民営化とともに行われた配置転換の時点からの職場への不適応状態にあり、それが原因でうつ病を発症していた可能性が高いという筋書きである。

 

もし、この論理を取るのなら、佐川氏の公文書書き換えの件は、うつ病の赤木氏には大きな負担になったとしても、事件化するほどの違法性を必須条件としなかった、或いは、もともと関係が薄いとされ、労災認定で全て解決済みという判断がなされる可能性もある。その場合、森友問題の真相解明には、一切役立たないだろう。

 

更に、この件検察が追求を深めることを避けた点に注目すべきだろう。もし、裁判所が佐川氏の違法行為を認定したのなら、検察の顔に泥をぬることになる。裁判所、特に最高裁では、そのようなことを避ける。何故なら、日本の三権は分立していないからである。

 

(午前11時35分:セクション3編集)

 

補足:

 

1)現在の安倍政権も、その延長上にある。というより、その延長上の典型的な政府である。彼らを含めて日本の政治家全ては、国難であり世界の危機にある今、オリンピックという小さい出来事と世界危機という大きな出来事に対する、日本国の対応のあり方さえわからないのである。オリンピック中止も世界大恐慌も、思考のダイナミックレンジの外にあるからである。

思考のダイナミックレンジ:https://rcbyspinmanipulation.blogspot.com/2014/12/blog-post_26.html

 

2)何故、問題が朝日に掲載された後、直ぐに佐川氏が理財局長から国税局長に栄転したのか?更に何故、その後処分を受けて辞職させられたのか? https://www.sankei.com/affairs/news/180518/afr1805180030-n1.html

 

財務省はその後の調査で、佐川氏が理財局のトップとして改ざんの事実を認識していたと判断。既に退官し現役の国家公務員ではないため、「懲戒処分相当」と認定した上で、約5千万円の退職金の減額などを検討するとみられる。何故改竄の事実まで財務省は認めたのか?一つのモデルは、財務省が森友への協力を安倍総理の意向にそった行為だと思ったのだが、それは過剰忖度だったというものである。そのモデルは、以下の記事に書いたが、詳細は現在も闇の中である。https://rcbyspinmanipulation.blogspot.com/2018/03/blog-post_20.html

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